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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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幽霊退治



「せいっ!!」


 幽霊達があれこれと声を上げるのも構わず、ユウカが拳を放つ。


 瞬間幽霊達の体が千切れて霧散していく。


 鋭く威力が高く、その分だけ幽霊達の消滅も早い。


 一方ハクトは、糸をあえて魔力で光らせ、いかにも斬れ味鋭いように見せながら振るい、幽霊達を斬り裂いていく。


 ハクトの糸であれば魔力が十分に込められているので、あえて見せる必要もないのだが、それでも念のため、なんらかの効果が得られるかもと考えて光らせているようだ。


 そしてフェーはユウカの側でユウカを真似して小さな前足でパンチを放っている。


 幽霊達は可愛らしいそれを侮るが、そもそもが幻獣の一撃……予想外の効果を発揮して幽霊達にダメージを与えていく。


 一撃で消し去ることは出来ないが、怯ませることは可能なようでユウカの援護をするために次々に幽霊を殴っていく。


 グリ子さんとフォスも参戦していた。

 

 グリ子さんがクチバシで軽くつつくと幽霊は消滅し、フォスがつつくと怯む。


 そのためフォスがつついて追い回し、グリ子さんの方へと誘導するという形で援護をしていて、グリ子さんは軽快に幽霊をつついていく。


 その間も幽霊達はこれでもかと声を上げ、なんとか攻撃を止めさせようと言葉を尽くすが、ハクトもユウカも聞く耳を持たない。


 ハクトはそれが意味のない言葉だと知っている、ユウカは戦闘中に余計なことを考えるべきではないと割り切っている。


 そして動けば動く程、二人の動きは洗練されていく。


 体が温まり、魔力が良く巡り、精神が集中されて、慣れてきたのもあってどんどん動きが洗練されて、幽霊達がどんどん殲滅されていく。


 ハクト達が動き回ることで何かが活発化しているのか、幽霊がどんどん再生されてはいるが追いつかず、処理速度があっという間に上回り、更には再生するための魔力も失われてきたのか、幽霊の数が目に見えて減っていく。


 そしてあと一体、そこまで来た所で最後の幽霊に拳を向けたユウカが、何かを感じたのか大きく飛び退く。


 最後の幽霊から距離を取って、警戒心を顕にしながら片手でフェーを抱え、もう片手で拳を構え、声を張り上げる。


「先輩!!」


 それを受けてハクトもまた警戒態勢を取る。


 ユウカと違ってハクトは、最後の幽霊に何も感じていなかったのだが、ユウカがそう言うのならと最大限の警戒だ。


 グリ子さんとフォスもまた警戒をするためにそれから距離を取り、翼を広げて威嚇のポーズを取る。


 そんな風に一同が視線を送る幽霊は、他の幽霊と違って不確かな姿をした幽霊だった。


 黒いモヤ、蠢く影、黒く染まる程に魔力濃度は高いようだが、ユウカの警戒っぷりを見るに魔力以上の何かを感じ取っているようだ。


 そして幽霊はどうやらユウカを見ているようだ。

 

 顔や表情、視線は読み取れないのだが、体の向きがユウカに向けられていて……そして幽霊が腰を落として拳を突き出しての構えを取る。


 ……どうやらユウカと同じように格闘を得意としている幽霊らしい。

 

「先輩!? 幽霊って格闘技できるんですか!?」


 それを見てユウカが悲鳴のような声を上げる。


「出来るは出来る、それだけの魔力の濃度があれば固体化のような現象が起きるからね。

 それよりも気になるのは、それは幽霊……再生された存在ということだ。

 この建設中の病院で、風切君が警戒するレベルの腕のものが暴れたという事実があるからこそ今『再生』されている……。

 ここで何があったのか、どうして幽霊騒動が起きることになったのか……その影が原因かもしれない」


 それにハクトは冷静に、警戒を続けながら答える。


「な、なるほど。

 この人がなんかしたからこの騒動と……。

 顔が見れたらそこから原因とか色々探れそうですけど、黒いまんまじゃよく分からないですよねぇ」


「……原因を探ることは依頼の範疇ではないよ。

 あくまで幽霊騒動の解決が依頼だ、もちろん原因が分かるに越したことはないが、無理はしないように」


 それをハクトからのGOサインと受け取ったユウカは、一気に駆け出し、影に拳を叩き込む。


 が、影はそれを読んでいたようで、突き出していた拳で打ち払うことで見事にそらす。


 すぐさまユウカは蹴りを放つ。


 しかし蹴りもまた幽霊の拳で受け流されてしまう。


 すぐさま拳の連打。全てが避けられるか受け流されるか……膝蹴り、回転蹴り、かかと落としと連続攻撃が続くが命中することはない。


「せぇぇぇぇい!!」


 しかしユウカは焦ることはなく、気合を入れ直しての一撃を放ち続ける。


 自慢の攻撃全てが受け流されても動揺はなく、むしろそれだけの強者が現れたことを喜んでいるようだ。


 その様子を見てハクトは、ユウカが手放したフェーを拾い上げ、糸を展開しながら距離を取り、邪魔にならないようにする。


 グリ子さんとフォスも同様にし……そうしながら周囲に結界を張って、建物や放置されている道具が壊されないようにしてくれる。


 それを説明した訳ではないのだが、魔力の流れからなんとなく察したらしいユウカは、より激しく影を攻撃していく。


 ……が、影はその全てを受け流していく。


「……何者だ? 幽霊はあくまで記憶、そこに存在した者の再生でしかない。

 風切君と肉弾戦を行える程の使い手とは……常人ではなさそうだが……。

 ……いや、そうか、人ではない可能性もあるのか。

 幻獣か神代の時代の英雄か……それ程の存在がここで一体何を……?」


 ハクトがそう疑問の声を上げるが、返ってくる答えはない。


 あるいはブキャナンがここにいたならなんらかの答えを返してくれたのかもしれないが、たかが幽霊退治に呼ぶ訳にもいかず、ここにはいない。


 ……グリ子さんならばあるいは知っているのかもしれないが、特に答えはしない。


 つまりは知る必要のない情報かもしれないと、そんな開き直り方をしたハクトは、それ以上悩むのをやめて糸を操り、影を縛り上げていく。


 凄まじい力と魔力、完全に動きを縛ることはできないが、わずかにでも鈍らせれば……。


「とりゃぁぁぁぁぁ!!」


 気合いっぱいのユウカの攻撃がぶち当たる。


 しかしそれだけでは影は消えない。


「てりゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 続く二撃、三撃……それらで影が削れてようやく消え始める。


 そこからはもうユウカは止まることなく拳を叩き込み続け、そうしてどうにか幽霊退治はひとまずの成功となるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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