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SNOW WHITE PRELUDE -白雪姫の輪舞-  作者: 二ノ宮純
第11章 「世界が動き出し、輪舞がはじまる」
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第11章 「世界が動き出し、輪舞がはじまる」第5話

夕方のカフェテリアは、柔らかな照明と甘い紅茶の香りに包まれていた。


「いや〜寒くなってきたね」


二乃が少し腕をさすりながら言った。


「12月ですから当たり前ですわ」


砂月が優雅に紅茶を啜りながら答えた。


12月……それはSNOW WHITEを上演するエンドレスワルツまでもう時間がないということを意味していた。


この時期になると、学院内はエンドレスワルツに向けて日々準備する生徒たちで賑わう。


廊下では大道具の運搬、教室では衣装の最終調整、レッスン室では最後の微調整、

誰もが自分の役割を果たそうと、熱を帯びていた。


「にしても……」


翼がちらっと、カフェテリアに座る女子生徒たちを見回した。


女子生徒たちがそれぞれ思い思いの時間を過ごしていたが……。


やけにみんな距離感が近いように感じた。


それは友達や親友以上の関係のような……。


「クリスマスも近いからね、カップル生まれるのも不思議じゃないよ」


二乃が笑いながら言う。


「私だって付き合ってはないけど、1年の頃先輩から言い寄られたことあったし」


「えー!!」


翼は目を丸くして驚いた。


「なんですか、今更。百合々咲は女学校。よくあることですわ」


砂月が優雅に微笑みながら言った。


「砂月もモテてたもんな」


「あなた程ではありませんわ、百合々咲の王子様」


八重は百合々咲の中でも容姿端麗で、翼でさえ「かっこいい」と思うほどだった。 女子校でモテないわけがない。


「哪吒も言い寄られたことあったよね」


「1年の頃にな」


百合々咲には多いと聞いていたが、

こんなにいるとは翼本人は知らなかった。


恋愛観は人それぞれだからとやかく言わないが、

翼にとってはまだ恋愛自体が未知なものであった。


「寮住みの子同士でヤッたことあるって聞いたことあるしね。本当か嘘か知らないけど」


翼の脳内処理が限界を迎えた。


翼の顔は耳の先まで茹で蛸のように真っ赤になった。


「もうその話やめてーーーー!!!!」


翼は両手で顔を覆い、テーブルに突っ伏した。


周囲からくすくすと笑い声が漏れる中、

二乃がからかうように翼の背中を軽く叩いた。


「翼ってば、意外と純情なんだね〜」


砂月が優雅に紅茶をひと口飲み、微笑んだ。


「可愛いですわよ、そういうところ」


八重は静かに微笑み、

哪吒は無表情のまま紅茶を飲んでいる。


カフェテリアの柔らかな光が、

五人のエーデルを優しく照らしていた。


SNOW WHITEの本番が近づく中、彼女たちの日常は、まだ少しだけ、穏やかで甘い時間が残されていた。





大帝都劇場の舞台裏は、緊張と興奮に満ちていた。


本格的なリハーサルが始まろうとしていた。


セッティングには劇場を運営する大帝都歌劇団も協力してくれるが、あくまで協力。


基本的には舞台創造科の生徒たちで動かなければならない。


照明の瑠々は劇場スタッフから機材の使い方の指導を受け、 慎重にスポットライトの角度を調整している。


光葉は他の舞台創造科の仲間と共に、

セッティングされたセットの位置や破損がないかをひとつひとつ確認していた。


侑樹はインカム片手に各部署に指示を出しながら、劇場を走り回っている。


華は控え室でキャストたちに衣装を提供していた。


憧れのSNOW WHITEの衣装。


衣装合わせの時に1度着たが、今回は本番仕様だった。


「あれ?前のと色が違うような……」


翼は受け取った衣装の彩色が違うことに気づいた。


衣装合わせの時に着た時、そして過ぎ去りし流星達の公演の時のスカートの色は青だったはず……。


しかし、受け取ったスカートの色は白。


「白雪姫イメージを全面に出したんです。何より、今回の第1部は白雪姫はまだ何も知らない純粋無垢な少女ですからね」


「ありがとう」


翼が衣装に着替えようとカーテンに仕切られた更衣室に入ろうとすると、


「あ、飛彩先輩。下着はとってくださいね」


「ななななんで!!??」


「白雪姫の時代、下着なんてありませんから」


衝撃の事実だった。


その時、華の後から手刀が飛んできた。


侑樹の手刀が華の頭にヒット。


「いてっ」


「おバカ、変な事言ってそこにリアリティ追求しなくていいの」


侑樹がため息をつきながら華を軽く叱る。


翼は耳まで真っ赤になりながら、

更衣室のカーテンを慌てて閉めた。


控え室に、仲間たちのくすくすという笑い声が響く。


翼はカーテンの向こうで、深く息を吸い込んだ。


本番の衣装。


白いスカートが、純粋無垢な白雪姫を象徴している。


その布地に触れると、

自分がこれから立つ舞台の重さが、

改めて胸にのしかかってきた。


更衣室の外では、華が侑樹に叱られながらも、

にこにこしながら次の衣装の準備を続けている。


「翼先輩、サイズは合ってますか?」


「う、うん……大丈夫……」


翼の声はまだ少し震えていた。


リハーサルは、もうすぐ本格的に始まる。


大帝都劇場の舞台に、

彼女たちの夢と努力が、

これから1つの世界として形作られようとしていた。





これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。 そして……






夢を叶える物語である。


第5話 完

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