鉱石人
それからは世界中で鉱石人という名が与えられることになった避難民の研究が続き、次々に驚くべき生態が明らかになっていった。
その中でも特に世間に驚きを与えたのが彼らの増え方だった。
彼らは繁殖をしない、しかし番は作る。
ではどうやって数を増やすのか? その答えは道具のように子供を『手作り』するというものだった。
排泄物とはまた違う独自の物質……素材を腹部から取り出し、それを練り上げ人型の何かを作っていく。
それは必ず番の手で行わなければならず、番の素材が混じり合うことで両者の特徴を持った子供となる。
いつどのタイミングで生命が宿るのかはなんとも言えない、練り上げ始めた時点でその素材は生命活動を行っているようで、練り上げれば練り上げる程、その活動は激しくなり、人型となった時点でほぼほぼ完成状態となる。
あくまでほぼで、それからも様々な細工が行われ、中に回路のようなものが組み込まれることで完成……一人の鉱石人として活動を始める。
この情報は世間に驚きを与え、学会に驚きを与え、研究者達を混乱させた。
果たして彼らを幻獣と認定しても良いのだろうか? と。
生物であるかも怪しい、魔法というよりも機械的な存在ですらある。
しかし彼らは魔力を持っている……似た幻獣でゴーレムなどが存在しているが、泥など有機物で構成されている彼らと比較するとあまりにも機械寄り過ぎる。
特にその精神……心や魂を構成しているというのが回路というのが厄介で、コンピューター回路にそっくりなその存在が研究者達を混乱させていた。
いっそその回路を研究できたなら楽なのだが、その存在の根幹に関わる部分を寄越せなど言えるはずもなく、奪うなんてことは尚の事出来るはずもなく、鉱石人はもちろん他の幻獣の怒りまで買いかねない行為だからと、世界の誰も研究出来ずにいた。
そうしたことから鉱石人が幻獣なのかどうかの議論は未だに続いていて、いっそ新しい生命として認定すべきという論まで現れて、幻獣に関する学会はいつにない騒がしさに包まれていた。
更には彼らの生み出す物質の研究も盛んに行われていた。
魔法とも科学とも言えない物質、新たな可能性……それこそ魔法が失われた際の対幻獣兵器などに使えるかもしれないと、各国は熱狂していた。
「おかげでお父さんもお母さんも忙しくなっちゃったみたいで、私も結構仕事に駆り出されてるんですよねぇ」
数日が過ぎての休日、遊びにやってきたユウカが、ソファでフェーを抱きしめながらそんな声を上げてくる。
「風切君はどんな仕事を任されているんだい?」
出前の注文を済ませてリビングに戻ってきて、ソファの側までやってきたハクトが言葉を返すとユウカは「んー」と声を上げてから、返事をする。
「言える範囲だと護衛、ですかね。
うちの両親や鉱石人を狙う悪い人がいるらしいんですよ。
どこよりも先に研究を完了させて、色々な利益を先取りしちゃいたいから、あっちこっちが研究者を欲しているとかで、警備が良くない場所に行く時は護衛がつくんです。
で、うちの両親が一番信頼出来る護衛ってことで私が呼ばれる感じですね。
実際何度か変な人がやってきたんで、ボッコボコにしましたね」
「そ、そうか……不審者とは言え、相手は人間だ、程々にね。
しかしそうすると、もう鉱石人には会えた訳か、風切君から見て彼らはどうだったかな?」
「すっごく可愛かったです。
あっちこっちに興味津々って感じで……そして頭も凄く良いみたいです。
コンピューターとかにも興味津々で、破棄されたのを見かけて勝手に分解して構造を調べたりもしてたみたいです。
でもそれをそのまま理解した訳じゃなくて、彼らなりの理解をしたみたいです。
……その後にレモンとリンゴとスイカとトマト、それと分解した残骸を組み合わせて新しいコンピューターを作っちゃったらしくて、今の最高峰のコンピューターの数倍の性能があったけど、野菜と果物が排熱であっという間に焼けちゃって使えなくなっちゃったそうです」
「……野菜と果物で?
それはまた……新しいと言うか、新機軸と言うか……。
その作り方は当然記録していて、そして再現は不可能という所かな?」
「はい、その様子はビデオで録画していて、可能な限り再現してみたんですけど、まぁ当たり前っていうか、動きすらしなかったみたいです。
普段なら魔力とか魔法の影響って話になるんですけど、鉱石人さん達は魔力を使わないんで……何がなんだか理解すら出来ないっていうのが人類の科学の限界、どうにも出来ないって感じらしいです」
「そりゃぁまぁ、そうだろうなぁ……。
科学的と言うか、そういった知識にも明るいのか……。
ちなみに力の強さと言うか、戦闘能力については風切君からどう見えたかな?」
「あー……多分ですけどかなり強いですね。
純粋に硬そうっていうのもあるんですけど、力が強いしよく動くし、スタミナも凄い。
食事をしないって言うのか、栄養の補給の仕方が独特でそこら辺の石を食べてもある程度エネルギー補給が出来る上に、食事と言うか消化に体力を使わないんで、何だったら食事しながらの戦闘すら可能なんですよ。
長期戦が必要そうな耐久力なのに、そんなことされたら普通にスタミナ切れで負けるかもしれませんねぇ」
「……風切君でも苦戦するのかい?」
「普通に倒そうとするとそうなりますね。
高所からの落下とか、破壊方向で戦えばなんとかなりそうではありますけど、そうなるともうただの殺人っていうか、戦闘とはまた違う方向にいっちゃうかなって」
それもそうだとハクトが頷き、興味津々なのか側に駆け寄り話を聞いていたグリ子さんも頷く。
それからグリ子さんはリモコンを操作してテレビをつけて、鉱石人に関する特集ニュースをじっと見つめ始める。
本当に興味津々……何か思う所があるのか、最近は毎日のようにそうしていた。
「……ふぅむ、機会があったらグリ子さんに会わせてみせるのも面白いかもな」
と、ハクト。
「あ、じゃぁ両親に伝えておきます」
と、ユウカ。
そうして鉱石人に会うことがあっさり決まってしまい……それは数日後に実現することになるのだった。
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