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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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発想



 また研究所に戻り、様々な説明を受けていき……銃の仕組みについての説明を受けていた時だった。


 ハクトの脚をグリ子さんがツンツンとつつく。


「ん? どうしたんだい?」


 そうハクトが語りかけるとグリ子さんは、爪でちょいちょいと床を叩き爪の先端を折ってから、それを咥え上げる。


 それからグリ子さんは、近くにあった試射用と思われる的へと視線をやり……ゼラチンのような塊で銃弾を受け止める仕組みとなっているソレを見やったハクトは、研究員に声をかける。


「この試射用の的、使ってみてもいいですか?」


「え? あ、はい、どうぞ。

 ……使うって何をするんです??」


 使用許可を出す前に何をするつもりが聞くべきだったのだが、その前に使用許可を出してしまった関係で、何をするかの答えを得られる前にグリ子さんが咥えた爪の破片を発射してしまう。


 クチバシの中で魔力をうねらせ、それによって爪の破片を回転させて……そして魔力の圧力でもって射出、爪の破片が塊を撃ち貫く。


「……なるほど、幻獣に科学的発想を与えるとこうなるんだなぁ」


 と、ハクト、どこまでも呑気な態度で、その足元のグリ子さんは「そうそう」と言いたげな顔で頷いている。


 どうやらこれはグリ子さんなりの警告だったらしい、幻獣にあまり見せすぎてはいけないと、見せるとこういう結果になると示してくれたらしい。


 ハクトは呑気に、ユウカははしゃぎ、そして研究員は驚きと混乱の中でも、貴重なデータを取るチャンスだと駆け出して、周辺の機器をあれこれと弄り始める。


「キュン、クッキュン、キュンキュン」


 それを見てグリ子さんは、まだまだ色々出来るよ? もっと面白いこともあるよ? と、そう声をかけて、ハクトはそれを研究員にそのまま伝える。


「えっと……また試射場に戻りますか?」


「クッキュン」

「手加減をするからその必要はないそうです」


 そんなハクトの翻訳を受けて研究員が頷くと、今度はフェーとフォスがグリ子さんの背によじ登り、そこでポンポン跳ね始める。


 最初は少しだけ跳ねて……跳ねる度に段々と高さを増させていって、まるでお手玉のように軽快に跳ね回り、一体何をしているのだろうか? と、ハクト達が首を傾げる中、跳ね回りながら横回転を始めたフェーとフォスは、回転力を増させていって……そしてまるで自らが弾丸であるかのように突進をし、研究所の壁に軽く体当たりを決める。


 それから反動で跳ねてグリ子さんの背中へと戻ってきたフェー達は、どんなもんだと決め顔を研究員に向けて、研究員は冷や汗を浮かべる。


「……魔法と科学は相反するものだと思っていたのですが、その理解は間違っていたのですか?」


 そして研究員がそう問いかけてきて、ハクトは少しだけ頭を悩ませてから言葉を返す。


「その理解に間違いはないと思います。

 先ほどの現象も科学的かと言われるとそうではありませんし……。

 ただ幻獣に科学という発想を与えると、魔法でこんなことをしでかす可能性があると、そういうことなんだと思います。

 ……たとえばですが、この研究所、幻獣や魔法に対してどれくらいの防護を施していますか?

 それをせずに知恵ある幻獣に襲撃され、研究成果を奪われた場合、幻獣が何をしでかしてくるかは、予想も出来ないのでしょうね」


「……もちろん、防犯のためにある程度の対策はしております。

 結界や護符での防御になりますが……しかし、市街地が襲撃された際でもそういう事態は起き得るのでは?」


「起き得るでしょうが、市街地というのは様々な情報が入り乱れていますからねぇ。

 役に立たない情報の方が多く、科学の知識が全くない場合にはその見極めが難しいのだと思います。

 しかしここはその真逆、役に立つ情報しかない訳ですから……」


「……分かりました、対策を進めます。

 下手をすると幻獣なりの科学、魔法科学みたいな力が生まれてしまうこともありえる訳ですか……」


「科学と言って良いかは分かりませんが、先ほど見せたように幻獣それぞれの能力や身体的特徴を利用し始める可能性は十分にありますね。

 逆に言えば好意的な幻獣に知識を与えれば強力な防衛策になるかもしれませんが、こちらの研究理念とは相容れない話でしょうし、やはり強固なセキュリティを確立した方が良いと思います。

 ……グリ子さんからは何かあるかい?」


 そうハクトが問いかけると、グリ子さんは背中にフェー達を乗せながらちょっとだけ体を傾げて、少し悩む。


 それからグリ子さんは、


「クッキュン! キュン! キュキュキュン!」


 と、声を上げ……ハクトなりにそれを解釈してからの翻訳が始まる。


「えーっと……科学を極めるという視点は悪くないけど、それでも対魔法のことを考えると魔法の専門家がいたほうが良いのでは? とのことです。

 たとえば魔力によって形成される粒子を空気中に漂わせて弾丸に干渉させるということも可能だそうで、その場合はそもそも着弾までに威力が殺されてしまう可能性があるそうです。

 魔力に頼らない発想は良いけども、対魔力のことは考えて……ついでに新たな視点も入れてしまった方が良いみたいです。

 いっそ魔法を使える誰かを雇うのも手でしょう、防衛担当であり知識担当であり、アイデア担当になれるかもしれません。

 それと幻獣にも頼ると良いでしょう、グリ子さんのように助言をしてくれるはずですし」


「……幻獣、幻獣ですか。

 そうですね、幻獣対策だからこそ幻獣の助言をもらうべきなのかもしれませんね。

 ……我々が幻獣を召喚するというのは可能なんでしたっけ?」


「……まぁ、資格試験に合格したら可能ではあります。

 ただ現実的ではないですから、科学に強い召喚者を探してみてはどうでしょうか?」


 とのハクトの助言を受けて研究員は考え込む。

 

 チラチラとハクトやユウカを見てくるが、ハクトもユウカも研究向きとは言えない性格で、二人とも興味を示すことはない。


 更にはブキャナンまでそれは無理だと肩をすくませて……そうして研究員は諦めて他に視線を向けることにし、この日から少しずつ研究方針が変わっていくのだった。



お読みいただきありがとうございました。

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