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SNOW WHITE PRELUDE -白雪姫の輪舞-  作者: 二ノ宮純
最終章「少女たちのPRELUDE」
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最終章 「少女たちのPRELUDE」最終話

「いや〜、人多いね」


2階の手すりに寄りかかりながら、

ひなたが感嘆したように言った。


「久しぶりのSNOW WHITEだからね」


二乃がロビーを見下ろし、

ふとある人物を見つけて目を輝かせた。


「あ、理央〜!!」


大きく手を振り、元気いっぱいにアピールする。


「げっ、ひなた!!」


理央が思わず顔をしかめると、

隣にいた怜人が軽くその背中を押した。


「いってこい」


「仕方ないな……」


理央はため息をつきながらも、照れくさそうにひなたのいる場所へと向かっていった。


それとすれ違うように、

李梨奈が怜人の前に静かに現れた。


「怜人……」


「リリィ……」


急に李梨奈がくすっと笑い出す。


「その呼び方、いい加減やめたら?小学生の時の仇名よ?」


「うるせー。それ以降のお前を俺知らないんだよ」


怜人はしっかり李梨奈に向き直り、

真剣な眼差しを向けた。


「今後、お前どうするんだ?」


「まだ決めてないけど、翼と同じ舞台に立つ。それが、今の私の夢」


「そうか……夢見つけたんだな」


「その前に、ちゃんと住む場所探さないと。

いつまでもお婆ちゃんの家にいるわけにもいかないし……」


怜人は少し考え、短く息を吐いた。


「なら、うち来るか?ちょうどバイトを1人増やそうと思っててな」


李梨奈は少し考え……そして、柔らかく微笑んだ。


「考えといてあげる」


3分前のアラームが、静かに鳴り響いた。


「いきましょ」


李梨奈が歩き出す。


「あ。おい待て」


「?」


「翼からの伝言伝え忘れてた。開演前に伝えてくれって」


怜人は優しい眼差しで、ゆっくりと言った。






『ありがとう、お姉ちゃん。舞台で待ってる』






李梨奈は、ただ小さく微笑んだ。


その瞳の奥に、静かな喜びと、

ほんの少しの涙が光っていた。





舞台楽屋には、本番前の独特の緊張が重く、

しかし熱く漂っていた。


空気が張りつめ、誰の息遣いも少し大きくなっている。


アンサンブルも、アンダーも、裏方スタッフも、

誰もが言葉少なに最終確認に追われていた。


無論、エーデルの5人も例外ではなかった。


哪吒は控え室の隅で目を閉じ、

静かに精神統一を図っている。


砂月は鏡の前で衣装の裾を何度も整え、

細部まで完璧を期していた。


八重は台本を手に、セリフを何度も唇で確認し、

微かな緊張を抑え込もうとしている。


二乃は後輩たちの肩を軽く叩きながら、

明るい声で緊張をほぐしていた。


「大丈夫大丈夫!みんな今までやってきたこと、全部出せば勝てるよ!」


そして、翼はヘアメイクの椅子に座り、

鏡を見つめていた。


その顔に浮かぶ緊張の色は、隠しようもなかった。


「大丈夫?」


ヘアメイクを担当した光葉が、

鏡越しに優しく尋ねてきた。


「……やばい、緊張で吐きそう」


翼が正直に呟くと、

光葉はくすっと笑って翼の肩を軽く叩いた。


「しっかりしなさいよ、主人公」


ヘアメイクが終わり、

翼はゆっくりと立ち上がった。


白を基調とした本番衣装が、

照明に照らされて美しく輝いている。


「みなさん、時間です」


控え室の扉が開き、

瑠々が緊張した面持ちで入ってきた。


SNOW WHITEの開演——

ついに、その瞬間が訪れようとしていた。


舞台裏では、それぞれが衣装を身に纏い、

最後の確認をしていた。


誰もが無言で、しかし熱い想いを胸に秘めている。


