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機工少女チルカと時魔導士ハルト~大切な人の死を乗り越えるための、小さな冒険~【チートヒーラー外伝】  作者: 黒倉ばくら


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第40話 プロジェクト・クリティカルモーメント

「今更気付いたんですか?降参します?」

動揺を押し隠し、ふてぶてしく笑ってみせる。……先輩がよく、そうしていたように。

そうだ……先輩になりきるんだ。

悲しみも、苦しみも、全て押し隠して笑っていた、あの人の強さを借りよう。

「───抜かせェッ!」

怒りに体を震わせながら、オネイロックスが爪を振り下ろしてくる。

時を加速させ、尻尾側に回って彼女をからかった。

「どこ狙ってるんですかー?僕たちはこっちですよー?」

「ぐぬぬぬ……ギュラアアアアアアアッ!!!」

「お、おばあちゃんが怖いよ……」

震えだしそうな足を踏ん張ってこらえながら、僕は笑う。

「挑発に乗ってくれるなら、楽勝だね」

(戦況は優勢ですが……納得いきません。正面からの戦闘を提案します)

(却下します。確かに正々堂々が一番だけどさ……あいつには絶対勝ちたいから)

(マスター……)

オネイロックスは翼を伏せて低く構えると、漂う闇を取り込み始めた。

(……っ!マスター、オネイロックスの魔力が急速に増大しています!)

「……この手だけは使いとうなかったが……。ここまでコケにされては引き下がれん」

「……っ!止ま」「おうおう、止めるがよい。戻すも進めるも好きにせい」

「え……?」

「じゃがの……幾千の策を弄し、幾万の守りを重ねたとて、この攻撃は防げんぞ。

わちきが狙うは虫三匹ではない……この夢そのものじゃからな」

「ま、待つんだおばあちゃん!そんなことをしたら、ムーンスターが……!」

「なに、安心せい。夢が壊れたとて、あやつが死ぬことはない。千年か、二千年かは分らぬが……新たな夢を見るまでの束の間、深き眠りに就くだけのことよ」

「せ、千年......!?そんなの待っていられないよ……!」

「と、とりあえず……止まれっ!」

オネイロックスの動きが止まる。……しかし彼女の周りには、既に膨大な量の魔力が集まっていた。近寄る事さえ、簡単ではないだろう。

「ど……どうしよう、ハルト?」

「こうなったら一か八か、魔力を使い切って総攻撃するしか……」

「……きっと、それでは通じないと思う。今までの戦いで、みんな魔力を消耗してしまっているし……おばあちゃんは本気だ。爪の間の肉をえぐったくらいでは、もう止まってくれないよ」

「───もしかして、殺すつもりで行かなきゃダメ、ってこと?」

グラシエラは黙り込んだまま、沈痛な面持ちで頷く。

「どうしようか……?こうして時間を止めてる間にも、僕の魔力は減っていってるし……」

策が尽き、僕とグラシエラの間を重たい沈黙が包む。

「……マスター、グラシエラ、提案があります」

と、僕たちの口が動いて、今まで静かだったチルカが喋り始めた。

「なんだい、チルカ?」

「お二人の議論は、間違った方向に進んでいる訳ではありません。オネイロックスが防御不能の攻撃を準備している以上、持久戦は不可能です。残された勝利への道筋は、時間停止中に火力を集中させることによって、戦闘の早期決着を図る以外にありません」

(うん。だけど、そうするには魔力が足りそうにないよ……)

「ねい。残存魔力量についての懸念は不要です」

「えっ、魔力?……魔力を回復させる方法があるってことかい?」

「あい」

「一体、どうやって?」

「心、です」

(こ、心?)

「あい。私とマスターに宿る、熱い正義の魂です」

(……根性論ってこと?)

「詳しく、教えてくれるかい?」

グラシエラがそう言った瞬間、僕はチルカのソウルユニットが楽しげに震えるのを感じた。

「あいあい。私の計画をお聞きください。名付けて、『プロジェクト・クリティカルモーメント』です」


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