第四十八話 気まずい関係 気安い関係
なんとか六時間目のLHRが終わり、しおりの内容が決まった。おまけにバスの座席も無事に?決まったのであった。
そして、俺と天道の委員長二人は早速、放課後にしおり制作に入るため居残りをしている。
鑑野先生が教室に戻って来るまで、席に着いて待っているのだが、お互いが会話することもなくーー
「桜ちゃんまたね!」
「うん。またっ!」
クラスの女子が天道に挨拶をして帰っていく。
二人で教室に残っているのが何故か不思議な気分になった。
最近は、いつも天道の愚痴に付き合わされているため二人で放課後に残る事はよくあることだった。だが、こうして二人で隣同士で堂々と残る事はあまり無かったため、新鮮に思えた。
俺は家でゆっくりするために、今のうちに予習と復習を済ませている。
天道の方はというとーー
何やら考え事をしているようだった。
最後の一人が教室から出て行き扉を閉める音がして、教室に誰も居なくなった時であった。
隣で何やらこそこそし始めたようだ。
視線で気付かれないように、軽く目線だけを隣に移した。
バレないようにしていたため眼球が少し痛くなるくらいに目線を横にしていたので、あまり見えなかったのだが、恐らくノートに何かを書いているようだった。
二人っきりになった所で、特に話すこともなく沈黙のまま鑑野先生を迎える事となった。
(ガララ)
扉を開く音がしたので、顔を上げる。
「お待たせー!二人とも先ほどはご苦労様!二人のおかげで何とか色々決まったよ」
鑑野先生が何枚かの白紙と色ペンを持ってきて俺達に労いの言葉をくれた。
「お疲れ様です!クラスの皆さんのおかげで無事に決める事が出来ました」
よくもまぁ、この天道とかいうもう一人の委員長はできたことを言うものだなぁ。と感心する。
とはいうものの、本当に今日は天道のおかげで無事に決まったと俺も実感している。
最初の挨拶から始まり、言葉遣いや、態度、話す言葉選びと雰囲気。全てにおいて予想以上のまとめ役であったと思っている。
「まぁ、それで早速だが今日から放課後にしおり作成をしてもらう。上手く行けば二週間もかからないだろう」
鑑野先生は俺達の席の前の席に腰かける。
「だが!手抜きは許さんぞ!これには私の......いやっ、みんなの評価がかかっているんだからな!」
一瞬、言いかけた事で大体はわかった。この先生、またもや俺らを自分の評価材料にしているのだろう。
それに、しおり制作で俺らの評価が変わったら学校としてどうなんだ。学問の事で評価をして欲しいのだが......。
そう思ったが、言った所でどうせ作る物は作るんだし、それに手抜きをしたせいでクラスのやつらに何か言われるのも面倒である。
それよりも、第一に手抜きなんて真似はもう一人の委員長が許さないだろう。
「はい、わかりました。良い出来になるように頑張ります」
天道は真剣な表情でそう言った。
「よしっ、良い子だ!高山!お前も頼むぞ?」
正直、この状況で俺に振らないで欲しい。
どう考えても選択肢が一つしかないのに問いかけられると返答は決まってこうである。
「はい」
俺の返事を聞いて鑑野先生は持っていた白紙と色ペンを俺の机の上に置いた。
「それでだ!しおり制作にあたって先ず聞いておきたい事があるんだが、手書きとパソコンを使って制作のどちらが良い?」
なるほど。この先生も少しは考えてきているようだ。確かに、手書きの方法とパソコンを使った方法の二通りがある。
先ずはそこから決めるのが一番得策だろう。
「そうですね。私はどちらでも構いませんが、両方組み合わせた方が作業効率的にもクオリティ的にも良いものになるかなと思います」
天道の意見はいつも及第点以上をいっている気がする。この返答も先生から聞かれて瞬時にできる返答としては、採点者によっては及第点どころか満点であっても良いくらいだ。
それくらい天道の意見に賛成であった。
「なるほどな。高山はどう思う?」
俺は言うべき事を天道が既に言ってくれた、そんな思いで返事をする。
「はい、僕もそれが良いと思います」
「本当にそう思ってるか?」
鑑野先生が念押しに聞いてきた。
「思っています!」
言葉は少ないが確かに思っている事なので、自信満々に言う。
「じゃあ、どこが手書きでどこがパソコンが良いのか聞かせてくれ」
この先生はこうしていつも意地悪をして、俺を困らせてくるのだ。




