第11章 「世界が動き出し、輪舞がはじまる」第3話
百合々咲音楽学院のカフェテラスは、午後の柔らかな木漏れ日に包まれていた。
木々の隙間から差し込む光が、テーブルクロスを優しく斑に染め、風がそよそよと葉を揺らす音が、
心地よいBGMのように響いている。
翼はサンドイッチをひと口かじりながら、
ふと胸の奥で呟いた。
なんだか、久しぶりな気がする。
「う〜ん、美味しい」
「翼〜!」
明るい声がテラスに響いた。
顔を上げると、トレイを両手で持った赤尾侑樹が立っていた。
侑樹は翼の向かいに腰を下ろし、にこっと笑った。
「どうよ、練習久しぶりにしてみて」
翼は小さく息を吐きながら答えた。
「やっぱブランクやばいね。あとみんなのレベルやばかったし」
エーデルがいない数日間で、
キャストもアンダーも裏方も、
全員が一段も二段もレベルを上げていた。
動きの精度、感情の乗せ方、タイミングの一致
どれもが、翼が想像していた以上に洗練されていた。
「みんな頑張ってるからね、うかうかしてたらほんとに危ないよ?」
侑樹が笑いながら言う。
すると——
「飛彩先輩!!」
華が息を切らして走ってきた。
「なになに??」
いきなりすぎてびっくりした翼に、
華は目をキラキラさせながら言った。
「先輩、体のサイズ測らせてください!!」
「え?」
突然のことでよく分からなかった。
侑樹がくすっと笑って説明する。
「華は衣装担当なの。翼のサイズに合わせて衣装仕立て直さなきゃだからね」
「そういうことです!いきましょう!」
華に腕を引かれ、翼は慌てて立ち上がった。
カフェテラスの木漏れ日が、
3人の影を優しく地面に落としていく。
翼は侑樹に軽く手を振りながら、
舞台創造科の建物へと連れていかれた。
久しぶりの学院の空気は、 どこか新鮮で、
そして少しだけ、温かかった。
舞台創造科の教室は、翼たち俳優育成科の生徒たちにとっては少し新鮮な空間だった。
普段はほとんど足を踏み入れない場所。
布や型紙、ミシンや仮縫いの人形が並ぶ部屋は、
どこか温かく、創造的な空気に満ちていた。
教室の中央では、二乃と砂月がすでに採寸をしていた。
「っっっっ!!!!???」
翼の顔が、耳の先まで真っ赤に染まった。
目に飛び込んできたのは、まる裸の二乃と砂月だった。
「な、な、な何やってるの???」
「え、採寸だけど?」
「裸の方が正確な数値が出ますわ」
二乃の小ぶりだが確かにある胸と、
砂月の豊かで美しい胸が、翼の視界に飛び込んできて、頭が沸騰しそうになっていた。
心臓が激しく鳴り、視線をどこにやればいいのか分からなくなる。
すると、どこから取り出したのか、巻き尺を持った華がにこにこしながら近づいてきた。
「さ、脱いでください!」
「へ?」
脱ぐ?ここで??
「制服の上から測れませんし」
「あの〜、もしかして裸になれと?」
「はい!」
「っっっっ!!!!???」
翼は人に裸に近い格好を見られるのは、
とてつもなく恥ずかしいと思うタイプだった。
男性に対してはもちろん、女性であっても同じだった。
エロに対する耐性が、ほぼゼロだった。
華に促され、震える指で制服のボタンを外していく。
白いブラが翼の肩から外されると、
綺麗な形のたわわな胸があらわになった。
顔は真っ赤を通り越して、熱でぼうっとするほどだった。
「えっと……飛彩先輩のバスト84、ウエスト55、ヒップ83ですね」
華が数値をメモするたび、
翼は恥ずかしさで倒れそうになっていた。
華のメモを二乃が覗き込み、明るく言った。
「あれ?翼、おっぱい大きくなった??」
「言わないで〜!!!!」
翼は両手で胸を隠し、
耳まで真っ赤になって縮こまった。
教室に、仲間たちのくすくすという笑い声が響く。
恥ずかしさで死にそうな翼だったが、
その奥に、ほんの少しだけ——
みんなと一緒に舞台を創る喜びのようなものが、
静かに芽生え始めていた。
これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。
そして……
夢を叶える物語である。
第3話 完




