↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
298/325

混乱する戦場④

<賭けの目>


 リューンの突撃が始まる、ほんの少し前。


 ルシアンは前線に立ち、腕を組んで戦場を眺めていた。


 視線の先にいるのは、剣を振るい続けるダリウスの姿だ。


「よしよし……」


 口元が、自然と緩む。


「このまま攻めていけば、賭博場での借りは返せそうだぞ」


 魔王軍の突撃は、ダリウス達によって受け止められてはいた。


 だが、勢いはまったく衰えていない。むしろ、押し合うほどに熱を帯びている。


 それもそのはずだ。


 指揮官であるルシアン本人が、今日はやけにノッていた。それが個人的モチベーションによるものというのはさておいて。


「ルシアンさまー」


 背後から声がかかる。


「ん? なんだよ、いま忙しいんだ」


 ダリウスの動きを目で追っていたところを邪魔され、ルシアンは少し鬱陶しそうに振り返った。


 声をかけてきた魔族兵は、なぜか言いづらそうに頭をかく。


「いや、その……いいんですかね? 俺たち、こんな感じで」


「こんな感じ?」


「王国軍も野盗も、両方狙うって話だったじゃないですか。今は邪魔が入ったとはいえ、王国兵ばっかりと戦ってて……」


 少し間を置いて、魔族兵は言った。


「なんか、卑怯じゃありません?」


「ひきょ……!?」


 思わぬ単語に、ルシアンの思考が一瞬止まる。


「いやいやいや! 戦いってそういうもんだろ!?」


 慌てて取り繕うが、魔族兵は首を傾げたままだ。


「いやぁ……これじゃ野盗の味方みたいじゃないすか」


「嫌っすよ、あんな連中と一緒にされるの」


 妙なところでプライドを見せる部下に、ルシアンは唸った。


「むむ……」


 一瞬考えた末、ぽん、と手を叩く。


「じゃあこうしよう」


 魔族兵が身を乗り出す。


「野盗を狙いたいやつは、狙っていい」


「俺は王国軍と戦いたいから、こっちに集中する」


「え、いいんすか? そんな適当な指示で……」


「いいんだよ!」


 ルシアンは話は終わりだとばかりに、再び前を向いた。


「ほら、分かったらさっさと行け!」


 追い払われた魔族兵は、仲間のもとへ戻る。


「どうするよ……」


「いや、ああ言われたら行くしかないだろ」


「でも、遠いよな……」


 しばしの相談の末、誰かが言った。


「よし、遠距離攻撃で狙おう」


「お、いいじゃん」


「弓兵呼んでこい!」


「お前も弓持ってんだろ、それでいいじゃん」


「これかぁ……届くかなぁ」


「俺、魔法も撃っちゃうもんね」


「いいねー」


 そんなノリで、矢や魔法がほうぼうから飛び始める。


 雑だが、一応届いてはいる。


「よしよし……」


 呑気に構えていた、そのときだった。


「退却ー! 退却ー!」


 どこからともなく、大声が響く。


「え? なんで?」


「今いいとこなのに」


 理由を聞いて、魔族兵たちは肩を落とす。


「ルシアン様が悪い目引いたんだってよ」


「またかよ……」


 文句を言いながらも、命令には素直に従う。


「これで帰るのかな?」


「いやー、まだまだっしょ」


 そんな軽口を叩いていたところ――。


 ドドドドド……。


「ん?」


 地響きに振り返ると、騎馬の一団がこちらに向かってきていた。


「やべぇ! 退却だ!」


 慌てて散開し、間一髪で突撃をかわす。


「あぶねー……」


「退却の指示がなければ、二年は死んでたぞ……」


「ルシアン様……今日は来てるのか?」


「いや……ルシアン様だぞ?」


「だよなぁ」


 当のルシアンはというと、少し離れた場所でカードを引いていた。


「……何してんすか?」


「なかなかいい目が出なくてな」


 真剣な顔でカードを眺めながら、言い切る。


「それまでは待機だ!」


「うぃーす」


 こうして魔王軍は、一息つくことになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。