第四十六話 仲直り 開き直り
しおりの内容決めが思った以上にスムーズに進み、早く終わった事で多少時間が余っていることに気付く。
今日は早めに終われるなと思った時であったーー
「それでは、次はバスの座席決めを行う!」
鑑野先生がそう言うとクラスがまた騒がしくなる。
「やったぁー!!」
「待ってましたー!」
「隣になろうねー」
「お前と隣だけは嫌!」
「うっせー!俺も嫌だわ」
色んな言葉が聞こえる。だが、これで終わりだと思っていた俺は不安に駆られていた。
もう一人の委員長がしおりの内容決めの時に『バスの座席表』と言った時、思い出したのだがこの学校の毎年五月に行われるバーベキューでは河原に行くまではバス移動なのであった。
去年は違う班になったので、バスの座席くらいはということで加藤に誘われて隣の席になったのだ。
同じく余り者の澤田とはその頃はまだ話もしたことがなかったため、あいつはどうしていたのだろうか分からない。
今年は俺はどうすれば良いのだろうかも分からない。
「で、早速座席決めを行いたい所だが、もうめんどくさいし班ごとで良いだろ」
鑑野先生がそう言うと、すぐにクラスの皆が反応する。
「えぇー!ちょっと、好きな人と隣になれないの?」
「先生ちょっと適当過ぎー!」
少し笑いながらではあるが、不満を垂れている人が見受けられる。
「好きな人......?お前ら好きな人と班になったのではないのか?」
鑑野先生が少し意地悪な様子でそう言う。
「え、まぁ、それは......そうだけど」
「確かに。好きな人と班になったんだからその班で座席近くになるのは当たり前かも」
「そうだね!ほんとだ!てか、その好きな人が同じ班だもんね!」
鑑野先生の返答を受けて、女子達が考え直し納得する。
「ならそれで良いな?」
「はい!」
先生の問いかけに生徒達は思ったよりも素直に返事をする。
「では、班ごとで座席を決めて提出してくれ」
そう言うと、また窓際に置いた椅子に腰かける。
クラス皆が立ち上がり、班ごとで集まり始めた。
最悪であるーー
班の中でハズレが一人居る。その状況でハズレを引いてしまったら誰もが嫌な気持ちになるだろう。
それはわかる。わかるのだが......。
嫌な気持ちになられる事で嫌な気持ちになる人も居るのだ。
だが、いずれはこの時が来るだろうし、また当日に好きな座席に座るという事になっても、当日嫌がられるわけでーー
頼みの加藤とは絶賛喧嘩中であって、そうなると宇治島か。
宇治島とは俺がひどい事を言った後にも一度休みの日に偶然会って話をしている。
その時は全然平気な感じであった。
かといって、それからは話すことはなかった。宇治島に隣になってもらうか、宇治島なら俺と隣でも不満は言わないのではないかーー
そう思っているうちに、俺の中で宇治島は優しい人だと認識していることに気がついた。
それと、あの時の宇治島の『仲間外れになんかしていない』という言葉が妙に引っ掛かっていた。
去年の遠足で俺を仲間外れにした宇治島。もしかしたら俺の勘違いだったのかもしれない。
となると色々と合点がいく。去年仲間外れにしたやつを今年同じ班に誘うとは思えない。
何はともあれ先ずは宇治島と話して真実を聞くしかない。
そう思い、宇治島と隣になろうと決意し自分の班の所へ向かおうとする。
がーー既に集まっていた。
みんな隣の天道の席の近くに集まっていたのであった。
勢い良く立ち上がった俺は勢い良く座った。
「何してんの?」
同じ班の男子に言われて少し恥ずかしくなった。
「とりあえず座席なんだけど、誰と隣になりたいとかってある?」
宇治島が皆に問いかける。
「私は別に誰とでも構わないわ」
天道が笑顔で返答する。
「俺も別に誰とでも良いけど」
加藤も続けて返答する。
「うーん、どうしようかぁ......」
宇治島が少し困ったような表情で考えている。
もしや、こういう場合は誰とでも良いというのが一番困ってしまうのではないか。
よく『ご飯何が食べたい?』に対して『何でもいい』や、
『どこ行きたい?』に対して『どこでもいい』等と選択肢を増やして相手に負担をかけないようにしているつもりが、実は負担になっている事があると聞く。
今回の場合も、選択肢を増やすのではなくて選択肢を絞っていく事こそが相手の負担を減らせるのではないか。そう思い勇気を振り絞って俺は意見した。
「俺は......宇治島と隣がいい」
班の皆は黙った。




