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SNOW WHITE PRELUDE -白雪姫の輪舞-  作者: 二ノ宮純
第5章「自由への風は再び吹く」
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第5章 「自由への風は再び吹く」 第5話

放課後の駅前。


制服姿の二乃は、

重たい足取りでアーケードの通りを歩いていた。


肩が落ち、視線は地面に落ちたまま。


風がビルの角を通り抜け、

制服のスカートを軽く揺らす。


そのとき——どこかから音楽が流れてきた。


ふと顔を上げると、

目の前のビルの大型モニターが切り替わった。


——MVだった。


色鮮やかな照明、華やかな衣装。

そして、D4の新曲が躍動する映像がそこにあった。


「……新曲、出たんだっけ……」


二乃は立ち止まり、

しばし見上げたまま動けなかった。


画面の中で笑顔で踊る4人。


その中央で誰よりも眩しく輝くのは、

かつて“憧れ”だった存在たち。


「……D4のみんなは、あんなにキラキラしてるのに…… 私……」


ぽつりと、誰にも聞こえないような声で呟いた。


歩き出そうとした、その瞬間——

誰かと肩がぶつかった。


「わっ……! ご、ごめんなさいっ!」


「いやいや、こちらこそ……って——」


その人が驚いたように言葉を止める。


「……あれ? 二乃ちゃんじゃん」


驚いた顔で振り向く二乃。


そこに立っていたのは、ショルダーバッグを片手に持った大人の女性だった。


「……ひなた……さん?」


「やっぱり! まさかこんなとこで会うとはね〜」


二乃は思わずまばたきをした。


映像の中で見ていた“憧れの光”が、

突然目の前に現れたような

そんな不思議な感覚だった。


駅前の喧騒の中、風がまた吹き抜けた。


かつての“風の君”と、今の“風の君”。

2人の“風”が、ここで再び交差した。


ひなたは明るく笑いながら、

二乃の肩を軽く叩いた。


「どうしたの?なんか元気ない顔してるよ?」


二乃は言葉に詰まり、ただ小さく首を横に振った。


夕方の駅前は、帰宅する人々で賑わっていたが、

二乃の胸の中は、静かにざわついたままだった。




駅前のカフェ。


夕暮れの街を背景に、2人の“風の君”が向かい合って座っていた。


ひなたがアイスラテをくるくるとストローでかき混ぜる。


二乃はテーブルに両手をついたまま、俯いていた。


「……練習、いいの?」


ふいにひなたが問いかける。


二乃は、ゆっくりと顔を上げた。


「分からないんです。どうしたいのか……」


「舞台に立ちたいって気持ちは、ちゃんとあるんです。でも……ナタちゃんにはあんなこと言ったくせに、エーデルの責任とか、皆の期待に応えられるのかずっと分からなくて……」


「……今、舞台に立っても翼や、結依ちゃんみたいに心から楽しめるのかなって」


テーブルの上で、指がぎゅっと握られていた。


ひなたは、ふっと優しく笑った。


「……私も、昔似たようなことあったよ」


「え……?」


「“歴代最高のエーデル”とか、“奇跡の舞台”とか……周りから持ち上げられたけど、正直プレッシャーでしかなかった。私たち、ただ“好き”で舞台に立ってただけなのに……」


「気づいたら、いつの間にか“責任”って言葉に押し潰されそうになってた」


二乃は、息を呑んだ。


それは、まさに今の自分の心そのものだった。


「……でもさ、演じてるときだけは違った」


ひなたの声が優しくなる。


「舞台に立って、を演じてる時

私は、ほんとに風になれた気がしたんだ。

重圧も責任も忘れて、心から自由になれた」


「自由に……」


「そう。舞台の上では、何者だってなれるんだよ」


「誰かの期待に応えるのも大事かもしれないけど、

舞台ってね、自分が“生きる”場所なんだ。

自由に、笑って、泣いて、叫んでいい。

だって舞台は、そういう場所だから」


二乃の瞳が、ゆっくりと濡れていく。


「……私に、出来ますかね。そんな事……」


ひなたは笑った。


「できるよ。だって、私だって風になれたんだから。だから二乃ちゃんも、風になろ!」


その言葉が、心の扉を優しく叩いた。


理央に言われた言葉、光葉に言われた言葉が、

脳裏をよぎる。


私は自由になっていいんだ。


次の瞬間、

椅子をきゅっと引いて立ち上がった二乃。


「ひなたさん……ありがとうございます!」


笑顔が戻っていた。


その笑顔は、どこか子供のように真っすぐで、

あたたかかった。


その背中が走り出す。

“風”のように。


見送るひなたは、ふっと苦笑いした。


「……あんなこと言っちゃったけどさ。エーデルの重圧って、何十年経っても変わんないんだね」


窓の向こうに消えていく二乃の姿を見ながら、

そっと呟く。


「……二乃ちゃん、舞台で待ってるよ」





これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。

そして……





夢を叶える物語である。

第5章 「自由への風は再び吹く」 完

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