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SNOW WHITE PRELUDE -白雪姫の輪舞-  作者: 二ノ宮純
第10章 「少女は片翼でも空へ行く」
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第10章 「少女は片翼でも空へ行く」 第2話

夜の闇が、静かに街を包み込んでいた。


翼は1人、夜道を歩いていた。


なんとなく外に出たはいいが、

自分は何がしたいのか分からなかった。


足は自然と、いつもの公園へと向かっていた。


気づくといつものベンチに腰を下ろし、

空を見上げていた。


ここで怜人と李梨奈の会話を聞いてしまったあの日……。


自分という存在を見失ってしまった。


ベンチに座って空を見てみる。


星は見えない。


もう星が見えないのだろうか……。


翼が顔を伏せていると——


「1人でいたら危ないですよ」


翼の体が、びくりと震えた。



まさか——李梨奈さん?




しかしそこにいたのは、李梨奈ではなかった。


茶色のショートボブの少女。

翼にはその少女に見覚えがあった。


「白羽……結依さん……?」


「お久しぶりです。飛彩さん」


それは、かつて百合々咲のエーデルとして空に輝いていた。


元・フラウ・ヒンメル 白羽結依

翼の前任者であった少女。


「何をなされてたんですか?」


「散歩…ですかね?白羽さんは?」


「私も散歩みたいなものです」


結依が翼の隣に腰を下ろした。


「もう直ぐですよね、エンドレスワルツ」


「そうですね…」


沈黙が2人を包んだ。


「転校されたって聞きました」


「えぇ、今は立風館女学校というところにいます」


翼は黙って俯いていた。


すると誰かに聞いて欲しかったのか、

自然と話していた。


エーデルのこと。

SNOW WHITEのこと。

そして李梨奈と自分のこと。


結依は静かに聞いていた。


「飛彩さんも大変なんですね」


「結依さんはどうやって…空を飛んでたんですか?」


結依は少し考えていた。


「そうですね…。あの時の私は演じるというのを心から楽しんでいました。 舞台はなりたい自分になれる場所でありましたから」


なりたい自分に……


翼にとって今自分は何になりたいのか分からなかった。


飛彩なのか。

雪叢なのか。


「あの時の私は1人で色々抱え込んでいました。

それで、舞台に立てなくなってしまいましたが」


結依は苦笑いを交えながら続ける。


「でも。あれがあったから私は人と人の繋の大切さを実感しました。 立風館のみんながいたから私は舞台に戻れたんです」


「私はどうすればいいんですかね…。」


結依は翼をまっすぐ見た。


その瞳は、かつて空に輝いていた少女のものだった。


今は穏やかで、しかし確かな光を宿している。


夜の公園に、結依の言葉が静かに響いていた。


「信じてあげてください」


「信じる?」


「はい。他人を……そして何より自分自身を」


翼の胸の奥で、何かが小さく動いた気がした。


もう一度、信じてみてもいいのだろうか……。


李梨奈さんを。

怜人さんを。

そして——自分自身を。


その想いが、ほんのわずかに温かさを取り戻そうとした瞬間——


「無駄だよ」


翼の背筋に、冷たいものが流れたようにびくりと震えた。


翼にしか聞こえない、ツバサの冷たい声。


「信じて何になるの?

信じた結果、裏切られたんだよ。

憧れだった人も、家族だと思ってた人にも。

全部信じてたのに……裏切られたんだよ」


冷たい言葉が、どっとのしかかる。


翼は何も言い返せなかった。


結依の優しい声と、ツバサの冷たい囁きが、

胸の中で激しくぶつかり合っていた。


「飛彩さん……?」


結依が心配そうに声をかける。


翼は小さく首を振り、

震える指で自分の胸を押さえた。


信じたい。

でも、怖い。


信じたら、また傷つくんじゃないか。


信じたら、また捨てられるんじゃないか。


夜風が、木々の葉を静かにざわめかせる。


翼の瞳に、月明かりが淡く映っていた。


結依はそっと翼の肩に手を置き、

静かに寄り添うように座った。


「大丈夫です……少しずつでいいから」


その温もりが、翼の冷えた心に、

ほんのわずかな灯りを灯そうとしていた。


ツバサの影は、公園の隅で静かに微笑んでいた。


翼は、ただ黙って夜空を見上げた。


信じることの痛みと、

信じたいという願いが、

胸の奥で静かに、静かに、

せめぎ合い続けていた。



これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。

そして……





夢を叶える物語である。


第2話 完

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