第六十三話 何かを忘れている気がする 忘れたことさえ忘れている
放課後ーー瑞希といつも通りパソコン室で作業をしている。
今日は二人だけでパソコン室を使っている。
いつも通りの挨拶をしてから、作業に入って少ししたところで、俺は今日の出来事を瑞希に話そうとしていた。
「ところで......相棒くん!桜は何か言ってた?」
瑞希から話を振ってきたので、今日の出来事を話す。
「あ、うん。一応ね」
「えっ、何て言ってたの?」
俺の返答を聞いて瑞希は興味津々に聞いてくる。
「なんか今日は放課後出かけるみたいだぞ」
「えっ......?出かけるって、用事とか?」
瑞希は目を見開いて少し驚いている様子であった。
「そうじゃないか?なんかよく分からない事を言ってたが、とりあえず出かけるらしいぞ」
「え、よく分からないってそれは桜から直接聞いたの?」
天道から直接聞いたとなると、よく分からないことにはならないだろう。そう思いながら返答する。
「いや、天道が後ろの女子と話してるのを聞いて」
「後ろの女子って、その子と出かけるの?」
天道の事となると瑞希はこんなにも質問責めをしてくるとはーーよほど、天道の事が気になるのであろう。
「あー、多分そうじゃない?よく分からないけどそうなんじゃない?」
自分が聞いた事の自信が無かったため少し抽象的な発言にしてしまった。
「なんで分からないのよ!この役立たずー!」
そう言って瑞希は相棒パンチをしてきた。
「ごめんごめん。とりあえず、お昼にあった事を話すよ」
俺は笑いながら先ほど起こった出来事を詳らかに話した。
その間、瑞希は黙って真剣に頷きながら聞いてくれた。
が、最後の出来事を聞いた瞬間ーー
「あははー!何それ!?仲良くなりたかったって、えっ、急に?」
瑞希は、俺が最後に天道の後ろの女子に言った言葉を聞いて大笑いしている。
「笑うなよ。それ以外思い付かなかったんだよ」
「だってぇー!あはは!超面白い。そんなに仲良くなりたかったの?」
瑞希が面白半分で聞いてくる。
「そんなわけないだろ!大体、その子の名前自体知らないんだぞ?俺」
「そうなんだー。てっきり、相棒くんは女好きの浮気者なのかと思った」
瑞希の笑いもようやく落ち着き、少しからかうように微笑みながらそう言った。
「なんでだよ!ていうか浮気者って、だいたい俺彼女居ないし」
自分で言っていて虚しくなるような事なんてたまにあるのだが、友達や恋人が居ない事を自分で言うのが一番虚しい事だな。と心の中で思いながら言葉にした。
「そうなの......?」
瑞希はこちらを見つめながら聞いてくる。
「そうだけど......。てか、俺が彼女居るように見えるか?」
俺がそう言うと瑞希は明るく、
「そうだよねー!見えないもん!それにいつもここで残って作業してるし!」
(放課後に作業をしていたら友達や彼女が居ないなんて思われるのか?だとしたら委員長みんな俺と同じ仲間ってことになるのだが......)
「それは河合さんも同じだろ」
「私は違うもん!友達も彼氏もいっぱい居るもん!!相棒くんとは違うんだから!!」
何故か急に怒り出す瑞希である。
「いやっ、彼氏はいっぱい居たらまずいでしょ!河合さんの方こそ浮気者なんじゃない?」
俺は上手いことを言えたと言わんばかりの笑みを浮かべて瑞希に言う。
「もぉー!!相棒くんのバカー!!」
そう言って相棒パンチをしてきたので、流石に三回目ともなると動きが読めてきたこともあり、避ける事ができた。
「ふっ、あまいな。もう見破ったぞ」
少し調子に乗って瑞希に合わせた発言をしてみる。
「あまいのはどっちかな?逆パンチー!」
今度は逆の方向からのパンチがやってきて、ギリギリ避けるのが間に合わず喰らってしまう。
「いたたー」
俺はパンチをされた方の頬を押さえながら痛がる。
「やったね!」
瑞希がガッツポーズをしながらこちらを見ている。
その後に扉が開く音がした。
と同時に、瑞希は奥の入口の方を見ていた。
俺も振り返って入口の方を見ていると、そこにはもう一人の委員長が立っていた。




