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日常系ネガティブワールド  作者: 神楽坂かぐら
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第四十九話  話すのが苦手なのは苦手なことを話すからである

 放課後、しおり制作のために俺と天道の委員長二人と鑑野先生で教室に残って話を進めている最中である。

 突然、採点者から不合格の通知が来たのか及第点の意見に同調していると、追試の知らせが来た。

 手書きとパソコンの両方を組み合わせる事について賛同しただけだったのだが、何故か鑑野先生に具体案を求められているのだ。

「あっ、えーと、それは......」

 やはり天道みたいに咄嗟(とっさ)に言葉が上手く出てこない。

 鑑野先生が真剣な顔でこちらを黙って見ている。

「あの......表紙は手書きの方が良いと思います。内容は座席表などの表はパソコンで作った方が良いと思います」

 一応、おぼつかない言葉ではあったが意見を言うことができた。

「ほぉー、ちなみに表紙が手書きな理由は?」

 さらに追及される。何故、追試の方が難しくなっているのだと思いながら返事をする。

「それは......えっと、表紙は一番みんなが見る所なので、そこを手書きで作る事によって、その手作り感が頑張って作った感と捉えられるというか......」

 自信無さげに考えを主張する。

 目の前の先生は一切、頷きもせずに聞いていた。俺はそんな様子から怒られる覚悟をしていた。

「だってさ。天道はどう思う?」

 先生が天道に話を振る。

「はい。私もそれが良いと思います」

 ーーーん?

 俺の思っていた採点と違っていたため耳を疑う。

「うん、そうだな!私もそれが良いと思う。高山!お前なかなかやるな!見直したぞ!」

 追試を出してきた張本人から合格の発表を聞かされる。

 どうやら、俺の意見は及第点に届いたみたいであった。ひとまずその事に安心をする。

「じゃあ、早速始めたいと思う。表紙から始めるか内容から始めるかどうする?」

 先生の問いかけに天道が返答する。

「手書きの部分はいつでも書き直しが出来ますので、とりあえずは表紙から始めたいと思います」

「よしっ、わかった。とりあえず私は一旦職員室に戻るから、何かあったら呼んでくれ!大体三十分くらいしたら帰ってもいいぞ」

 そう言って先生は席を立ち上がった。

「はい、わかりました。ありがとうございます」

 天道が立ち上がり挨拶をする。

「またパソコンを使う時が来たらその時に言ってくれ。今日は終わったらそのまま帰っていいからな!ペンと紙だけは大事にしてくれ。それじゃあ、よろしく!」

 我らが担任の鑑野先生は、教室から出ていくまでに言いたい事を全て言い終えて去っていった。

 ドアの閉まる音を最後に、教室から音がなくなった。

 放課後の教室に男女二人っきりとなってしまったーー

 隣の席のもう一人の委員長が立ち上がる。

 無言で机を移動し、俺の机に引っ付けた。

 再び椅子に座り、一枚の白紙と何本かの色ペンを取る。

 俺は話しかけて良いのか、話かけるにしてもなんて話しかければ良いのかが分からずに一本のペンを持って、作業に取りかかるふりをしていた。

「先(ま)ずは表紙になんて書く?」

 ようやく天道が口を開いた。さっきまで天道の声を聞いていたはずだったが、久しぶりに天道の声を聞いたように感じた。

「えーと、二年三組遠足。とか?」

 慌てて考えた事を言う。

「そうね。文字はそれくらいの方が良いかもしれないわね」

 賛同してもらえたことにホッとする。

「じゃあ、とりあえず文字を書いてもらえる?」

「えっ、俺が?」

 天道にお願いされて、焦る俺に続けて天道は話す。

「そうよ。字は綺麗な方かしら?」

「いや、綺麗ではないと思う。というか、天道の方が綺麗じゃないか」

 俺は慌てたこともあったのか、普通に天道と話せていた。

「あら?良いのかしら?そうなると、高山くんが絵を描く事になるけれども......」

 それを聞いて、俺はなんと愚かな考えだったのかとすぐに反省をした。

 しおり制作は二人で共同して作るもの。特に表紙は自分でも言ったが一番人に見られる事が多い。その表紙を天道一人に任せるとなると、俺はもはや要らないのではないかと、思われるかもしれない。

 まぁ、クレジットを載せないのでバレないとは思うがそれは人としてどうだろうか。

 天道も俺の事を思って役割分担として文字の依頼をしたのであろう。

 それならば返事は決まっている。

「表紙の文字は俺が書くよ」

 何となく天道の方を向かずに、前を向いて白紙の方を見ながら言ったので、視界には天道が入っていなかったが、恐らく安心したような感じがした。

「そう。ならお願いね」

「はい、わかりました」

 俺は早速、黒のペンを持って自分でイメージした書き方で書こうとした。

 その時であったーー

「昨日はごめんね」

 隣からか細い声でそう聞こえたのであった。

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