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SNOW WHITE PRELUDE -白雪姫の輪舞-  作者: 二ノ宮純
第10章 「少女は片翼でも空へ行く」
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第10章 「少女は片翼でも空へ行く」 第3話

夜も深まった深夜。


ゼロタイムの店内は、静寂に包まれていた。


カウンターの上の薄い照明だけが、

淡い光を落としている。


賑わっていた昼間の喧騒は遠く、椅子が上げられたテーブルが、静かに並んでいる。


翼は、カウンターの中に入り、棚に飾られた写真をじっと見つめていた。


幼き頃の自分——

笑顔で怜人さんと並んで写る、小さな翼。


確かに、自分の思い出だ。

しかし、今はそれが本当に自分のものだったのか、どうしても信じられなかった。


自分は飛彩じゃないのだから。


同じ棚に飾られた、

もう1枚の写真に目が止まった。


翼はそっと手を伸ばし、それを取り上げた。


それは、幼い怜人の小学校の入学式の写真だった。

怜人の隣に映る女の子——


綺麗な金髪で、どこか幼い翼に似た雰囲気を持つ少女。


「それ、雪叢李梨奈だよ」


ツバサの冷たい声が、背後から響いた。


翼の肩が小さく震えた。


「兄さんとは……どんな関係だったの?」


「幼馴染」


兄さんと李梨奈さんは、近い存在だったんだ……。


翼の指が、写真の端を強く握りしめた。



「何やってるんだ?」



振り返ると、階段から怜人が顔を覗かせていた。


翼は顔を伏せた。


「……兄さん……私は……私の本当の家族は、李梨奈さんなんですか……?」


怜人が、翼の手に持った写真に気づいた。


その表情が、一瞬で固まる。


「……知ってたのか?」


「この前、公園で兄さんと李梨奈さんが話してるのを見てしまって……」


「…………」


「教えてください……私は誰なのか」


もう、隠すのは無理だな……。


怜人は静かに息を吐き、

ゆっくりと階段を下りてきた。


「分かった。知ってることを話すよ」


夜のゼロタイムに、2人の影が長く伸びていた。




翼はカウンターの椅子に座って待っていた。


ただ待つことしかできなかった。


「話なんて聞いてどうするの? 事実は変わらないよ」


ツバサの無情な声が、静かな店内に冷たく響いた。


「……分からない」


翼は小さく呟いた。


怜人が封筒を持ってきた。


それは高虎が集めてくれた調査報告書だった。


翼は封筒を受け取ると、

中の書類をゆっくりと取り出した。


「それは探偵に依頼して、李梨奈とその両親を探していた調査資料だ」


「この前いた人、探偵だったんだね」


翼は静かに報告書に目を通した。





飛彩翼、本名『雪叢翼』

2005年 3月31日生まれ。


家族構成

父:雪叢大治ゆきむら だいじ

母:雪叢美波ゆきむら みなみ

姉:雪叢李梨奈


雪叢家と飛彩家は近所同士で、

家族ぐるみの付き合いがあった。


雪叢大治は会社経営をしていた。


しかし、事業に失敗し程なくして倒産。

その後、アルコール依存症に。


雪叢大治は会社経営で多方面に多額の借金を負っていた。


借金取りから逃れるため、夜逃げを敢行。


その際、生後7ヶ月だった次女・雪叢翼を飛彩家の玄関先に置いて逃亡。


雪叢李梨奈は両親について行ったが、

逃亡先で両親に置いていかれ、

自力で親族の家まで向かった。


翌年、雪叢大治と雪叢美波は山中のダム湖にて遺体となって発見されている。


警察は自殺と判断。






翼はゆっくりと報告書を閉じた。


「……私、本当に捨てられたんだ……」


声は掠れ、ほとんど息のように消えていった。


「親父たちは知ってた。けど言わなかった。

翼を本当の家族だと思ってたから」


「兄さんはこれ知ってどうするつもりだったの……?」


怜人は言葉を探していた。


「……理由を知りたかった。 なんで翼を……自分の妹を捨てたのか。 それを李梨奈の口から聞きたかった」


夜のゼロタイムに、

2人の声だけが静かに響いていた。


翼は封筒を胸に抱き、

怜人の顔を、涙で滲む瞳で見つめた。


真実を知った今、

自分の名前さえ、どこか遠いものに感じられた。







これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。

そして……









夢を叶える物語である。


第3話 完

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