第七話 ノクス編 七賢院の工作を追い詰める
ドゥルスがもたらした情報は予想以上に精度が高かった。
賢者四番の情報部門「影糸」の王都内工作員十七名のリスト。
そのうち六名はすでにノクスの網に引っかかっていた者たちだ。
残りの十一名は——まだ動いている。
「この十一名を一度に処理する場合、七賢院に察知される前に動く必要があります」
エルザが言った。
「ただし——同時に処理できる体制を作れますか」
「ヴァルガンに相談する」
カインが眉をひそめた。
「ヴァルガン……南方の古竜が、まだそちらに?」
「南方に向かったのは別の個体だ。ヴァルガンは俺のことを知っている」
「どういうことですか」
ノクスは少し間を置いた。
「俺の魔力の性質が、あの竜には分かる。近いうちに顔を合わせることになるだろうが——今はまだ時期ではない」
カインはそれ以上聞かなかった。
ノクスが「時期ではない」と言う時は必ず理由がある。
「十一名の処理は段階的に行う。最優先は——王宮内部の接触ルートにいる者だ。ここを断てば、七賢院は王宮内の情報収集を一時的に失う」
「失った七賢院は——」
「焦る。焦った組織は、ミスをする」
エルザが書類を整理した。
「ノクス様、一点だけ確認していいですか」
「何だ」
「聖枢機卿——アルス・ヴェインの右手首の件ですが」
ノクスは動かなかった。
「毎朝同じ場所を回復魔法で治しているという行動パターン。私が調査した限り、これは三年前から続いている習慣のようです。当初は気にも止めていませんでしたが——ノクス様も毎朝同じ場所に傷がつく。この一致は、偶然とは思えません」
沈黙。
「……偶然ではないだろう」
ノクスは低く言った。
「しかし、今はそこに深入りする時ではない」
「分かりました」
エルザは書類に視線を落とした。
しかし——ノクスが少し動揺したことをエルザは見逃さなかった。
七賢院の工作の話でも、戦闘の話でも、この男は動揺しない。
しかし——あの枢機卿の話が出た時だけ。
エルザはそれを手帳に書き留めた。




