第五十七話 一度ある事は二度あるという 果たしてそれは何度目なのだろうか
天道と分担作業となってしまい、これからは一人でしおり制作をしなければいけなくなった俺は不安を抱えながら鞄を持ってパソコン室へ向かう。
向かっている最中に今日は先生に報告しておらず、パソコン室を使うとも言っていない事に気付く。
他のクラスが使っていなければ鍵は開いていないため、職員室に向かわなければならない。
めんどくさいなと思いながらパソコン室の前に着いた。
明かりは点いているようで、扉を開ける。
(ガララ)
簡単に扉は開き中には数人の生徒が居た。
「あっ、相棒くーん!!」
声がする方へ向くと、中にはもちろん声の主である瑞希の姿があった。
「あ、河合さん」
そう言って、手招きをしている瑞希の方へ向かう。
「こんにちは!って、あれ?今日は桜と一緒じゃないの?」
話している最中で、笑顔から不思議そうな顔に変わった。
「こんにちは。いや、それがね......」
俺は瑞希と隣の席に座り、先ほどの天道とのやり取りを伝える。
すると瑞希はーー
「そうなんだ。やっぱ怒ってるのかなー?どうしよう......」
とても不安そうにしているようであった。
「まぁ、そうかもしれないけど俺らの場合は単純にそっちの方が効率が良かっただけかも知れない」
俺は天道が怒っているとも思うが、本当に効率面を考えての判断だと信じていた。
「うーん。そうなのかな」
「そうだよ!それに今あいつ色々と忙しいみたいだし、こうやって毎日残るのも難しいみたいだから分担すると家で出来るし、そういう理由もあるんだろ」
俺は少し笑いながら明るく言ってみせる。
「そっか!そうだよね!考え過ぎだよね!確かに桜は忙しいもんね!なら、相棒くんが代わりに頑張らないとねっ!」
瑞希はすぐに笑顔を取り戻した。
「うん!そういえば、今日は人数が多いね」
「そうだねー。他のクラスのみんなもしおり制作だよー」
「他のクラスもパソコンで作っているのか」
(昨日は居なかった事を踏まえると手書きと両方って所だな。パソコンのみは瑞希のクラスだけか)
そんな事を考えながら早速、パソコンの電源を入れる。
「今日は何するのー?」
「今日は各班の役割表を作ろうかなと」
このパソコン室は一台の机にパソコンが二台と椅子が二脚置いてある。それが通路を挟んで横に机が四台と縦に机が五台ある。
前に先生用のパソコンと席を除くと、合計二十もの机と四十ものパソコンと椅子があるのだ。
そこで一つ疑問に思った事がある。
この前は三島と瑞希が同じ机の隣同士の席で、俺と天道が同じ机の隣の席に座っていた。
瑞希と俺は通路を隔てて隣だったのだが、今日は瑞希が手招きで誘導してきたため誘導された同じ机の隣の席へ座っている。
「あれ、そっちこそ今日は三島は居ないの?」
「今日はねー、なんか用事があるって帰っちゃった......。それに、私だけ少し遅れてるしね」
そう言って悲しそうに笑う彼女にかける言葉が思い浮かばなかった。
そうこうしているうちに、立ち上がったパソコンで早速ログインをして、今度は役割表を作る。
とその時、大変な事に気付く。
なんと、役割表を作るための役割一覧の紙が手元に無いことに気付いた。
そもそも今日は放課後に鑑野先生と話しておらず、鍵だけではなく必要な資料さえももらっていなかったのだ。
その事に気付いた俺は、
「先生から役割一覧の紙を貰うの忘れてたからちょっと取りに行ってくる」
と、隣の瑞希に告げてから立ち上がり、急いでパソコン室を出ようとした。
その時であったーー
(ガララ)
「おっ、高山ここに居たのか!今日は何を作るんだ?」
パソコン室から出ようとした時に、鑑野先生が扉を開けてパソコン室へやってきた。
「あっ、先生!いいところに!今日は各班の役割表を作るので役割一覧の紙を下さい!」
突然言ったところで、必要な資料を持ち合わせていない可能性が高いだろう。
言い終えた直後に気付いたのだが、そんなことも考えずに言ってしまうのが我々子どもの特権なのだ。
と、自分で自分に開き直りの言い訳をしてみる。
「おぅ、そうか!なら、これを渡しておく。あっ、ついでに先生達の担当一覧と現地のチラシも渡しておくから、これからは自分達のペースで好きにやってくれ」
と、言いながらプリントを三枚渡してきた。この先生はいよいよ後は全て人任せにしようとしているらしい。
「あっ、はい......。ありがとうございます」
「では、後はよろしく!天道の事は先生も聞いたから!上手く分担して頑張れよ!鍵だけは無くさないように!」
あの先生お得意の最後に言いたい事を全て言って、こちらの話を聞く前に立ち去るいつもの感じでパソコン室から去っていった。
俺は扉を閉めて自分の席へと戻る。
「すごいタイミングで先生来てくれたね。良かったねー」
「あぁ、そうだな」
瑞希がこちらを向いて笑顔で話しかけてくるので、一つ思い出した心配事を瑞希に聞いてみる。
「そういや、今日は河合さんは作業進んでる?」
瑞希は口を開けたまま沈黙した。




