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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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上陸



 翌日。


 ハクト達は、ハクト宅のリビングで、テレビ報道をじっと見つめていた。


 そこにはハワイでのハウメア神に関する報道がされていて……画質が荒いながらハウメア神の姿も流れている。


 火山を跨ぐように出現し、それに驚くハワイの人々に軽く手を振って挨拶をした後に、ゆっくりと歩き始める女神。


 その目の周囲や口の周囲、長く黒黒とした髪の毛のあちこちにダイヤモンドを思わせる、人の手で削られたものとはまた違う、不揃いかつ様々な形の宝石が散りばめられていて、その長い神は植物のツルでまとめられている。


 そんな野性的な面もあれば、金銀に彩られた豪華なワンピースドレスを着込んでもいて、褐色の肌に赤いドレスがなんとも合っている。


 そんなハウメア神が大地を踏みしめると、その周囲に木々が生い茂る。


 あっという間に力強く、それらはバナナやココナッツといった南国を思わせる果樹で、まるで果樹園が突然出現したかのような光景が、ハウメア神の足跡の周囲に広がっていく。


 そしてそういう結果になることはハウメア神も分かっているのだろう、火山を跨ぐような大股で、周囲に何もない……迷惑にならない場所に足を下ろして果樹を広げていく。


 それを見て人々は大喝采、果樹に駆け寄って登り、早速実を食べ始める。


 それは余程に美味しいのだろう、またも大喝采……人々は神々の恵みを口にしながら、踊って歌って、この特別な日を存分に……全身全霊で楽しむ。


「……ハウメア様って、果物作れちゃうんですね??」


 ソファに腰掛けながらユウカがそんな声を上げる。


「……まぁ、神々のなさることだから驚きはしないが、火山に縁があるということだし、その影響もあるのかもしれないな。

 ……被害ばかりに目がいきがちな火山噴火だが、それによって大地に肥料が行き渡る恵みでもある。

 つまりあの現象は、それを表現している……んじゃないかな」


「ははぁ……なるほどぉ。

 ……それがこれからこちらにいらっしゃるんですね??

 えっと、こっちでも同じ現象が???」


「さて……ハワイだからこそ発揮出来ていた力かもしれないし、こちらにまであの恵みをくださるかはなんとも言えないし、実際に足を踏みしめる時まではなんとも言えないだろう」


「……そうですかぁ。

 ついでに質問なんですけど、あんな神様を呼んじゃってグリ子さんって、その、怒られたりしないんですか? 今回のことって結構な大トラブルですよね??」


「怒られる訳がないさ。

 神々に祈り助けを求めることは、世界中の誰もが日常的に行っていることだ。

 風切君だって一度くらいは、神様助けてくださいと願ったことがあるだろう?

 それを罰するなんてとんでもない……ましてや神々のなさることだ。

 一体誰が罰するなんてことができるのか……仮にそんなことをした場合は、神々全体の怒りを買う可能性すらある。

 そんなことをするよりは、ハワイの人々のように喜び、祝い、歌い、歓迎し、その恩恵を存分に受けたほうが良いだろうね。

 それに数百年ぶりの神々の顕現だ、研究とか情報収集とか、お偉いさん達はそっちで忙しいんじゃないかな」


「なーるほどー。

 ……確かに体調崩したときとか、祈っちゃいますもんね……。

 じゃぁええっと、後は待っているだけで子供達の魂は救われるってことですか?」


「恐らくはそうなる……が、ただ待っているだけでは無礼にあたる。

 そういう訳で今、大僧正達は、ハウメア様を歓迎するための儀式を整えているところさ。

 精一杯の歓迎をし、事が成ったら感謝をし、最後にはしっかり見送る……そのための祭壇を整えたりで大忙しらしいね。

 ……今回の件では大僧正は大忙しだねぇ」


 と、呑気な言葉を口にしてからハクトは先程淹れたばかりの茶をすする。


 それを見てユウカは、少しだけ冷や汗をかき……それから言葉を返す。


「えっと、先輩は何かしなくて良いんですか? 呼び出したグリ子さんとかも」


「グリ子さんは友人に頼んだだけで、俺も今回の件では責任がある立場ではない。

 ……そもそも論を言うのなら、あそこまでの呪いになるまで対策が出来ていなかった行政にこそ責任がある。

 ……まぁ、主犯はまだ謎のままで、そこを探り解決するくらいの責任はあるかもしれないが、ハウメア神のことについての責任はないかな。

 だからまぁ、主犯探しだけは落ち着いたらやろうと思う。

 ハウメア神がおかえりになって、大僧正が落ち着いたら調査を開始するとしよう」


「なるほど……了解です。

 とりあえず犯人みつけてぶっ飛ばしたら良いんですよね! 任せてください! そういうのは得意です!

 あとは……何かヒントでもあれば良いんですけど……」


「そこら辺もハウメア神がおかえりになってからだね。

 何ならハウメア神が何かヒントをくれるかもしれない……これからハウメア神は子供達の魂に触れ合うことになる訳で、そこで何かが見えてくるかもしれないからね。

 今はとにかく下手な騒ぎを起こすことなく神様の来訪を歓迎するとしよう」


 そう言ってハクトは日常に戻っていき、またユウカも日常に戻っていく。


 それから政府行政は大騒ぎ……来訪する神を歓迎するために、四聖獣やブキャナンを始めとした現存幻獣、更には神社庁も総動員しての対応が行われた。


 当然ながら歓迎する民間人も大騒ぎ、海を渡るハウメア神を一目拝もうと日本中の暇な船が集まったりもして、政府はその対処にも追われることになる。


 そうして慌ただしく時間が過ぎていって……翌日。


 ついにハウメア神が領海に入り、国内も一気にお祭り騒ぎとなる。


 各所でお祭りが開かれ、ハウメアまんじゅうなるものまで販売され、報道も過熱し……そんな中で、ブキャナン達は懸命に歓迎の儀式をすることになる。


 そうしてついにハウメア神は上陸する。


 不思議な力で一番迷惑にならない場所を選んで上陸し……そうして果樹を広めながら、ブキャナンが待つ祭壇へと向かっていくのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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ブキャナンさんのポジションが空港で出迎え用のプラカード掲げてる案内役の人に見えてくる…
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