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三 選別
私は、予定通り進めた。
業務一覧を作った。
工数を取った。
属人度を評価した。
移管難易度を色分けした。
スキルマップを作った。
各人の社内公募適性を見た。
研修計画を引いた。
赤、黄、緑。
スプレッドシートは整っていった。
現場は荒れていった。
昼休みに人が席を離れなくなった。
チャットの返信が短くなった。
私が近づくと、会話が止まった。
ある日、宮下さんが私の席に来た。
手には印刷した業務棚卸し表があった。赤いセルが多い。
「佐伯さん」
私の名前を呼ぶ声は穏やかだった。
「はい」
「これは、私の仕事は赤だという意味ですか」
「仕事の性質を色分けしています。人の評価ではありません」
彼は紙を見た。
それから、私を見た。
「仕事と人を、そんなにきれいに分けられますか」
私は答えなかった。
答えなかったのではない。答えがなかった。
その日の夜、家に帰っても、胃が重かった。
妻に「顔色が悪い」と言われた。
私は「忙しいだけ」と答えた。
子どもが算数のプリントを見せに来たが、私は丸つけを二問間違えた。
風呂に入ると、浴室の壁に湯気がついた。
指で、無意識に赤、黄、緑と書いていた。
自分で気づいて、消した。




