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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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302/303

鉱石人との邂逅



 鉱石人との対面は、彼らの住居で行うことになった。


 当初は政府が用意した宿舎で寝泊まりをしていた鉱石人達だったが、その生活に合う宿舎ではなかったようで、今では自分達で作った住居で日々を暮らしているらしい。


 そこは彼らに与えられた鉱山にあるそうで、幻獣用のタクシーを手配して二時間……山奥の奥、鉱石人を守るために設置されたらしいいくつものゲートと検問、検疫所を通った先にそこはあった。


 元々は採石場だったらしいそこは、山を切り開いたように開いた空間があり、そこには数え切れない程のプレハブ小屋が建てられていて、いかにも研究者でございますといった白衣姿の男女の姿がある。


 武器を携行した警備の姿や幻獣の姿もあり、いかにも一般人という格好のハクト達を見て一瞬警戒するが、事前に貰っておいたパスを首から下げているからか、すぐに警戒が解けてハクト達が先に進むことを許してくれる。


 ハクト、ユウカ、グリ子さん、フォス、フェー。


 そんな一行で奥へと進むと、採石場の壁に掘られた大穴がある。


「……トンネルかな?」


 と、ハクト。


 それはそう言いたくなる程度には整えられたものだった。


 入口には表札変わりなのか、鉱石人の石像が置かれていて、入口には門柱のようなものも設置されている。


 中に入ってみると更に驚く光景が広がっていた。


「……トンネルなのか、洞窟なのか……」


「クッキュン!」


 更にハクトが声を上げ、グリ子さんがそれに続く。


 真四角に掘られた穴、それは奥へとまっすぐに伸びていて、天井や壁、床を見ると天然の洞窟のような色合いにはなっているのだが、ツルンと整えられて天然感はない。


 研磨されて反射する大理石のように洞窟の天井や壁や床が輝いている。


 一つの歪みも欠けもなくツルツルで……手で触れてみるとより大理石感が増すが、見た目としては洞窟の壁だったり、そこから突き出た石だったり、時には砂や泥のような色合いの部分もあるが、しかし手触りはツルツルだ。


「何をどうしたらこんなことになるのやら……。

 目に見えない結界で押し広げたようだが、魔力の形跡はなし……特別な機械で研磨した後で薬品か何かで固定化した……のか?

 あるいは樹脂のようなものを塗りつけたのだろうか?」


 歩くとコツコツと靴がなる通路には電灯などはないのだが、明るく照らされていて、目を細めて光源らしき部分を見ると、壁と岩の隙間のような場所から光が漏れ出て一帯を照らしているらしい。


 壁の中に光源を埋め込んでいるのか、壁の中にある石などを光らせているのか、鉱石人の無茶苦茶振りを思うと、どちらもありえる話だった。


「すごいですねー、でも綺麗で良い感じです、洞窟って感じ全然しませんし……ジメジメしてないですし、虫とかもいないですよ」


 と、ユウカは周囲を見回しながらそう言って、ズンズンと先に進んでいく。


「……言われてみれば確かに、洞窟の中なら湿気くらいこもってそうなものだが、そういうものは一切ないな……」


 そしてハクトや幻獣達もそれに続き、通路が終わって開けた空間に出ると、またとんでもない光景が視界に入り込んでくる。


 体育館程の広さの空間があり、そこにはやはり白衣姿の人間、彼らは四角い塔のような何かを夢中で調べているようで……通りすがりにその一人が持っているクリップボードを覗き込んでみると、メモ書きを読み取ることが出来る。


『鉱石人の塔型空調設備は、彼らが嫌う湿気や腐食性物質を空気中から吸着し、氷に加工した上で、洞窟の外に運ぶ機能があり―――。

 彼らにとって錆びや腐食、酸化などの現象は、人間で言う所の熱気による体温上昇、熱中症に近いような病状のようで―――。

 つまりこれは快適な暮らしを得るためのエアコンで―――』


 エアコン……。

 

 人間は暑さや寒さ、湿気を取り除くために使用するが、鉱石人は自分達の体を錆びさせるものを取り除こうとしているらしい。


 そして錆びる際には熱中症のような症状が起きるようで……これが洞窟の中に湿気がない理由かと、納得は出来る。


 恐らく虫や鉱毒といった物質もその空調で取り除かれているのだろう、蟻酸や腐食効果を嫌ってのことのようで、人間にとってもありがたい効果ではあるのだろう。


 そして集めたそれらの物質は湿気で作った氷の中に閉じ込めて洞窟の外に排出……効率的と言えば効率的なのかもしれない。


 そんなエアコンの先には積み上げられた何かがあって……近付いたことでそれが、ハニカム構造の個室のようなものだと分かる。


 6階層か7階層か、ちょっとしたマンションくらいの規模で整然と積み上げて、出入りのためかハシゴのようなものが、全ての個室にかかっている。


 恐らくは鉄かスチールか、その辺りの金属で作っているようで、鈍い光を放っていて……科学的とも言えるし、生物が作った巣のようにも思えるし、初めてみるその光景にハクト達はただただ圧倒される。

 

 そしてそんなハニカム個室から一人の鉱石人が出てきて、ハシゴを凄い勢いで駆け下りて……そしてハクト達に興味を持ったのか、ハクト達の下へと駆け寄ってくる。


 それを受けてハクトとユウカが挨拶をしようとしたその時だった。


 グリ子さんがチャッチャッと前に進み出てクチバシを大きく開ける。


 すると鉱石人はそれを待っていたかのように丸い頭を下げて差し出し、グリ子さんがその頭をパクリと咥える。


「ん!?」


「えぇ!?」


 ハクトとユウカが思わずそんな声を上げる。


 無礼にならないだろうかと心配になるが、自らそうしてくれと頭を下げたようにも思えるし、とにかくリアクションに困ってしまう。


 そんな中、鉱石人は嬉しそうに目の光を細めてグリグリと頭を回転させ、グリ子さんもそれを面白がっているのかクチバシでカチカチ音を鳴らす。


 そんな光景に研究員達も興味津々、遠巻きに見守ったりカメラを向けてきたりとそれぞれの反応を示す中、ハクトが声を上げる。


「も、もしかしてグリ子さん、鉱石人に会ったことがあるのかい?」


 そんなハクトの問いかけにグリ子さんは目を細めて……否定も肯定もせずにただただ静かに微笑むのだった


お読みいただきありがとうございました。

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