「……やっとここまで来たね」


二乃が小さく呟いた。


「本当に……長かったけど、この日を迎えられてよかったですわ」


砂月が静かに微笑む。


「でも、まだ始まってもない」


八重が穏やかに言う。


「エンドレスワルツは、私たちの新たなスタート」


哪吒が静かに、しかし力強く締めくくった。


SNOW WHITEに関わっている全員の手が、

ゆっくりと中央に重ねられた。


視線が交わり、誰もが希望に溢れた、

輝く瞳をしていた。


「みんなで越えよう——“過ぎ去りし流星たち”を!」


その言葉は、楽屋に静かに、

しかし確かに響き渡った。


翼は皆の手の温もりを感じながら、

胸の奥で静かに誓った。


私はここにいる。

自分の名前を、ちゃんと胸に抱いて。


幕が上がるまでの残り時間は、

もうほとんど残されていなかった。


大帝都劇場のステージは、 今まさに、

新しい伝説の幕を開けようとしていた。



照明が落ち、観客席のざわめきが遠くに聞こえる中、 エーデルたちが順番にステージへ向かう。



哪吒が最初に、静かに一歩を踏み出した。


(舞台は常に1人……実力だけが全てだと

思ってた。けど、違った。みんなで作るから

舞台って楽しめるんだ。当たり前のことだけ

ど、気づかせてくれて感謝します、妹蘭さん)


「フラウ・ヴァッサー(水の君) 張哪吒 入ります!」


凛とした声が、舞台袖に響く。


哪吒の背中はまっすぐで、

水のように静かでありながら、

確かな強さを感じさせた。



次に砂月が、優雅に裾を翻して進む。


(心の底から楽しむという気持ち……いつ

から無くしてたんでしょう。だけど、今の

私は心の底から笑えてる気がします。

フィーアさん、今の私は笑えてますか?)


「フラウ・ボーデン(地の君) 香取砂月 入ります!」


その声は穏やかで、しかし芯があった。

かつての仮面のような笑顔ではなく、

本物の柔らかな微笑みが、唇に浮かんでいた。



続いて八重が、静かな決意を胸に歩み出す。


(一歩踏み出すという勇気が私には無

かった……。舞台は失敗したら終わり。失敗

が怖かったけど、挑戦しなかったら何も変

わらない。失敗を恐れない……そんな気

持ちの余裕を教えてくださりありがとう

ございます、凛さん。)


「フラウ・フォイヤー(火の君) 八重・バートン 入ります!」


王子様と称される凛々しい横顔に、

今は確かな光が宿っていた。




二乃が、軽やかな足取りで後に続く。


(責任やみんなの期待に応えられるか

いつも不安だった。けど、演じてる時ぐらい

考えなくていいんだ。舞台の上だと私は自

由になれる!ひなたさん、私、風になってき

ます!)


「フラウ・ヴィンド(風の君) 鎌田二乃 入ります!」


その声は明るく、風のように軽やかだった。

ポニーテールが跳ね、笑顔が舞台袖の暗闇を照らす。



そして——最後に、翼がゆっくりと前へ出た。


(今だからわかる……みんながいたから私は

自分の過去と向き合うことが出来た。あり

がとう二乃、砂月さん、八重さん、哪吒さ

ん。いつも私の側にいてくれてありがとう

兄さん。そして……私を舞台に導いてくれて

ありがとう、お姉ちゃん!)


「フラウ・ヒンメル(空の君) 飛彩翼 入ります!」


その声は小さく、しかし確かに震えていた。


震えながらも、強く、熱く——

自分の名前を、胸に刻むように。


5人が舞台袖に並び、互いの顔を見合わせた。


翼が、皆に向かって静かに、けれど力強く言った。


「行こう……あの舞台へ。私たちの舞台を創りに!」


照明が一瞬だけ落ち、

そして——


大帝都劇場の幕が、静かに上がり始めた。







PRELUDEが終わり、物語が——始まる。





最終章 「少女たちのPRELUDE」 完

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