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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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試射終了



 ユウカの両親は傍目には普通の夫婦だ。


 一般的な中年男性と中年女性……ユウカを知った後で両親を見た人々は、この夫婦からどうしてユウカのような猛者が? と、驚く程だった。


 しかし内面は一般のそれからは乖離していて、まずユウカの言動を自由にさせるという寛容さを有していた。


 次に強烈な優秀さを有していて、数々の研究成果を残しているのだが、しかしその興味は実利からはかけ離れた、個人的興味を優先していた。


 その結果、どうでも良い分野で、全く役に立たなさそうな研究に没頭することもあり……それでも職を失わない程度には優秀な人物だった。


 ハクトから見た印象としては、とても良い両親と言える人物だった。


 ハクトの両親と違って良識的で寛容で、おおらかで幻獣が大好きで。


 ユウカがその才能は開花させたのは、そんな両親の下で育ったのも大きいのだろう。


 道場に通うことを許し、己をどこまでも鍛えることを許し、学院に入ることを許し、中退を許し。


 何ならハクトと一緒に出かけたり出来ているのも両親のおおらかさあってのことだった。


 それがなければどうなっていたか……いくつかの幻獣災害は解決が出来なかったか、解決が遅れるかして、それなりの被害が出てしまっていたことだろう。


 そう思うとユウカの両親にこそ災害鎮圧の功績があるとハクトは思う訳だが、二人ならばそんなものは笑って遠慮し、ユウカに与えてくれと言うに違いない。


 そんな二人のことを思い出しながら、ユウカの暴れっぷりを見守っていると、試射側の弾丸が尽きたのか、射撃が止まり……まだまだ余裕があるらしいユウカが物足りないといった顔を見せてくる。


「……なるほど」


 ハクトがそう呟く。


「何がなるほどなんで?」


 と、ブキャナン。


「いや、現代社会で銃で撃たれることなんてまずないじゃないですか。

 ですが裏社会には入手手段があって、そういう輩に使われるということもあるかもしれない。

 その時のための防御訓練をしたいが、中々それを許してくれる組織は存在しない訳で……たとえば警察や軍に頼んでも断られるのがオチでしょう。

 そんな状況にあってこの試射場は風切君にとって、都合の良い鍛錬場だったと、そういうことなのかなと」


 ハクトがそう返すとブキャナンは「なるほど、なるほど」とそう言ってコクコク頷く。


 そんなハクト達の様子を見てほとんどの研究員達がドン引きする中、女性研究員だけが声をかけてくる。


「えっと……あの、危険とか、そういうことは考えないんですか?」


「まぁ、実戦で撃たれるよりはマシですし、この鍛錬のおかげで銃弾を弾けるのなら利しかないでしょう。

 そちらも良いデータが取れたんじゃないですか?

 ある意味でこれ以上ない実戦データですよ、風切君レベルの使い手は指折りですから、またとない機会のはずです」


「え、えぇ、まぁ、確かに良いデータはいただけましたが……。

 越えるべき壁の高さが思っていた以上に高くて心折れかけている研究員もいるのが難ですね」


「越えられる可能性があるだけマシなのでは?

 それに必ずしも大物を狙う必要はないと言いますか、小型幻獣の掃討とか、あるいは後方からの支援射撃、狙撃、装甲のない弱点を狙っての不意打ちなど、やりようはあるはずです。

 銃に関しては素人なので助言のしようがありませんが、他の研究者と連携するなりしたなら、何か発見があるのでは?

 最近新聞で見た情報になりますが、たとえばレールガンでしたか、アレならば科学の粋といった印象になりますし、効果も期待できそうですね」


 ハクトがそう言うとすぐさま周囲の研究員によるメモが行われ……そして試射が終了となり、銃器の片付けが分解などが始まる中、ユウカがゆうゆうとこちらに歩いてくる。


 そしてつまんでいたらしい何かを持ち上げて見せてきて、それから声をかけてくる。


「うまくつまんだら、変形させないで済むかと思ったんですが、駄目でした。

 綺麗な銃弾の形のままって訳にはいかないんですねぇ」


 と、ユウカ。


「ん? いや、その変形は発射時のものではないかな?

 ……それとアレだ、薬莢は発射時に分離するものだから、どんな停止のさせ方をしたとしても発射前と同じ形状にはならないよ。

 その辺りの説明は恐らく施設のどこかで受けられると思うが……銃弾の後ろ部分のほとんどは、今風切君が持っている弾丸、それを発射させるための機構だと思って良い。

 弾丸を発射させるための薬莢、それらを組み合わせたものが銃弾と、そう理解しておくと分かりやすいかな」


「……え? あ、なるほど。

 発射する前は長細いのに、なんでこんなに潰れてるんだろと思ったら、先のやつだけが飛んできてたんですね。

 ロケットの分離みたいな感じですか?」


「まぁ、その理解で良い。

 銃を見ていると分かるが、発射の度に空の薬莢を射出していただろう? アレがその残骸になるね。

 映画とかでもパラパラと薬莢をばらまいている光景なんかを見れるだろう?」


「なーるほどー。

 ……あれ? でもアニメとかで薬莢と一緒に飛んでる光景があったような?」


「……ああ、うん、まぁそこら辺はアニメだから、うん。

 現実世界と全て一緒という訳ではないのだろう。

 とりあえず銃弾そのものが欲しいのなら、レプリカみたいなものがどこかのお土産店で売っているだろうから、それを買うと良い。

 ……火薬などが装填された状態の銃弾は、管理を誤ると大変なことになるから、持たせる訳にはいかないよ。

 フェーがイタズラしないとも言い切れないからね」


「はーい」


 そんな会話をしてからハクトとユウカは、どこかで休憩しようと歩き始め、ブキャナンや幻獣達もそれに続く。


 そして慌てて案内役の研究員が駆けてきてそれに続き……一団はそのまま試射場から去っていく。


「……弾丸をつかめるんだ……」


 と、女性研究員。


 防ぐだけならまだ魔力の放出や、それによる作用と理解出来るが、飛んでくる弾丸を視認した上で指で掴むなど、完全に常識の範囲外で理解が出来ず……同じ考えに至った研究員のほとんどがそのまましばらくの間、呆然とすることになるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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