ミニグリ子さんの活躍
お知らせ
前の話である44話に、ミニグリ子さん達の挿絵を追加しています
まだ見ていない方はそちらもチェックしてみてください!
ミニグリ子さんと同時に現れたことにより、ミニグリ子さんの召喚主だと勘違いされてしまったユウカは、そんな勘違いをされているとは気付きもせずに、ミニグリ子さんと共に町の中を駆け抜けていった。
駆けて駆けて、ミニグリ子さんの活躍をしっかりとその目に焼き付けて、そうしながらチャンスがあれば自分でも駆除してやろうと考えていたユウカだったが、ミニグリ子さんの駆除速度はユウカが思っていたよりも早く、それでいて的確で、一切の見逃し無く駆除をしており……ユウカの出る幕は全くといって良い程に無かった。
そのことをユウカはつまんないなぁと、そんな風に考えていたのだが、ミニグリ子さんの駆除が順調に進み、ミニグリ子さんの数がどんどんと増えていくと、そこら中をミニグリ子さんが埋め尽くすという、なんとも凄まじい光景が繰り広げられることになり……そんな光景に目を奪われてしまったユウカは、暗く沈みつつあった表情をこれでもかと輝かせて、満面の笑みを浮かべる。
なんでもないはずの住宅街の合間にある、なんでもないはずの畑に植えてあっただろう作物達はその全てが食べられてしまっていて……そんな作物達の仇を取ったミニグリ子さん達が畑を埋め尽くさんばかりの数となって、飛び交っていて。
そして周囲に災害を起こした幻獣がいないとなるとミニグリ子さん達は、そのカラフルな体を魔力の力によって輝かせながら、風に乗って飛んだり、あるいはただ漂ったり、地面をコロコロと転がったりして自由に過ごし始めて……そのついでとばかりに、その葉を、茎を、あるいは実をひどく食い荒らされてしまった作物達に触れて、魔力の成せる技なのか、その傷を癒やしていく。
「うわぁ……そんなこともできるんだ!」
なんて声をユウカが上げる中、ミニグリ子さん達は、折れた茎を元に戻し、新しい葉を茂らせ、新しい花を咲かせ、新しい実を実らせ……そうやって魔力を使い果たしたなら、ぽんっと弾けて光の粒子となって霧散し……消滅するのではなく、周囲に溶け込み一体化していく。
そうやって力を発揮することで何もかもが元通り……という訳ではなく、完全に食べつくされた作物はどうにもできないし、癒やしきれない作物もあるし、癒やしの力だけではどうにもならない時間が必要な果樹などもあって、あくまで今出来る限りの範囲でのことでしかないのだが、それでもその力は確実に、いつも通りの光景を……日常に必要な緑の力をこの町に取り戻してくれていて……ユウカはその光景を笑みを浮かべたまま、眺め続ける。
そうやって庭の木々や、街路樹や、空き地のなんでもない雑草までもが蘇っていく中……なんとも不穏な羽音が何処からか聞こえてくる。
その音は普通の虫が発せるようなものではなく、確かな魔力が込められた日常ではまず聞かない力強い音となっていて……笑みを押し込めたユウカが構えを取って警戒をしていると……そんなユウカの上空に黒い塊が……ミニグリ子さん達の襲撃を受けて、急遽そうしたのだろう、大きな一塊となった今回の元凶……虫型幻獣が姿を現す。
それの出現を受けてすぐに周囲のミニグリ子さん達が反応し、突撃をしかけるのだが虫型幻獣は、他の個体と連携することでミニグリ子さんを跳ね返し、迎撃し……逆にミニグリ子さんを食ってやろうと反撃を試み始める。
そんな虫型幻獣の抵抗に対してミニグリ子さん達は、その速度を生かしての高速戦闘を……激しい空中戦を仕掛けるのだが、虫型幻獣も負けておらず、一進一退……どちらも決定打を欠いた状態での攻防が繰り広げられることになる。
そうやってミニグリ子さん達と虫型幻獣が戦っていると、駆除作戦に参加していた他の幻獣達……タダシのグリフォンを始めとした獣型、爬虫類型、鳥型、魚介型など様々な幻獣達が駆け付けて、ミニグリ子さんの援護をし始めるのだが、それでも戦況は拮抗したままで……中々虫型幻獣の連携を、黒く大きく膨れ上がる塊を打ち崩すことが出来ない。
そんな光景を静かに、何もせずに見守っていたユウカは駆け出し……空中を舞う虫型幻獣達の真下に立ってぐっと腰を下ろし、両拳を握り、全身の魔力を唸らせながらの構えを取る。
本来であれば無関係の者がそうやって手出しをしようとすることは望ましくないことなのだが、周囲の召喚主達はミニグリ子さんの召喚主がユウカであると勘違いをしていて、関係者であるのだと思いこんでしまっていて、そんなユウカを止めようとは……何かを言おうとはしなかった。
事情を知っているタダシは対策本部から動く訳にはいかず、ハクトも本体であるグリ子さんと役所に残ったままで……ミニグリ子さん達はむしろ、顔見知りというか、本体と仲の良いユウカの参戦を喜んでいる節があり……そうして誰にも止められることなくユウカは、その魔力を練り上げて……その拳に集めることに成功してしまう。
これは鍛錬ではない。
普段行っている手加減をしての一撃ではない。
実戦だからと本気で……全力で練り上げた魔力で、ユウカはその拳をしっかりと構えながら、大きな声を発する。
「危ないので離れてください!!」
それを受けてまずミニグリ子さん達が一斉に虫型幻獣から距離を取る、続いて他の幻獣達も状況をよく分かっていないながらも、主力であるミニグリ子さん達がそうしたのだからと距離を取る。
誰も彼もが距離をとって空中に……ユウカの上空に虫型幻獣の塊だけがあるという状況になって、ユウカは大股を開いてしっかりと大地に根を下ろし……その拳を真っ直ぐに上空へと突き上げる。
瞬間、衝撃が上空へと突き抜けて、黒い塊達が粉々に砕かれ、青い空に点在していた雲さえもがその衝撃に貫かれ、雲散霧消する。
ユウカが立っていた、道路のアスファルトも反動でそうなったのか大きく砕けてヒビが入り……そして距離を取っていた他の幻獣達までもが、その衝撃の余波を受けて姿勢を崩す。
そうして虫型幻獣の羽音が止まり、空気が切り裂かれたことによって発生した独特の風切り音だけが周囲に響き渡り……そしてミニグリ子さん達が「キュキュン!」なんて声を上げて、動き始める。
そこからはもう勝負は一方的なものとなった。
虫型幻獣はその数を大きく減らし、生き残っていたとしても大きくダメージを受けて、まともな抵抗をすることが出来ない。
一方ミニグリ子さん達はまだまだ余力を残していて、数も多いままで、元気に空を飛び回っている。
仮に虫型幻獣がなんらかの抵抗を出来たのだとしても、そうなったらそうなったでユウカからの追撃が来る訳で……そうして心が折れてしまったらしい虫型幻獣達は抵抗らしい抵抗をしないまま、ミニグリ子さん達に食われていく。
最後の一匹……今回の事件を起こした元凶である本体だけを残して食い尽くされていって……そうやって最後に残ったその本体も、ミニグリ子さん達の鋭いクチバシによってその足を、羽根を、体をしっかりと抑え込まれてしまい……あえなく御用となってしまうのだった。
お読みいただきありがとうございました。




