↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
315/325

宴もたけなわ②

<回復>


 丘の上から、フローラは帰ってくる一団をのんびりと眺めていた。


 魔狼たちがゆったりと歩き、その後ろに魔族の隊列が続いている。


 その中心には――担架があった。


「えっほ、えっほ」


 二人の魔族が担架を担いでいる。


 その上に横たわっている人物は、全身が真っ黒だった。


 焦げている。


 髪はチリチリ、服は焼けてボロボロ。


 まるで炭の塊のようだ。


 フローラは小走りで丘を降りながら手を振った。


「ルシアンさん大丈夫ですかー?」


 担架の上の黒い塊がぴくりと動く。


「大丈夫じゃない!」


 元気な声だった。


 その横を歩いていたフェンリルが、少し顔をしかめる。


「割と元気じゃないか……」


 魔狼たちは気にした様子もなく、のんびりと尻尾を振っていた。


 フローラは担架の横まで来て、ルシアンの姿をまじまじと見た。


「うわぁー……」


 感心したような声が漏れる。


「真っ黒ですねぇ……」


「フィーネのやつがね!」


 ルシアンは怒ったように言った。時間を置いたら怒りがぶり返してきたらしい。


「フィーネさんですか?」


「ああそうだよ! フィーネが僕を裏切って魔法を撃ってきたんだ!」


 その言葉に、フェンリルが静かに訂正を入れる。


「別にフィーネが撃ったわけじゃないけどね」


 フローラは首を傾げた。


「どういうことです??」


 ルシアンは担架の上で身振りを交えて説明する。


 人間の魔法使いがいたこと。


 フィーネがその近くにいたこと。


 そして――


「しかも僕を指差してたんだ!」


 ルシアンは指を突き出した。


「その直後に魔法が飛んできた!」


 フローラは何度か頷く。


「なるほどぉ〜」


「なるほどじゃないよ!」


 ルシアンが叫ぶ。


「僕、これ直撃したんだぞ!」


「そうなんですかぁ」


 フローラは感心したように頷いた。


「それでその色なんですね」


「この色は関係ない!」


 その様子を見ていたフェンリルが、ふと思い出したように言う。


「そういえばフィーネからの手紙は読んだ?」


 フローラはぱっと顔を上げた。


「あ、さっき読みました!」


 ルシアンが驚く。


「手紙?なんだっけそれ?」


 フローラはにこにこしながら答えた。


「変態紳士の聖騎士レオンさんに捕まったので、しばらく戻らないそうです!」


 ルシアンは目を見開いた。


「は??」


 フェンリルは少しだけ考える。


「……まぁいいか」


 そして肩をすくめる。


「さっきのあれこれも、捕虜だったなら仕方ない事もあるんじゃない?」


「フィーネが安々と人間に捕まるか?」


 ルシアンが不満そうに言う。


 フェンリルはのんびり答えた。


「聖騎士が絡んでるみたいだし……」


「聖騎士って……」


 フローラが元気よく補足する。


「変態紳士の聖騎士レオンさんですね!」


 ルシアンはぽつりと呟いた。


「……変態……なに?」


 フェンリルは軽く首を振る。


「そこは突っ込まないでおこう」


 少し沈黙が流れた。


 ルシアンはため息をつく。


「まぁ……聖騎士なら仕方ないか」


 案外あっさりと納得した。


 その時、フローラが担架を見ながら言った。


「ところで……」


 にこりと笑う。


「それ、治しましょうか」


 ルシアンが瞬きをする。


「え?」


 フローラは両手を軽く掲げた。


「えいっ!」


 次の瞬間。


 フローラの手から、柔らかな闇色の光が広がった。


 紫と黒の光がゆっくりと波紋のように広がり、ルシアンを包み込む。


 魔族特有の回復魔法。


 闇の巫女の力だ。


 焦げていた体が、みるみる元に戻っていく。


 黒く焼けていた肌が元の色に戻り、チリチリだった髪も整っていく。


 さらに、焼けていた服まで――


 ぱちり、と元通りになった。


 周囲の魔族たちがざわめく。


「おおお!」


「すげえ!」


「服まで治ったぞ!」


 魔狼たちも嬉しそうに鳴いた。


「ガウッ!」


 フェンリルがぽつりと言う。


「便利だなぁ……」


 声の調子は相変わらず落ち着いていた。


 ルシアンは担架からゆっくりと起き上がる。


 自分の体を見下ろした。


「……完全に治ってる」


 腕を回し、肩を鳴らす。


「さすが……こんなんでも闇の巫女なだけあるなぁ」


 フローラは照れくさそうに笑う。


「えへへー」


 そして周囲を見回した。


「他にもケガした人がいたら治してあげますよ!」


 その言葉に魔族たちがざわめく。


「おお!」


 ルシアンがすぐに言った。


「じゃああっちに真っ二つになって全治半年のやつが……」


 フローラは元気よく頷く。


「任せてください!」


 その後、フローラは次々と魔族たちを治療していった。


 切り裂かれた鎧。


 血まみれの兵士。


 足の先を斬られた魔狼。


 闇色の光が広がるたびに、傷が消えていく。


 魔族たちは歓声を上げた。


「闇の巫女ばんざーい!」


 フェンリルはその様子を眺めながら、のんびりと呟いた。


「今日はいい日だね」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。