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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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鉱石人の部屋



 鉱石人と一体何があったのか?

 

 詳しく聞きたいと思ったハクトだったが、ここであれこれと聞くと周囲の研究者が五月蝿くなりそうなので、ぐっと我慢し……鉱石人の観察に意識を向ける。


 言われた通りの丸頭、透き通ったそれは宝石のようで、その中心では瞳が輝いている。


 その体を構成している物質を具体的に何と定義するのは本当に難しそうだ。


 本当に宝石のようで硬そうで、だというのに関節は滑らかに動いていて、それを見ているだけでも訳が分からない。


 関節や指が動く瞬間、その該当部分の表面に水流にも良くにた流れのような現象が起きていて……恐らくはハクト達が知る、常識で考えるような関節の仕組みをしていないのだろう。


 一時的に液化しているとか、なんらかの変化や現象が起きていて、それが体の動きの滑らかさを担保しているようだ。


 そんな鉱石人はハクト達……と、言うよりグリ子さんを案内したいようで、ハクト達を先導するようにハニカム住居の方へと歩いていく。


 それをグリ子さんに続く形で追いかけて……そしてその鉱石人の部屋なのか、案内用に手近な部屋を選んだのか、一階のある部屋の中へと案内してくれる。


「……意外に広いな」


 足を踏み入れて、ハクトがまず持った感想がそれだった。


 鉱石人は小柄で、それに合わせて部屋を作ると人間には狭い部屋となるはずだが、ハクト達が入っても窮屈に感じることはなく、高さも奥行きも十分で、普通に暮らせる広さとなっている。


 黒を基調としたシックなデザイン、石材を削って作ったらしい座卓に座椅子、棚に恐らくクローゼット。


 奥にはいくつかの扉もあって……寝室などはそちらにあるのだろうか。


「下手なアパートより広くて立派な感じですねぇ」


 と、ユウカ。


 ハクトよりもズカズカと入り込み、勝手に壁などを触りながら確かめている。


 それを見てハクトは流石にそれは……と、冷や汗をかくが、鉱石人は特に気にした様子もなく、目をパカパカと点滅させてグリ子さんとコミュニケーション? を取っている。


 気にしないのであればとハクトもしゃがみこんで座卓などに触れて、どんな材質なのかを調べていく。


 そうやって調べている中でふとハクトが部屋へと視線を巡らせると、いつの間にかクッションに埋もれて休んでいるフェーとフォスの姿が視界に入り込む。


 いつの間に? と、思うと同時に、あんなクッションなんてあったか? という疑問が浮かぶ。


 まるでフェーとフォスのために用意されたような、丸い体に合わせて作られたような、これ以上なくフィットするクッション。


 鉱石人には必要ないはずのそれはハクトの記憶が間違っていなければ、先程まで部屋のどこにも……少なくとも見渡せる範囲にはなかったはずだ。


 うん? と、首を傾げ悩み、ついついその場に腰を下ろしてしまった瞬間、柔らかな感触が尻に伝わる。


 恐る恐る確認してみると、ハクトはいつの間にか座布団に座っている。


 無かった、絶対に無かった、流石にあれば気付いた『人間サイズの座布団』という、この部屋に似つかわしくない物があれば。


 座卓にも座椅子にも全く合わないサイズで、ハクトは大体のことを察しつつも冷や汗が止まらなくなる。


 自動で作られたのか、それとも鉱石人が遠隔操作でもしたのか。


 どちらにせよ凄まじく、自動の場合は更にとんでもない。


 一体どういう基準でこの形状にしたのか……なんらかのカメラやセンサーがあるのか、それともハクト達の思考を読んでいるのか?


 あるいはハクトの常識では考えつかないような摩訶不思議な何かがあるのか?


 幻獣達にはクッション、ハクトには座布団というのが、また混乱を招く。


 どちらにもクッション、あるいは座布団なら分かるのだが……本人達が慣れたもの、あるいは望んでいるものを読み取るような何かがあるのかもしれない。


 果たしてこれに研究員達は気付いているのだろうか?


 いや、部屋にはそこまで近付けていないだろうから、まだ気付けてはいないのだろう。


 これを鉱石と呼んで良いものか……こちらの思念を読んで変形する自立粘土とでも呼んだ方が良い気がする。

 

 もしこれが外に流出したら……。


 と、ハクトがそこまで考えた所で、グリ子さんがやってきてフルフルと首を左右に振ってから、いつの間にか咥えていたボールを部屋の外に向けて転がす。


 すると順調に転がっていたボールは、入口辺りでドロっと溶けて、床に吸収されると言うか一体化し、そのままなくなってしまう。


「……へ、部屋の一部なのか。そうするとこれは部屋の機能なのか」


 ハクトの座布団、幻獣達のクッション、グリ子さんのボール。


 それらを個別のものと見るのではなく、部屋の一部と見るべきと、グリ子さんはそう伝えてきているようだ。


 部屋の機能と言っても良い、部屋の中に入った生物の望む物を作り出す部屋、快適な暮らしを絶対的に約束してくれる空間。


 ……先進的どころではない、人類が考えたこともないような発想としか言えず、ハクトはただただ唖然とする。


 が、グリ子さんは大して驚いてはおらず、もしかしたら幻獣世界では当たり前のことなのかもしれない。


 そうしてハクトが戦慄する中、ユウカは勝手に台所のような空間をあさり始め、そうして冷蔵庫に見えなくもない、恐らくなんらかの倉庫と思われる場の戸を開ける。


「あ、コーヒーとアイスティーありますよ。

 幻獣用のフルーツジュースもあるや、これ貰って良いんですかね?」


 それを聞いた瞬間ハクトは察する、その飲料すらも部屋が用意してくれたものなのだろうと。


 望む飲料を、もしかしたら食料までも作り出してしまうのかもしれない。


 部屋の一部であるそれらを口にしてしまっても平気なのかとハクトが青ざめていると、グリ子さんは静かに頷き、大丈夫だよと伝えてくる。


「えーっと、コーヒーはチェーンカフェのやつですね、アイスティーはCMでよく見るやつ。

 フルーツジュースも同じですねぇ」


 それに続くようにユウカがそう言って、どうやらどれもこれもが有名メーカー品であるらしい。


 ……どこからか取り寄せているのか、作り出しているのか、部屋の一部が変化しているのか。


 考えても出ない答えをあれこれと考えたハクトは……少しの間の後に諦めて、


「コーヒーがいいかな」


 と、そんな声を、どうにか震わせないように気をつけながら振り絞るのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
幻獣という摩訶不思議な存在がいる時点で、自動的に色々作ったり出してくれる部屋があってもおかしくはない Don't Think.Feel 『まぁ、そんな事もあるよね』
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