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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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避難民



 数日後。


 避難民の世話などで東奔西走、大忙しだったブキャナンが家へとやってきて、ハクトはその慰労のために、ブキャナン好みの出前を取っての接待を行っていた。


 寿司に天丼、そしてカツ丼、どれもブキャナンが好んでいたもので……ついでにグリ子さん達も舌鼓を打っていた。

 

 そんな中でハクトは、ブキャナンからどんな避難民がやってきたのか、一体何があって世界が滅んだのかの説明を受けたのだが……あまりの話に思わず頭を抱える。


 そうして黙り込んでしまっている所に、仕事を終えたらしいユウカがやってきて……そしてハクトの様子を見るなり首を傾げながら問いを投げかける。


「どうしたんですか?」


 それを受けてハクトは、ブキャナンから聞いた事情をゆっくりと語り始める。


 まず避難民となった一族は、幻獣ではあるのだが、獣と言うよりは人寄りの文明を持つ種族だった。


 名称はまだ定まっていない、その言語すら解読が出来ていない状況だが、一部の幻獣がその心を読むことで事情が明らかになっていた。


 その避難民達は1m程の身長で人型、体は紺色、皮膚でもなく毛皮でもなく、鉱石に近い体を持っていて……大きな顔はほぼ球体、大きな口はあるが耳も鼻もないという、つるんとした顔をしている。


 そして目は顔の表面にあるのではなく、球体顔の中央辺りにあって、そこから透き通っている体を通して外の情報を読み取っているらしい。


 その目はつぶらでランランと輝いていて……驚いたことに電灯のような役割を持っているようだ。


 目そのものが輝いて光を放ち、それで視界を確保しながら情報を入手する。


 ブキャナンは避難民の姿を見た時に紺色の電球かな? という感想を抱いたそうだ。


 そんな体をしながら頭にはヘルメットのような帽子、ロングコートにぶかぶかズボン、デカい手袋にデカい革靴、そしてツルハシのような工具を手にしているらしい。


 そして生態というか生業は、鉱石を掘り続けること。


 掘った鉱石をどうするかと言えば、その答えは採掘のためのツルハシなどの工具を作るか、食すかで……彼らにとって鉱石は食材ということになるらしい。


 そして今回、一体何があったのか? 


 その答えはとてもシンプルなもので、移住先となる惑星を食べすぎて破壊させてしまったらしい。


「……え? えっと、坑道を掘りすぎてってことですか? え?

 こっちの世界でもあちこちに鉱山はありますけど、それで地球が壊れたりはしませんよね??

 えっと……どのくらいの規模でやっちゃったんですか?」


 と、ハクトから説明を受けたユウカがそんな疑問を口にし、ハクトは分からないと首を左右に振る。


 すると口いっぱいに寿司を頬張っていたブキャナンが、もぐもぐと食べて飲み下してから口を開く。


「どうやら彼らは元々いた世界から厄介払い、追放されたような形で新世界、新惑星に移り住んだようでやすねぇ。

 そして天敵も病気もなく、生存競争をする相手もいない最高の環境のそこで増えに増えて増え続けて、際限なく惑星を掘り続けたようでして……。

 学者さん達の概算では、数兆から数十兆規模の人口だったのでは? とのことで……その数で掘りに掘り続けたんでしょうねぇ。

 彼らはよく言えば純朴、悪く言えば浅慮な部分があるようでして、まさかただ食事を続けただけで世界が滅ぶだなんて、思いもよらなかったようでございやす」


 それを受けてユウカが言葉を返す。


「えーーっと……そんな人達が避難してきちゃったら大変なんじゃ?

 地球も壊されたら大事ですよ??」


「それについてはご安心くだせぇ。

 今回避難してきたのは数百名程度、それも世界に散り散りになっておりやす。

 無数にある世界に散り散りに避難し、こちらの世界に来たのはほんの一部……適当な鉱山を与えながら、無闇に増えないようコミュニケーションを続けていけば問題はねぇでしょう。

 どうやら彼らはこちらの世界の景色や娯楽にも興味を示しているようでして……掘り出した鉱石をその対価として適度に受け取っていけば解決しそうだというのが、学者さん達の見解でやす。

 ……ちなみに彼らの排泄物は完全に未知の鉱石でして、簡単な研究な結果、様々な場面で役に立つ可能性があるとかで、各国政府ともに彼らの存在を歓迎する声明を表明する予定でやすねぇ」


「えぇー……それはまた、なんとも不思議な方々がいらっしゃったんですねぇ」


 と、ユウカはそんな感想を口にしてから、フェーと共に食卓につく。


 そして元気いっぱいな「いただきます!」という声を上げてから食事を始めて……ハクトはやれやれと笑いながらテレビのリモコンを手に取り、スイッチを入れる。


 すると早速避難民に関してのニュースが流れていて、政府高官達が歓迎の意を示す会見を行っている。


 記者会見用の壇上で、マイクなどが置かれたテーブルを前に笑顔で語る政治家の足元には、勝手に出てきてしまったのか、近くに用意された椅子に座っているのに飽きたのか、ウロウロとしている避難民の姿もある。


 ツルハシなどを担いで、政治家の顔を見上げてウロウロ……見るもの聞くもの何もかもが新鮮で興味津々らしい。


 挙句の果てにはパイプ椅子を持ち上げて、口に近付け目で照らして様子を確かめ……横に大きく広がる楕円の口でパクリと食いつき、かじり始める。


「あ、食べた」


 と、ユウカ。


「……まぁ、スチールやアルミも鉱石と言えば鉱石か、自ら作ったツルハシは食べないのにパイプは食べるんだなぁ」


 と、ハクト。


「工業製品となると純度が違いやすからねぇ、加工食品または料理のように感じる品なのかもしれやせんねぇ。

 不純物の無い純粋な味と言いやすか」


 と、ブキャナン。


 だがブキャナンの予想に反してあまり味は良くなかったようで、避難民はつぶらな瞳を歪ませて肩を落として悲しみを表現する。


 政治家はそれでも動揺することなく、会見を続けて、記者達は笑いながら質問を飛ばし、避難民達はまだまだ興味津々……会場内を歩き回る。


「……まぁ、これなら社会的な反発も少ないだろうね。

 色々と役に立ってくれるのなら、居場所も生まれるのだろうし、世界の崩壊自体は悲劇ではあるけども幸運な方だったと言えるだろう」


 と、ハクトがまとめる中、ユウカやグリ子さん達は、避難民達の愛くるしい姿に夢中となっていて……食事も忘れてテレビに釘付けとなるのだった。



お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
300話達成おめでとうございます どこの世界線でも、低身長でコミカルな種族はだいたいかわいい
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