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転生女子会の黒一点  作者: ケー/恵陽
一学年後期
33/33

32 興味津々専門教師と満面笑顔の我らが友よ

 目の前に爺先生と爺先生Ⅱとおっさんがいる。三人ともとても良い笑顔で、私に与えられた花壇を調べている。実際にはそこで埋まっていて、成長したピーピーマメっぽい植物を。

 懐かしい。……なんてほのぼのした気持ちでいたいのだけど、三人は何だか真剣に話し合っている。ちなみにカールは他の講義に補助で駆り出されていて不在だ。

 爺先生Ⅱは植物学の先生だろうか。爺先生はどっちかといと武の部門だ。そしておっさんは……多分用務員の人だ。

「これマメ科なのは確かじゃが、あんまり見たことないのう」

「絶対古代種ですよ、古代種! 見たことないですもん」

「いやいやいや、先生達小さいとき道端で絶対見てましたって。まあ、最近は確かに見てませんけど」

 爺先生、爺先生Ⅱ、おっさんの言である。

 ピーピーマメの名前はなんだろう、と思いながら手に取る。なんとなく口に含んで吹くと軽快に音が鳴った。やっぱりピーピーマメだ。

「あ、なんかそれ覚えあるなあ」

 おっさんはどうも私と同じように遊んだ覚えがあるらしい。

「お前さん、見たことない植物を無闇に口に含むでない。毒はないと思うが危ないものだったら、どうする?」

 爺先生Ⅱに怒られた。逆に爺先生は私と同じように口に含んでピーピー鳴らしている。

「せんせーたち自由すぎんか。今日はフィッシャーがいないんだから、あんま自由にすんなよ。生徒が困るだろ」

 おっさんの言い分はわかるが、どうすればいいか呆れている。さしあたっては自己紹介が欲しいところだ。

「ホルトハウスよ、もう一度魔力流してみんか」

 結局三人でピーピー鳴らしながら、要望してくる。おとなしく靴の魔方陣に魔力を流すと、足下からひょろっと伸びてきた。双葉がくるくる回りながら太陽のような黄色い花を咲かせる。記憶にあるところのタンポポに近い。

 摘もうと腰をかがめるようとすると、待ったがかかる。

「待て、無闇に手を触れるでない」

 後ろに退くと、爺先生Ⅱが四方八方から観察する。爺先生とおっさんも気になるようだ。おっさんは首をかしげているが。

「これ、見たことないですねえ」

「……そうか? 小さい頃に見たことある気がするな。そこらに生えていたぞ」

 爺先生二人は見た、生えてた、と頷いている。

「小さくてかわいい花ですね。これは何か効能があるんですか?」

 爺さん二人は揃って首を横に振る。

「ただの花じゃ」

「ただの黄色い花じゃな」

「へえ。でも見たことないってことは今はない花なんですね」

 確かに見たことはない。故郷でも見てないから他の外来種に負けたのか、環境変化か何かで植生が変わったんだろうか。 

「効能は特にないが、もう絶滅したと思われている花じゃ。植え替えて種を取ることにしよう」

 鉢に植え替えて研究室に持って帰るらしい。

 その後も何度か魔力を流してくれと頼まれたが、特筆すべき植物はなさそうだった。ならば今度こそもらった種を植えようか考えていると、校舎の方から人影が飛び込んできた。


「イチゴくん発見!」

 唐突に割り込んでくる元気な声。淑女としてどうかとは思うが、今は講義ではないからよいだろう。

「ユッテ?」

「あ、……教官方もいらっしゃったのですね。えっと、お邪魔してもよいですか?」

 どうも私の姿だけを目がけてやってきたようだ。嬉しいけども、周囲の確認は必要だぞ。幸いにも爺先生たちは朗らかに許可をくれた。寧ろ生温かい視線を向けてこないでほしい。

「どうかした?」

 先生たちの視線にもじもじしながらユッテが言いにくそうに口を開く。

「その、魔法の実験で畑作るって聞いたから……」

「え、うん。そうだけど?」

「あ、あのね、ちょっと育ててもらいたいものがあって……。駄目かなあ?」

 私たちは揃って背後の先生方に視線を移す。爺先生Ⅱがユッテに首をかしげる。あわあわしながら、ユッテは説明を始める。

「あ、あの、この豆なんですけど。その、わたしの領地ではそこらへんの道端に植わっているものなんですが、色々と使えるので育ててもらえたら、と思いまして……」

 言いつつ服の色々なところを叩き出す。ポケットのどこかに見せられるものがあるようだ。それにしても色々使える植物とはなんだろう。ユッテのことだから料理関連だと思うが。

「……あった」

 結局ポケットにはなかったようで、ポーチの奥から包みを取り出す。

「はい、イチゴ君」

 手渡された包みの中には大豆があった。そう、大豆様だ。

「おおお! え、えええ! これが領内にあるの? 羨ましい!」

 意識せず全力で拳を掲げた。

「夏はビールと冬はきなこ餅とか豆腐も出来るし、醤油も味噌も出来るじゃん! いや味噌っぽいのは確かなんかあったけど、いやその前に味だ、味! ……っ! これは紛れもなく大豆様だ!」

「でっしょでしょ!」

 ユッテの顔がとてもきらめく。

「これがあれば普通に枝豆を塩ゆでして食べるのもいいんだけど、大豆まで育ててきな粉に出来るのよ! 味噌とか醤油の作り方はちょっとわかんないけど、誰かが作ってくれるかもしれないと思ったら作ってもらいたくなっちゃって……。うちの領内にあるとはいえ、専属で作ってるわけじゃなくて、ただ私が個人的に生えてるものを摘んでる状態なのよ」

 途中から冷静な口調になったが、私もユッテもテンションが上がってしまって、周りにいる先生たちの存在がすっかり抜けていた。

「ふむ。普通に豆じゃな。うまいの」

 爺先生Ⅱがぽりぽりと大豆をかじる。その後ろにいる爺先生とおっさんが手の平を差し出している。二人の手に渋々と大豆をのせた爺先生Ⅱ。

「有用性があるということじゃな。話を聞こうかの」

 今度は爺先生たちがきらめく笑顔を浮かべだした。


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