第五十八話 仲間は多い方が良い だが少ないと大切にするものである
天道と分担作業になった俺は、パソコン室で隣のクラスの河合瑞希と隣の席でパソコン作業をすることになった。
俺達はというよりも、瑞希はよく喋るので作業があまり進まないみたいだ。
なので、俺達はある程度作業が進むまで必要以上のことは話さないというルールを作った。
そのおかげもあって、俺は各班の役割表を作り終えようとしていた。
瑞希はというと、先週の続きで三島の作ったページの余白に絵やイラストを入れている。
それはそうと、よくよく思えば初日の瑞希の作業スピードはすごく早かったんだなと思った。
俺も役割表が出来た所で帰ろうと印刷をしてから帰る準備をする。
「もう終わったの?」
「あ、うん。今日はこれで終わろうかなと」
瑞希が少し寂しげな表情で聞いてくる。
「そっか......」
「うん。河合さんは?」
「私はもう少し残ろうと思う」
瑞希は頑張りやなのかもしれない。そう思ったので、俺ももう少し残る事にした。
「俺もやっぱりもう少しやって帰るよ」
そう言って席に座ると、
「ほんとに?なら私も頑張らなきゃ!」
瑞希の寂しげな表情がいつの間にか笑顔に変わっていた。
そうしてそこまで長い時間もかからずに、俺は先生方の担当表も完成させて瑞希も今日までの遅れを取り戻す事が出来た。
「よしっ、完成っと」
「うん!私も終わったよ!」
二人はパソコンの電源を消して瑞希が、
「最後の人は鍵の返却お願いします!」
と、残っている人たちに伝えてパソコン室を去った。
俺らは学校を後にする。瑞希は電車通学らしく駅までは俺と同じ方角で歩きながら一緒に帰ることになった。
「はあぁーー!疲れたぁーー!!」
瑞希が手をあげて背伸びをしながら言う。
「俺も今日は疲れたよ。細かい字を見ながらするのって結構しんどいんだな」
少し笑いながら自分の今日の感想を伝える。
「高山くん頑張ってたもんねー!なんかごめんね?私が残るって言ったから付き合わせちゃったみたいで......」
「いや、そんなことないよ。俺も天道が忙しいだろうし、作業の進行具合が早かったらあいつも安心してくれるだろうしね」
成り行きとはいえ、女子と一緒に下校をするのが初めてではあったのだが、気まずくなることもなく会話が流れる。
「そういや、桜のことでお話があるんだけど......いい?」
少し神妙な面持ちで瑞希が言ってきた。
「どうしたの?」
そう聞くとすぐに言葉が返ってきた。
「今日、休み時間に桜の所に言って話したんだけど、謝っても素っ気なくて忙しいからあんまり話せないとか言われちゃって......」
とても悲しそうな表情で俯きながら話す彼女を見て俺は何とかしてあげたいと思った。
少し前までは他人のことなんかどうでもいいと考えていた俺は、いつの間にかごく一部ではあるが他人に対して介入しようと思う事が増えてきた気がする。
「あー、確かに今日うちのクラスに河合さん来てたね。天道と話したと思ったらすぐに天道帰ってきたから何話してるのかなーって思ってた」
「え!見られてたのー?なら声かけてよー!」
隣で急に声が大きくなると驚くのだが、出来るだけ驚いた素振りを見せずに振る舞う。
「いや、人がたくさん居たからさ。それに用があるのは天道であって俺にはないと思ったし」
「そんなことないよー!てか、用がなくても声くらいはかけてもいいでしょー!!」
と、言いながら少し膨れているのだが、これは本気で怒っているわけではないと見てとれる。
「ごめんごめん。で、どうするの?天道と仲直り出来なかったんでしょ?」
一応、謝りながら次の質問をする。
「うんー。だからさ、相棒くんに協力してもらおうと思って!」
「なるほど!って、俺!?ムリムリムリ!あいつ恐らく俺と会話するのが一番可能性低いと思うぞ」
高山くんから相棒くんに呼び方が再び変わった事に残念な気持ちを少し抱きつつ返答した。
「え、そうなの?」
また悲しそうな顔をしているのを見てふと、最近瑞希の悲しそうな表情ばかり見ているような気がした。
「うん。それに協力って何するの?」
一応、内容を聞いてみることにする。
「まずは、それを一緒に考えるの!」
なるほど。この子は自分でどうしたら良いのかわからないから俺に頼っているというわけか。それならば仕方ない。
「わかったよ。協力するよ。ただし、俺が天道と仲直りするのではなくて、あくまでも河合さんと天道の仲直りってことで良いなら」
「うん!わかった!でも相棒くんも仲直りしないとダメだよ?」
協力すると言ったら、すごく嬉しそうにしている瑞希を見て何とか二人の仲を取り戻してあげようと思うのであった。
「まぁ、それはいずれね」
「わかった!じゃあ今日から相棒くんは私の相棒だね!それじゃあ、私こっちだから!今日は本当にありがとうー!!また明日!」
そう言って笑顔で手を振ってかけていく少女を後ろ姿が小さくなるまで見送ってから、自分の家へ帰るのであった。




