↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常系ネガティブワールド  作者: 神楽坂かぐら
PR
71/78

第七十一話 遠すぎて見えないものがある 近すぎて見えないものがある 

 瑞希とカフェに行った後、天道と天道の後ろの女子と偶然出会った。

 そこで、瑞希と天道は少し食い違いで言い合いになり、気まずい雰囲気だけを残して俺たちは再び二人になった。

 瑞希はその後、しばらく黙って立ち尽くしていたのだが、俺が話しかけるとどうやら泣いているようであった。

 俺はどうして良いのか分からなくなり、再び言葉をかけると話している最中に、衝撃が走ったーー

 そして、口を塞がれているため話す事が出来なかった。

 俺の目の前には、泣いている瑞希が居る。俺の目の前にはその瑞希の髪の毛がある。

 ーーそう。俺は今、瑞希と抱きあっているという状況なのだ。

 俺が話しかけた直後、瑞希は勢い良く俺に抱き付いてきた。その衝撃で俺は再び言葉を失ったのだ。

 瑞希の髪の毛で口を塞がれているが、鼻は開いているので良い匂いだけはする。

 だが、これは一体ーー

 予想だにしなかった展開に動揺する俺は、瑞希の肩を持って、距離を置くために引き離そうとした。

 するとーー

「もう少しこうさせて」

 か弱いその声に俺は断ることなんて出来なかった。

 周りの人々はちらちらとこちらを見ている。それがとてつもなく恥ずかしいのだが、それよりもこの状況を、なんとかしなくてはという思いが強かった。

 恥ずかしさから目を反らすために目を閉じた。

 そうすると、外界(がいかい)の情報が触覚(しょっかく)と嗅覚(きゅうかく)と聴覚(ちょうかく)だけになり、余計に瑞希からの情報が研(と)ぎ澄(す)まされてしまった。

 柔らかい体の感触。さらさらの髪の毛の感触。せっけんの良い匂い。すすり泣く可愛らしい女の子の声。

 俺は目を開けて、急いで近くの整骨院の看板を眺めた。

 (整骨院かぁ......。保険利くのかな......)

 瑞希の情報が半分くらいに下がったようだ。

 すると瑞希は少し俺から離れてこう言った。

「ありがとう。ごめんね?変なことしちゃって......」

 制服の袖(そで)で涙を拭(ぬぐ)いながら、鼻をすすっていた瑞希の顔は赤く火照(ほて)っていた。

「いや、別にいいよ......。もう大丈夫?」

 急に泣き出したためとても心配になっていたので、様子を伺(うかが)う。

「うん!おかげさまで!高山くんって優しいね」

 泣きながら笑う様は、複雑な表情に見えてその倍以上、心情の方が複雑なんだろうなと考えてしまう。

「そっか。なら、良かった。今日はもう帰ろうか」

 とりあえず瑞希は家に帰って落ち着いた方が良いだろう。俺も整骨院が気になって調べなくちゃいけないし。

「そうだね。なんか、今日は色々とごめんね?息抜きに付き合わせるつもりが、こんないざこざにまで付き合わせちゃって」

 今の瑞希はすっかり泣き止んで、少し笑えるくらいにまでなっていた。

「いいよ。それくらい。どっちみち今日は何もすることなかったし」

 駅が近いのもあって、すぐに瑞希と別れることになった。

「じゃあ、この辺で!本当に今日はありがとうね!また明日学校で!」

 大きく手を振る瑞希は、俺が知っているいつもの瑞希だった。

 見送りも終わり、俺はようやく帰宅する。

 帰り道に整骨院のポケットティッシュをもらい、俺はまだ整骨院に行くべき人間ではないことがわかった。

 色々あった一日を終わらせるために帰宅した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。