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機工少女チルカと時魔導士ハルト~大切な人の死を乗り越えるための、小さな冒険~【チートヒーラー外伝】  作者: 黒倉ばくら


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第46話 時魔導士、あげちゃう

……自分の中から何かがごっそりと引きはがされていくような感覚と共に、ほのかな温かさを手のひらに感じ始める。

目を開くと、僕の手のひらには夜の闇をまとった光の球が浮かんでいた。

(先輩……あなたが育ててくれた力、勝手に譲っちゃってすいません。でもきっと、許してくれますよね?)

僕が念じると、それはエセリアルクイーンのもとへと飛んでいき、彼女の胸へと吸い込まれていく。

「何をした、人間。この力は……?」

「マスター、まさか……!」

「ごめん。僕、もうチルカのこと治せないや」

「あ、あなたという人は……!」

「一体、なにが起こったんだい……?」

「エセリアルクイーン、その魔法は時間を操る力です。それを使って、精霊たちを守ってあげてください」

彼女は黙って自分の中にある力を確かめるようなそぶりを見せた後、静かに言った。

「真実を語っているようだな。……本当に、度し難い人間だ……」

「は、ハルト……まさかキミは、自分の力をあげちゃったの!?」

「あげちゃった。へへ……」

「本当にいいのか?わらわであれば、この力を使ってお前たち人間の歴史の全てを消し去ってやることもできるのだぞ」

「そんなことはしないって信じてますよ。……信頼を裏切られる悲しみは、誰よりもあなたが一番知ってますよね」

「……………。人間の勇者よ、感謝する。この力、精霊と人間の未来のために使うと誓おう」

「それじゃあ……!」

エセリアルクイーンは静かに頷くと、目を閉じて祈りの言葉をささやいた。

『夢の終わりを告げる光と共に、ここに希望への祈りを残す。とこしえの眠りに沈む我が半身よ……お前を朝日が照らすときが、ついに訪れたのだ』

彼女が目を開き、組んでいた手を開くと、彼女の両手のひらの上には、純白に輝く魔石が浮かんでいた。

「受け取れ、人間。お前にはその資格がある」

「ありがとうございます!……チルカ、グラシエラ、やったよ!これでムーンスターを起こせる!」

「ハルト……」

「マスター……」

「あ、あれ……なんで二人とも憐れむような目で僕を見てるの?」

「ごめん……ボクのせいで、キミの大切な魔法がなくなってしまった……」

「なくなってなんかないよ。エセリアルクイーンが、精霊を守るために使ってくれるって言ってたじゃんか」

「マスターは本当に愚かです。向こう見ずです。無鉄砲です」

「愚かじゃないし!ちゃんと考えてるよ、チルカの修理はダンカンさんがいるから大丈夫だって!」

「そうではありません……あなたは、他人の心配しかできないのですか?」

「うん。僕の心配はチルカがしてくれるからね」

「マスター……」

「お前たち。悪いがもう、別れの時だ。わらわは……疲れた。しばし眠りに就く……」

向き直ると、彼女の姿はすでに消えていた。そして世界がゆらぎ、消え始める。

「夢の世界が崩れていく……」

「ムーンスターが、目覚めるのですね」

「ハルト、本当にありがとう……初めて会ったボクの為に、こんなにも力を尽くしてくれて」

「ううん。こちらこそ、おかげで楽しい冒険ができたよ。……それに、グラシエラとの絆は、先輩が繋いでくれたものだから」

「ボクだけじゃなくて、エイアの為でもあったってことかい?……少し、妬けてしまうな」

薄れていく視界に、グラシエラの美しい顔がいっぱいに広がる。

「ボクは、キミに会うために生まれてきたんだ。……前世なんて関係なく、ね。向こうの世界でまた会えたら、キミにそれをわからせてあげる……」

冷たく甘い感触を唇に感じた。それを見たチルカが声にならない悲鳴を上げる。

───光に満ちていたエセリアルクイーンの領域は、安らかな闇に包まれた。

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