第四十五話 景色は変わっていく 自分も変わっていく
現在、六時間目のLHR。
委員長二人でしおりの内容を決めている。
現状、大まかな構成は決まった。
とても順調である。
ただ一つを除いてーー
そう、何を隠そう俺は一言も喋っていないのである。
いや、それは全然良いのだが、むしろ喋りたくないくらいなのだが、そうなるともう一人の委員長にも呆れられるだろうし、何よりクラスの皆が今度はそれを理由に何か言ってくるかもしれない。
(せめて、役に立たなくては......)
そう思い、黒板の方を向いて白いチョークを手に取った。
視界の隅っこで、黒板の方を向いたもう一人の委員長が一瞬立ち止まり何かを判断して、くるりと再び黒板に背を向けて皆の方へ向き直した。
「えー、それでは内容ですが、これも去年の私のクラスの内容を参考に書いていきます」
ついに来た。本日初めての俺の出番である。
「日時、集合場所、集合時間、現地の場所」
もう一人の委員長が言った事を、黒板に書き写す。少し緊張するが、手を動かして黒板に文字を書き始めてみると案外すぐに緊張が解けていった。
「持ち物。当日スケジュール。各班ごとの役割表。バスの座席表。先生方の担当表。緊急連絡先。現地の簡易的な地図」
書いていて思った。声の聞こえ方で何となくわかったが、恐らく俺の方をたまに見て俺の書くスピードに合わせてくれているのだろう。
一度書き間違いをしてしまい、黒板消しで文字を消す動作もあったのだが、書きやすい速さで言ってくれたので、その後も焦ることなく無事に書くことができた。
「だいたいはこんなものかしら。後、何か書いて欲しい事や、書きたい事、逆にこれは書かなくても良い等の意見がありましたら、どうぞご意見下さい」
優しい丁寧な話し方で、この人に協力したいとそう思える気がした。
「完璧じゃん!もうこれで決定でしょー!」
「うんうん!あっ、でも地図にトイレの場所は書いて欲しい!」
「俺は緊急連絡先に天道さんの連絡先を書いて欲しい!」
「ばか!お前。そんな事したらみんな天道さんに連絡するだろが!」
「あっ、そうなるのか!じゃあ今のなしで!」
「あはは。もう男子ってバカばっか!」
クラスの男女が笑いながら話す様は先週のそれとは大違いであり、俺自身も見ていて不思議とホッとした。
「では、この内容で決めさせて頂きます。地図の件はわかりました。その他の重要な場所にも分かりやすい様にしておきます」
皆の意見を聞いた上でしおりの内容が決まった。
そして、もう一人の委員長はこう続けた。
「緊急連絡先の件は......申し訳ありませんが、担当の先生がいらっしゃいますので、私では対応できかねます」
少し申し訳なさそうな笑顔でそう言う彼女を見て、クラスの生徒はーー
「ですよねー」
「お前、振られてんじゃん!」
「もうー、男子たち!桜ちゃんを困らせちゃダメだよ!」
「天道さんごめんねー!バカ男子達の事は放っておいていいからねー!」
ふざけた男子が女子に怒られるこの展開は小学生の時から変わらないのだろうか。
俺はクラス皆が子どもの様に思えた。
「あはは。いいですよ。私も少し面白かったですし」
天道がそう言うと、
「嘘っ!?面白かった?やったぜ!俺面白いって!」
「ばか!お世辞に決まってんでしょ!」
また男子が女子に怒られるお決まりのパターンが始まった。
「それでは、この内容で私達委員長二人でしおりを作らせて頂きますので、皆さまは完成を楽しみにしていて下さい。本日はご協力ありがとうございました」
そう言って、深々とお辞儀をするもう一人の委員長を見て、遅れながらもお辞儀をする事に少し慣れてきている自分が居た。
「委員長!ご苦労様!二人とも席に戻っていいぞ」
そう言って鑑野先生が黒板の前に来たので、俺らは自分の席に戻った。




