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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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ピザ実食



 魔力の球体の中でじんわりとピザが焼き上がっていって、何故だか香ばしい香りだけは球体から出てきてしまって、リビング全体にそれが広がる中、グリ子さんの寝床辺りからコトンと音が響く。


 それはハクトの耳にも、ユウカの耳にも届いていて……訝しがった二人は自然とそちらに視線を向ける。


 するとそこにあったのは魔石を保管している金庫で、また魔石が大きくなったのかと戦慄しながらハクトが中の確認をしようと扉を開け始める。


 ダイヤルを入力し、鍵を差し込んで回し、それから扉を開けると中にあったはずの魔石のいくつかが消えていて、最後の一個も小さくなっていた。


「……なるほど」


 と、ハクト。


「何がなるほどなんですか?」


 ユウカがそう質問するとハクトは扉を閉めながら言葉を返す。


「先ほどのグリフォンによる捧げ物、あれも召喚の一種ではある。

 何の魔法陣も準備もなしに召喚したとなれば、とんでもないことで……魔法でどうにかしたとしても相応の魔力が必要になる。

 つまりグリ子さんは今まで魔石に貯め込んでいた魔力のほとんどを使ってあのピザを作っているという訳だね」


「……えっと、あの魔石っていざという時に使えるレベルの、世界を救えちゃうとかの力があったんですよね?

 それをピザに使っちゃったんですか? ただピザの材料を手に入れるために?

 つまり私達は今から世界で一番無駄に高コストなピザを食べるんですね??」

 

「まぁ、そうなるかな。

 コストがただただ高いだけで、それに見合った質ではないはずで……なんともはや、ものすごい無駄遣いというか贅沢というか……」


 と、ハクト達がそんなことを言っている間にピザが焼き上がり、ハクトが用意しておいた調理シートの上にピザがそっと置かれる。


 もう出来上がってしまったのだから、今からあれこれ言っても仕方ない。


 それ以上何も言わずハクトはピザカッターを手にし、ピザのカットをし……全員分のピザを配膳していく。


 そして最後に自分の分を皿に乗せ……それから席についたハクトは「いただきます」と声を上げる。


「いただきまーす!」

「クッキュン!」

「プッキュン!」

「わふ~」


 それぞれ声を上げて続き……食べる前に一瞬の間、この肉がもし特別なものだったらというちょっとした躊躇の後に、考えても仕方ないと口に近づけてかぶりつく。


 生地などはこちらで用意したもの、特別な味ではない。


 焼き上がりは最高で、ムラなどもなく完成度が高いから美味しく食べられて最高ではあるが特別ではない。


 が、具はどれもこれも特別、野菜も当然だが肉が特に印象的で、ハクトもユウカも食べたことのない味に思わず困惑する。


 基本的には肉の味ではある、旨味が強く肉汁に溢れてたまらない。


 だが同時にとても甘い、しかも今までに感じたことのない甘さだ。


 砂糖やハチミツとも違う、爽やかで強烈な甘さ……どこか旨味にも似た印象があって、元々の肉と合わさることで、溶け合うようで区別が難しくなる。


「すっごく美味しいですけど、すっごくあっまぁいですねぇ……すごく太っちゃいそうな」


 と、ユウカ。


「……どうだろうね、確かに甘く感じてはいるが、我々が知る糖分なのかはなんとも言えないな。

 ゼロカロリードリンクに使われる甘味料のように全くカロリーもないのかもしれないよ。

 ……少なくとも砂糖やハチミツの甘さとは違うようだし、不健康なものをグリ子さんが食べさせてくるとも思えない。

 ……しかしこれは、一体何の肉やらなぁ、天然でこんな甘い肉なんて、多くの獣に狙われることになりそうだが……」


 そうハクトが返すとユウカは、そういうことなら気にしなくて良いかと勢いよくバクバクと食べていく。


 それを見てハクトは、糖分以外にも含有魔力の心配があるのだが……なんてことを思いながらも口には出さず、味を堪能するためにゆっくりと食べていく。


 食べれば食べる程に甘いが、しつこさはなく飽きもこない。


 それどころかどんどん美味しさが増しているようにも感じられて……あと少しで完食というところで、体内から魔力が溢れ出てくる。


 やはりなんらかの幻獣の肉ではあったようだ。


 しかもこれはかなりのレベルの幻獣に違いなく、ドラゴンなどに並ぶレベルではないものの、伝説級のものではあるらしい。


 その肉のほんの一部を食べただけでこの魔力……生前はどれだけの魔力を持つ幻獣だったのか、想像もつかない程に凄まじい力だった。


「これは……魔石分の価値はあった、かな?

 いや、どうだろう……一時的なブーストだとなんとも言えないか、これから魔力を使う用事がある訳でもないしなぁ」


 それを受けてハクトがそんなことを呟く中、ユウカやグリ子さん達もまた魔力に満ち溢れ……その魔力を使ってなのか、グリ子さんの羽毛の艷やかさが増していく。


 爪もクチバシも整えられ、形もだが色も綺麗になり、傷もシミも全くなく、キラキラと煌めき始める。


 フェーもフォスも同様で、どうやら幻獣達は自分達のメンテナンスのために魔力を使っているらしかった。


「なるほど!」


 それを受けてそう声を上げたユウカもまた、自らの体に意識を向けて、その髪や肌、爪を整えていく。


「……なるほどではないよ……」


 そんな中、ハクトだけはそうはせずに自分の体内に魔力を留めようと努力を続ける。


 それに意味があるのかは分からないが、魔力に満ちている今だからこそ試せることではある。


 懸命に集中し、体内に留め続け……一方グリ子さん達はどんどん美しくなっていく。


 ユウカもまた同様で……ハクトはそれを見て、問題にならなければ良いがなぁと、そんなことを思う。


 どう考えても目立ちすぎる、髪だけでも凄まじい目立ち方だろう。


 一体何をどうしたらそうなったのかと聞かれて、ユウカは何と答えるのか……なんとも言えない。


 下手なことを言ってしまって幻獣狩りなんてことにならなければいいが……いや、そもそもこの肉が何の肉か分からないのでは、それも起きようがないか。


 しかしこれは一体何の肉なのだろうか?


 ハクトはあれこれと考えながらも、魔力を留め続け……そうしながら食後の茶を用意するために台所へと足を向けるのだった。



お読みいただきありがとうございました。

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