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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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崩壊



 それからは特に何事もなく、無事に見学を終えて……ハクト達は帰宅ついでの外食に向かうことにした。


 店の選定はブキャナンが行い、前々から行ってみたかったという店まで幻獣用タクシーで向かい、そうして向かった先はブキャナンお気に入りの牛カツの店だった。


 幻獣用の部屋があり、目の前でご飯を炊いてくれるだけでなく、牛カツの揚げも行ってくれる。


 味付けは岩塩、ソース、醤油など様々な種類が用意されて、幻獣用のソースも用意されている。


 幻獣の体格に合わせてカツ用の肉を切り分けてもくれて……食事が始まるとハクト達は夢中でそれを楽しむことになる。


 カツも美味しいがご飯も美味しい、ご飯が美味しいと何を食べても食が進む。


 そうやって夢中で食べて食べて、一段落……食後のお茶が運ばれてきたその時だった。


 ブキャナンとグリ子さんが何かを感じたのか、天井を見上げる。


「何かありましたか?」


 それに気付いてハクトが問いかける中、グリ子さんは瞑目し、ブキャナンは手を合わせて念仏を唱える。


 その様子からただ事ではないと察したハクト達が静かに見守る中、小さなため息を吐き出したブキャナンが説明を始める。


「どうやら世界が一つ滅んだようでやすねぇ」


 その言葉を受けてハクトもまたため息を吐き出し、ユウカは首を傾げ、説明を求める。


「恐らくは幻獣災害、それで幻獣達が住まう星が砕けたようで。

 ……それによりその世界は虚無に飲まれ、こちらから観測することは不可能となったようでございやす」


 そんなブキャナンの説明は色々と言葉が足りず、ユウカが傾げた首がもとに戻ることはなく、それを見てハクトが捕捉を始める。


「星一つが砕けただけでは世界が滅んだとは言えないのでは? と、思ったかもしれないが、そもそも宇宙がある世界ばかりではないからね。

 惑星一つしか存在しない世界もあるし……恐らく今回滅んだ世界は虚無世界に移住を行ったものだろう」


 その言葉にユウカとグリ子さんが同時に「虚無世界?」という顔をし首を傾げる。


「虚無世界とはつまり、何も無い世界……何の生物も存在しない世界のことだ。

 そういった虚無世界は無数にあると研究で分かってはいるが、どこにあるかは観測が出来ない。

 つまりはそんな世界、存在しないものと一緒とされていて、観測出来なくなった時点で滅んだものとして扱うんだ。

 ……我々が魔法などでその世界を認識するためには、魔法で繋がる相手、なんらかの生命がいないといけないんだよね」


「……なるほど、なんとなく分かったんですが、その、虚無世界への移住っていうのは?」


「世界が生命で飽和したり、なんらかの争いで新しい生活の場を求めたりした場合、何も存在しない虚無世界なら誰にも迷惑をかけないし、文句も出ないだろう?

 だから運良く見つけられた虚無世界なんかに移住を行う幻獣達がいるんだよ。

 我々には出来ない方法で虚無世界を観測し、そこに惑星を作り出し、環境を整えた上で移住をする。

 そうなると惑星一つだけの世界が出来上がり、そしてその惑星が滅べばその世界には何もなくなり……我々からは観測できない虚無となる。

 それを世界が滅んだと表現する訳だね」


「はぁー……なるほど。

 つまり今回はその移住が失敗したって感じなんですかねぇ……。

 え? 大惨事じゃないですか?」


「そうだね、大惨事だ。

 そして恐らくだが避難民がやってくることだろう。

 世界が滅んだとなったら、他所の世界に逃げるしかない……こちらの世界に必ずやってくるというものでもないが、それでもいくらかは避難してくると思う。

 あるいは世界の崩壊を察知して召喚を行うことで避難させようとする人々もいるだろう。

 場合によっては、そうした避難民と一緒に世界崩壊の原因がやってきてしまうこともあるし、しばらくは騒がしくなるかもしれないね」


「え、いや、そんな原因までやってきたら大変じゃないですか!?」


 と、ユウカが悲鳴のような声を上げる中、ハクトもブキャナンも余裕のある態度を見せる。


 当然そういった事態への対策をしてあると言わんばかりの態度で、ユウカは少しだけ呆れたような顔になる。


 それならそうと最初から言ってくださいよと、態度で示していると、グリ子さんがユウカに寄り添って体を震わせてから、自らの魔力をユウカに伝える。


 するとユウカにもグリ子さんが行使している魔法……結界魔法のことが理解出来て、グリ子さんの結界がかなりの広範囲を高純度の魔力で守っていることが分かる。


「クッキュン!」


 この世界にある結界は何もグリ子さんだけのものではない。


 様々な人物、幻獣、神器などで張られた結界があり、それらがある限りは大丈夫だよと、グリ子さんが伝えてくる。


 実際問題として召喚幻獣の検疫などはかなり厳格に行われており、幻獣災害が発生した際にも、様々な結界が可能な範囲での対策を行ってくれている。


 それでも結界を突破してくるからこそ災害が起きるのだが、そうした場合も対策班や四聖獣がすぐに動くことで解決をしてきた。


 そうして今の世界、歴史がある訳で……そこに不安を抱き始めるとキリがないことを分かっているハクト達は、そんなことよりもと目の前の茶に集中し、味と香りを楽しむ。


 そうしていると個室の窓が開かれ、小僧天狗が姿を見せてブキャナンに何かを囁く。


 するとブキャナンは茶を飲み干してから頷き、言葉を返す。


「蔵を開けても構いやせん。

 請求は後でするので好きなように……管理と責任はそちらに任せると伝えておいてくださいな」


 それを受けて頷いた小僧天狗はどこかに飛び去って、ハクトは何事かとの視線を向ける。


「どうやら早速避難民が現れたようでございやすねぇ。

 それを受けて行政から支援物資の提供を求められたということで、蔵の解放を許可しやした。

 アタクシの蔵にはこういう時に備えての物資などがございやすから、行政の皆様が上手く役立ててくださることでしょう。

 それと今回は災害の心配はしなくても良いようですねぇ。

 原因らしい原因は観測されず、避難民の皆様は穏やかで可愛らしい方々ばかりの様子……だからこそ気概が足りず滅んでしまったのかもしれませんねぇ」


 そんな言葉を受けてハクトもユウカもグリ子さんも安堵し……そうしてそれぞれ茶を楽しみ、食後の時間をゆったりと過ごすのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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