表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SNOW WHITE PRELUDE -白雪姫の輪舞-  作者: 二ノ宮純
第4章 「零は全ての起点なり」
PR
30/73

第4章 「零は全ての起点なり」 第3話

SNOW WHITEの舞台稽古が始まる時間。


いつものように、生徒たちは広いレッスン室に集まっていた。


サブキャストたちがストレッチを始め、

音響班がマイクチェックを行い、

裏方が照明の配置を最終確認している。


空気はいつも通り緊張と活気に満ちていた。


ロゼ・アディンは演出席に腰を下ろし、腕を組んでその光景を静かに眺めていた。


その視線には、ある“存在”を探すような、

鋭い色があった。


しかし——時間が来ても、その姿は現れなかった。


エーデル。


あの5人の姿は、どこにもなかった。


その“空白”は、レッスン室にいた全員が、

はっきりと意識していた。


誰も口には出さない。


けれど、誰もがその不在を、肌で感じていた。


——舞台の“心臓”が、今ここにはない。


重い沈黙が、部屋全体をゆっくりと覆い始めた。


その沈黙を切り裂くように、

ロゼがゆっくりと立ち上がった。


「……始めるぞ。

エーデルがいない分は、アンダーで対応する。

気を抜くなよ。“あの席”が空いたままになるなんて、保証はどこにもない」


重く、鋭く、張りつめた声が、室内を貫いた。


ロゼの隣に立つ侑樹が、

演出補佐として声を張り上げた。


「それでは、皆さん、15ページから立ち回りの確認をしつつ進めていきます」


侑樹の声はいつもより少し硬く、緊張を隠せていなかった。


「舞台創造科の皆さんは、各員持ち場についてセッティングをお願いします」


生徒たちが動き出す。


ストレッチをしていた者たちが立ち上がり、

裏方が大道具の最終調整に入り、

照明班がスポットライトの角度を微調整する。


しかし、いつものような活気とはどこか違う。


空気に、微かな隙間のようなものが生まれていた。


侑樹はロゼの横で、そっと拳を握りしめた。


(翼……最高の舞台作ってあげるから……絶対に帰ってきて)


その想いは、胸の奥で静かに燃えていた。


エーデル不在の穴は、想像以上に大きかった。


白雪姫の不在は、単なる一役の欠如ではなく、


この物語の中心そのものが欠落していることに等しかった。


それでも、稽古は始まる。


ロゼの声が、再び響いた。


「最初から。集中しろ」


音楽が流れ、照明が落ちる。


生徒たちが動き始めた。


しかし、今日の稽古場には、

確かに“何か”が欠けていた。


かつての“過ぎ去りし流星たち”が輝いていた頃とは違う、

新しい世代の、脆くも懸命な光が、

今、静かに灯り始めようとしていた。






これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。

そして……






夢を叶える物語である。


第3話

 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