2024/10/16(水曜日)
ひさびさに夜通し作業した。カーテンを開くと、寝惚けた太陽が弱々しい光で街に夜明けを告げていた。
大きなあくびをひとつ。LINEを立ち上げ、メッセージを送る。
【伊都】おはよう、ほどく
昨日送ったメッセージには未だ既読がついていない。今日もほどくが家を出る七時二十分になっても返信がなかったら電話することにしよう。安否確認だけはしたい。
すぐに作業に戻ろうかと思ったけど、ここらで休憩もかねて朝食を摂ることにする。奇妙なくらいに空腹感がないのは、創作に没頭しすぎて胃が機能することを忘れているからだろう。
階段を降りると、珍しくリビングから明かりが漏れ出ていた。
リビングでは、ワイシャツとタイトパンツを着たお母さんがコーヒーを啜りつつタブレットをじっと眺めていた。タブレットで新聞を読むのがお母さんの日課だ。
「おはよう」
あいさつするも、お母さんの視線はタブレットに結ばれたままだ。遅れてあいさつを返してくることもなかった。
堂々と無視されたことに少しだけ心を痛めつつも、自分でトーストを焼き、いちごジャムを塗ってかじる。多忙期なのか、お弁当は今日も用意されていなかった。
あたしが斜向かいで食事しているのに、お母さんは一瞥すらしない。
ご馳走様でしたとつぶやき、食器を洗っていても無反応のままで、あたしはますます寂しくなってくる。
「仕事、がんばってね」
連日不登校の自分のことを棚に上げて、柄にもなく激励を送ってみる。
部屋を出るその瞬間まで、母親の瞳に娘の姿が映ることはなかった。




