第六十八話 仲良くしたくても仲良くする方法が分からない 方法が分かっても仲良くできるかは分からない
俺は今カフェで、瑞希のスマホに映し出されている写真を見ながら彼女の話を聞いていた。
「これはねー、去年の体育祭の時のお弁当!」
「え、こんなのまで撮ってるの?お弁当なんて毎日作ってもらってるじゃん!」
俺は、お弁当の写真を撮っていることに驚きを隠せなかったが、これは俺だけの反応ではないだろうという自信があった。
「それはいつものお弁当!これは体育祭の時のお弁当!特別なんだから!ほらっ、ここ唐揚げが入ってるでしょ!?」
彼女が何を言っているのか理解が出来ずにいた。
「うん。それがどうしたんだ?俺なんて週に二、三回は入ってるぞ」
「えぇー!?なんで?良いなー!私は、滅多に入れてくれないの!あとこれ!エビチリもあるよ!普段は入れてくれないの!」
確かにエビチリは俺の弁当では見たことがない。そもそも弁当にエビチリが入ることさえ今初めて知ったくらいだ。弁当に入れて本当に美味しいのだろうか。今日帰ったら親に頼んでみよう。
「なるほどね。普段入っていないおかずがあるから写真を撮ったのか」
俺はようやく瑞希の写真好きに関して理解できた気がした。
「違うの!まぁ、それもあるけど!特別な日だったから!だって、この写真を見たら体育祭の日の一日の出来事とか思い出すでしょ?あの時はこうだったとか、午前最後の競技が終わってお弁当だったんだ!とか」
瑞希は少し真剣な表情をしながら話していた。
「そういうことか。写真だけではなくて、写真と付随してその日の記憶を思い出すみたいな?」
「そう!そんな感じ!だから私は、写真は自分用で撮ることが多いの!まぁ、送るのも多いんだけど......」
俺はチョコクロワッサンを食べながら、またもや瑞希の知らない一面を知ったのであった。
アイスコーヒーを飲んだ瞬間つい思わず、
「にがっ!」
と、口に出してしまったのが、瑞希の話が終わってからで良かったと思った。
「大丈夫?ここにガムシロップとミルクがあるからかけたら?」
瑞希がガムシロップとミルクを一つずつ差し出してきた。ありがたく受け取り、それらを入れた後に再び飲んでみる。
まだ苦い。ガムシロップを3つ鷲掴みして、投入した。
「ちょっと!それかけすぎじゃない?高山くんは、まだまだお子ちゃまだね!」
微笑みながらこちらを見ている瑞希だが、俺はそんなことはお構い無しにコーヒーを飲む。
「うん。ちょうどいい!美味しい!」
瑞希の方を見て言った瞬間、再びあの音が聞こえた。
ーーカシャッ!
瑞希が俺の方にスマホを向けて撮っていた。
「おい、撮るなよ!」
「違うの!高山くんが口の周りにいっぱいチョコ付けてたからつい面白くて!」
笑いながらこちらを見ている瑞希。俺は慌ててガムシロップの隣にあったペーパーで口元を拭いた。
「てか、それなら余計に撮るなよ!恥ずかしいだろ」
俺は残りのチョコクロワッサンを口の周りに付かないように頬張る。
「あはは!だって面白かったから!これは傑作だよ!記念にしとこ!」
そう言って、瑞希もチョコクロワッサンを食べているが、口元がとても綺麗だ。
「おい。消せよ!って、それも自分用か?」
自分用なら他の人に見られないので、まぁ良いだろうと思っていた。
「んー、これは送る!」
「おいっ!誰にだよ!」
瑞希はこちらを見て、こう言った。
「君に!」
俺の方を指差していたので、俺のことを言っているのだろう。
「え、俺に!?」
咄嗟のことで驚いてしまった。
「うん!だから連絡先教えてよ!」
瑞希はスマホをこちらに差し出して待っているようだ。
「え、あっ、はい......」
俺も急いでスマホを取り出して、連絡先交換する画面に移動しようとする。
「って、あれ?これはこうして......なんだ?この画面は」
何しろ連絡先交換なんて中学の時に加藤と交換したっきり、したことがないためやり方が分からない。
「何してるの?ちょっと見せて!」
と言いながら、瑞希は俺のスマホを取り上げる。
「あっ、待って、ちょっと!」
瑞希は少し操作しただけでいとも簡単に連絡先交換をしてみせた。
「はいっ!これでよしっと。ありがとう」
そう言って、スマホを返された。
スマホの画面には友達のリストに『みずき』と、新たに表示されている。
ーーピローン!
「おっ、なんだ?」
俺は普段聞くことのない音にびっくりしてしまう。
『瑞希だよー!よろしくね!』
目の前の女の子から早速メッセージが送られてきた。さっきの音は、その時の着信音だったのか。
「おーい!ちゃんと返信してね!」
瑞希は、片手で口の横でやまびこポーズをしながら俺に言ってきた。
「え、あっ、うん」
そう言ってみたは良いものの内心は、
(近くに居るのだから直接話せば良いのに)なんて思ったりしていた。
『よろしく』とだけ返してスマホをポケットにしまう。
「ちょっとー!スマホをすぐにしまわないの!連絡が来てても気付かないでしょ!?」
「えっ、まぁでも人と話してる時にスマホを触ってる方がいけないような......」
瑞希は少し考えているようだ。
「んー、まぁそれもそうね!高山くん流石!でも、たまにスマホはチェックしてね!」
俺の意見が認められた事が少し嬉しかった。
「まぁ、たまにはね」
俺は、少し照れ隠しをしながら答えた。




