2024/10/22(火曜日)
LINEの音で目を覚ました。
伊都からのLINEだった。
わたしは驚きつつも高速で返信し、早朝から申し訳ないなと思いつつも電話を掛ける。伊都はすぐに応じた。
『ほどく』
「伊都! ……あのね。あのね、わたしね……!」
伝えたい言葉と昂る感情が錯雑と入り乱れて、言語化能力に乏しい子どものようになってしまう。伊都が電話の向こうで笑った。
『元気そうでよかった』
「伊都のほうこそ元気してた? 寂しくなかった?」
『元気だけど寂しかったよ。まさかほどくに無視される日が来るとは思ってなかったからさ』
「ごめん……ほんとにごめんね。そのいろいろ事情があってね……」
『ほどく』
名前を呼ばれただけでうるっとする。
会話そっちのけで「なぁに伊都?」と声を発すれば、ちょっと鼻声になっていた。ただ名前を呼び合うだけ。その時間がたまらなく愛しかった。
『もう少しで完成すると思うんだ。だからもう少しだけ待ってて』
「完成するってなにが?」
問い返した直後、ぐわんと視界が揺らいだ。
その後に及んでわたしはようやく理解した。これは夢なんだって。
自覚するなり、意識が徐々に夢の世界から遠のいていく。
――いやだ。この世界にいたい。もっと伊都と話をしていたい。
そのわがままを夢の世界の神様が聞き入れることはなく、風船に穴が空いたみたいに脱力したわたしは、こてんとベッドに横たわってしまう。
意識が途絶える寸前、伊都の声が聞こえた気がした。
『隣で寄り添えなくてごめんね』って。
※
ピピっと、耳元で間歇に鳴るスマホのアラームの音で目を覚ました。その音がやけに懐かしく感じるのは、ここ最近はアラームよりも早くに届く伊都のLINEで目覚めていたからだろう。
布団から手だけを伸ばしてアラームを止める。そのままスマホを布団に引っ張り込み、寝転がったままLINEを立ち上げる。トークルームの表記の順序は昨日と変わらず、伊都のアイコンはどこを探しても見当たらなかった。
「……謝るのはわたしのほうだよ」
伊都は、今もどこかでひっそりと息をしている。部屋で曲をつくっているのかもしれないし、実はわたしのすぐうしろにいてぎゅ~ってしているのかもしれない。
いる、ということはわかっていても、姿は見えず言葉も交わせないときたら、それはもういないのとおんなじだな、と寂しさに包まれながら思った。
念のため「おはよ伊都」とつぶやいておいた。
わかりきっているけど、反応はなかった。




