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宴もたけなわ①

<伝書鳩>


 丘の上の草原に、のどかな時間が流れていた。


 フローラは芝生の上に寝転び、両手を広げて空を見上げている。


 雲ひとつない青空。柔らかな日差しが降り注ぎ、優しい風が頬を撫でていった。


「うーん……お日様も暖かいし……」


 気持ちよさそうに大きく伸びをする。


「良いピクニック日和ですねぇ……」


 遠くからは、つい先ほどまで戦いの音が聞こえていた。


 だが今はもう静かだ。どうやら決着はついたらしい。


 先ほど戦闘が収まったのを見て、レミは畑の様子が気になるからと先に帰っていった。こちらもほどほどにのんびりしたら帰るつもりだ。


 フローラは目を細め、草の匂いを感じながら呟く。


「なんか眠くなってきたかも……」


 もし魔狼たちがいれば、あのふかふかの毛並みに埋もれて昼寝ができるのに。


 そんなことをぼんやり考える。


 だが、今は近くにいない。


 少し前、フェンリルがルシアンを追って魔狼たちを連れていってしまったのだ。


 フローラは空を見上げたまま、のんびりと呟く。


「そういえばルシアンさん達はどうなりましたかね……」


 その時だった。


「あら?」


 空の向こうから、一羽の鳥がこちらへ向かって飛んできている。


 小さな影が次第に大きくなる。


 脚に筒がついているのが見えた。


「フェンリルさんの伝書鳩ですね」


 フローラは起き上がり、腕を差し出す。


 魔鳩はその腕に軽く着地した。


「お疲れさまです」


 優しく声をかけながら脚の筒を外す。


 中から二枚の紙を取り出した。


 一枚目を開く。


「ふむふむ……」


 少し読んでから、ぱちりと目を瞬かせる。


「あ、これはゼノ宛てですね」


 紙を丁寧に折り直し、筒に入れてもう一度鳩の脚に結びつける。


「はい、お願いしますね」


 腕を軽く上げると、魔鳩は羽ばたいて空へ舞い上がった。


 まっすぐ魔王城の方向へ飛んでいく。


 それを見送ってから、フローラはもう一枚の紙を開いた。


 そこにはフィーネの字が並んでいる。


 フローラは声に出して読む。


「えーと……」


『変態聖騎士に捕まったので少しの間出かけてきます。ピクニックはほどほどなところで解散してください。それとこれは野盗のアジトで分かったことですが――』


 その続きを目で追う。


 内容は簡潔だった。


 ヴァルミナに本拠地がある可能性。


 そして、バルヴェルクの有印文書が発見されたこと。


 フローラはその途中でふと手を止める。


「……変態聖騎士?」


 小首を傾げた。


 しばらく考える。


「やっぱりレオンさんのことですかね」


 しかしすぐに首を横に振る。


「でもレオンさんは紳士な人ですし……」


 少し悩んだあと、ぽんと手を打つ。


「あ、なるほど。変態紳士ってやつですね!」


 なぜか納得した。


 フローラは満足そうに頷く。


「まぁフィーネさんとレオンさんなら、悪いことにはなりませんよね!」


 結論は非常に楽観的だった。


 紙を軽くたたんでから、フローラは立ち上がる。


 丘の縁まで歩いていき、下を見渡した。


「さて……これからどうしますかね」


 ルシアンたちも、そろそろ戻る頃だろう。


 草を踏みながら丘の下を覗き込む。


 すると――


「あ」


 遠くに動く集団が見えた。


 魔狼の群れ。


 そしてその後ろに続く隊列。


 よく見ると、担架で運ばれている人影まである。


「あ、帰ってきましたね」


 フローラはのんびりと呟いた。


「まずは皆さんとお話してからですねー」


 丘の上から、帰還してくる一団をのんびり眺める。


 暖かな風が、また草原を揺らしていた。


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