第五十二話 信じてもらえない時がある そういう時は誤解を解くのか真実を納得させるか どちらにせよ難しい
鑑野先生が教室に入ってきて天道は挨拶をする前にこう言った。
「違います!仲良くなんかしてません!」
少し興奮気味なのだろうか、珍しくムキになっているように思える。
「そうなのか?じゃあ、何をしてたんだ?」
この先生は俺にだけではなく天道にも意地悪な質問をしてきた。
「えっ、それはその......高山くんが変な事を言ってきたので注意していました」
天道は言いにくそうな態度で下を向きながら話した。
それを見て鑑野先生はーー
「高山、お前......。天道に変な事をしたのか!?」
俺はあらぬ疑いをかけられてしまった。
「いやいや、そんなんじゃないですよ!僕がそんなことするはずないじゃないですか!」
冤罪とはこうやって生まれるのかとその時に思った。
「だろうな......。お前がそんなこと出来る器じゃないもんな」
と、鑑野先生に分かってもらえたのだが、何故だか馬鹿にされたように感じ、喜んで良いのか嫌な気持ちなのか複雑な気持ちになった。
「まぁ、いい。とりあえず座ってくれ。早速、しおり制作に入る」
仕切り直してしおり制作に移った。
「今日はどうする?」
その問いに天道はーー
「今日はパソコンを使いたいと思います」
そう答えた。いつの間にか天道はいつもの天道に戻っていた。
「なるほど。今日は何をするんだ?」
またもやいつの間にか天道と先生の二人の会話になっていた。
「とりあえず決まっている座席表を作ろうと思います」
「よしっ、わかった。今日は確か他のクラスがパソコン室を使うと言っていたから部屋は空いてるはずだ。座席表の紙は渡しておくから最後の者はパソコン室の鍵だけ返してくれ」
そう言って先生は立ち上がる。
「では、また何かあったら呼んでくれ!終わったら帰っていいからな!鍵だけよろしくー」
と言い残して教室から去っていった。
「私たちも行きましょうか」
「お、おう」
鞄を取り、天道が教室の電気を消してくれて、二人とも教室を出た。
パソコン室までの行き道は会話がなかった。
やはり先ほどの事を怒っているのだろうか。
少しはや歩きで前を歩く姿が余計にそう思わせる。
「あの......さっきはごめん。冗談だから。馬鹿にしてないから」
俺は先ほど謝る事ができなかったため、一応謝っておくことにした。
「......」
返事はなく、振り返ることもなく先に進む。
俺もその後ろ姿に付いていく。
パソコン室に着き、天道が扉を開けて俺たちは中へ入った。
中からは話し声が聞こえていて、俺たちが扉を開けた時に一瞬、話し声が止んだこの感覚は注目されている時の感覚と似ているため好きにはなれない。
「あっ、桜だぁー!!やっほー!」
俺が扉を閉めているときに女の子の声で元気良く天道に話しかける生徒がいた。
「なんだー。瑞希たちが使ってたのね」
天道の発言によって元気な女の子の正体はわかった。
そうーー元気な女の子とは隣のクラスの委員長の河合瑞希である。
「あっ、相棒くんも居るんだ!久しぶりー!」
一応は俺の事を覚えててくれてたみたいだ。
だが、相変わらず明るく話しかけられることには慣れていないので、
「ひ、久しぶり」
とだけ返して、俺たちは河合瑞希の隣の席に座った。




