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日常系ネガティブワールド  作者: 神楽坂かぐら
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第七十三話 解けない難題を解くには 解けない難題を解けないことだ

 夕食も食べ終わり、お風呂の中で今日一日を振り返っていた。まさか最後はあんなことになるなんて。

 未(いま)だに抱き締められた時の瑞希の匂いや声、体の感触が生々しくよみがえる。

 瑞希はあの時、何を考えていたのだろうか。  

 お風呂から上がり、疲れも取れて部屋に入って早速ベッドに横たわってリラックスしていた。

 (ドライヤーは後でしよう)と、思った時であった。

 机の上に置いていたスマホが振動して、音が鳴っている。何事だ!?と思いスマホを手に取る。

 画面には『みずき』と、表示されていた。

 (瑞希?河合さんから?どうしたんだろ)

 そう思い、電話をとって急いで話す。

「あっ、もしもし!」

 電話の出方(でかた)が分からずに戸惑(とまど)ってしまい着信から数秒経っていたが、どうやら繋がっているようであった。

「......もしもし」

 瑞希の声だ。少し元気が無いようだが確かに瑞希の声であった。

「河合さん?」

 俺は、何を話せばいいのだろうかとばかり考えていた。

「高山くん。今少し時間ある......?」

 彼女はいつにも増して真剣な声色(こわいろ)であった。

「あっ、うん。ちょうど部屋でリラックスしてたところ」

 俺は久しぶりの電話で、なおかつ初めての女の子との電話でとても緊張していた。

「そっか。なら、良かった」

 瑞希の声を聞いて、先程(さきほど)まで瑞希のことを考えていた事を思い出して一人で恥ずかしくなる。

「うん。それで......どうしたの?」

 俺は電話に慣れておらず、沈黙(ちんもく)の間(ま)が耐えられないため話を進めようとする。

「あー......えーとね......。今日の私、どう思った?」

 やはりそういう類(たぐ)いの話だとは思ったが、それはそうと何と答えれば良いのか分からない。

「あぁ......、あれね......。まぁ、色々あるんだろうし、誰でもそういう時はあるんじゃない?」

 とりあえず、彼女も意識しているみたいだしここは当たり障(さわ)りのない事を言ってみた。

「そ、そうよね!?仕方ないよね!?あぁー、良かったー」

 いつもの彼女の声に戻った。電話口で伝わる彼女の安心した声が、抱き締められた時の事を再び思い出させる。

「まぁ、でも俺もああいうの初めてだったから戸惑ったけどな」

 少し笑い話にして会話をしてみることにーー

「あっ、だよね......。ごめんね?気まずい雰囲気にさせちゃって」

 彼女は察(さっ)したのか、俺に申し訳なさそうに謝ってきた。

「いや、いいよ!それに俺も別に嫌じゃなかったし」

 彼女に対して嫌な気持ちを抱いていると誤解されたくなかったため、嫌ではない事を伝える。

「え......、どういうこと?」

 急に彼女は困惑(こんわく)したような声で俺に聞いてきた。

「えっ?いやっ、だから俺は別に河合さんのこと嫌じゃないって意味なんだけど......」

 伝わらなかったのか、今度はしっかりと言葉にして伝えることにした。

「あっ......、それはどうもありがとう」

 感謝はされたのだが、まだ困惑しているように感じた。

「うん。正直、めちゃくちゃドキドキした」

 何故だろうーー沈黙を作らないようにしているためなのか、彼女と話すと次々言葉が出てくるのか、分からないが余計な言葉が口からこぼれ落ちていく。

「えっ!?ドキドキしたの!?なんで!?」

 彼女は驚(おどろ)いている。俺は女の子に対してドキドキしない人間とでも思っているのだろうかーー

 しっかりと女の子に対してドキドキする事が出来るほどの人間性は持ち合わせているのだがーー

 とは、言ったものの前まで周りの人間に対しては興味がなかった俺が、女の子に対してドキドキする事になるとは俺自身も思ってはいなかった。

「そりゃあ、するに決まってるだろ!いきなりあんなことされたら」

 俺は無意識(むいしき)に無自覚(むじかく)に人をドキドキさせる彼女のことを魔性(ましょう)の女(おんな)と呼ぶに値すると思った。

「えっ!?あんなこと?って、何したんだっけ......。って、ああぁぁーー!!」

 受話器の向こう側からすごい音が聞こえた。

「えっ?河合さん?どうしたの!?大丈夫?」

 心配になり、すぐに呼び掛けをするも反応がない。

「......っ、あいたたー......」

 ようやく声が聞こえたのだが、何故か痛がっている様子。

「おーい!大丈夫ー?」

「あー、ごめんごめん。ちょっと椅子から落ちちゃった......。あはは」

 笑いながらそういう彼女はやはりいつもの彼女であった。

「そうなんだ。びっくりしたよ。いきなりすごい音が聞こえたから」

「あー、ごめんね。お騒(さわ)がせしました。って、あなたのせいでしょーがー!!」

 俺はいきなり怒られた。何故、今自分が怒られたのか理解出来ない。

「えっ、俺!?なんで?俺なんかした?」

 その問いかけに彼女はーー

「あ、あなたが突然変なこと言い出すからでしょ!!」

「変なこと?って、なに?」

 俺は変なことを言った覚えがないので、純粋に彼女に質問する。

「だ、だからー!!その......私がハグした話......」

 急にしおらしくなる彼女に対して再びドキドキしてしまったことは内緒にするつもりだ。

「えっ、突然って、河合さんから言い出して来たんでしょ!?」

 俺は彼女が何を言っているのか分からなかった。彼女から出してきた話題に乗っかって怒られたのだから、流石に驚きを隠せない。

「はぁー?私そんな話してないよ!!それにあの事は忘れて欲しいんだから!」

 そう言っていたのだが、となると俺は一体(いったい)先程(さきほど)まで誰と何の話をしていたのだろうかーー

「じゃあ、何の話をしていたんだ?最初に、今日の私はどうだったか聞いてきたのは河合さんだろ?」

 解(と)けない難題(なんだい)を突きつけられて、解けなかったら怒られた。そんな気分になり、少し憤(いきどお)りを感じてしまっていた。

「あ、それはその......桜とのことよ」

 彼女のこの言葉を聞いて俺は戦慄(せんりつ)した。

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