第四十四話 悪夢再び 希望一度(ひとたび)
ついにこの時がやって来たーー
俺はもう覚悟は出来ていたが、不安で堪らなかった。
また失敗したらどうしよう。
また晒し者にされたらどうしよう。
そんなことばかり考えていたので、肝心な話す内容を考えていない。
心のどこかで、天道がやってくれるだろうという気持ちがあった。
だが、その天道とは今日一日話をしていない。
そのせいで余計に不安となっているのだ。
(キンコーンカンコーン)
六時間のチャイムが鳴る。
ドアが開き、鑑野先生が入ってくる。
「よぉーし、では早速LHRを始める!」
俺は自分で鼓動が速くなっていることに気付く。
「えぇー、今日は先週決まらなかったしおりの内容を決める!」
速くなっている鼓動がさらに速くなっている事で、自分がとても緊張しているのだと認識する。
「そんなのなんでもいいよー」
「しおりなんか何でも一緒っしょ!」
クラスの男女が野次を飛ばす。
もう俺はこの時点で、終わったと思ったーー
「うるさい!!」
一緒でクラス全体が静寂に包まれた。
俺もドキっとしてしまい、前を向くとそこには今まで見たこともない表情の鑑野先生が居た。
今までの怖くてもどこか優しさが残っている、そんな顔ではなかった。
流石に、ふざけていた生徒もびっくりして真剣な表情で静かになっていた。
「こほん......えぇー、失礼。気を取り直して、しおりの内容決めを行う。それでは、委員長。後はよろしく」
そう言うと、教室の前の窓際に椅子を持って行き、座って俺らの方を見る。
静かになり過ぎて気まずいというクラスみんなの雰囲気を差し置いて、俺は逆に野次の入りにくいこの環境をとてもありがたく思うのであった。
先に天道が立ち上がり前へ移動する。俺も慌てて後を追うように立ち上がり前へ移動する。
前まで行き、黒板を背にクラスの皆の方へ振り返ると、やはり緊張はするのだが、隣のもう一人の委員長が居るだけで、先週とは桁違いな安心感のようなものがあった。
「えぇー、みなさん。委員長の天道桜です。本日はLHRの時間を使ってしおりの内容を決める事になりました。みなさんのお力をぜひお借りしたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します」
そう言って、隣で深々とお辞儀をするもう一人の委員長を見て、俺は急いでお辞儀をする。
「よろしくお願いします」
クラスの半分以上が小声ではあるが、挨拶を返していた。
「それでは早速ですが、去年の私のクラスのしおりの内容を基に、基本的な事を書いていきます」
そう言って、もう一人の委員長は黒板の方を向いて白いチョークを手に取り、箇条書きで内容を書いていった。
『表紙、目次、内容、メモ』
「先ずは、大きく分けてこの四つだと思いますが、他に何かありますか?」
黒板を背に皆の方を向いてそう問いかける。
「俺らもこんな感じだったー!」
「えー、私の所はメモなんて無かったなー」
「うちらは最後にクレジット?みたいな製作陣の名前が書いてあったよ!」
「なにそれー!なんかかっこいい!」
天道のおかげで、先ほどの緊迫していた気まずい雰囲気が解れたようであった。
「クレジットですね。クレジットと言っても今回は委員長二人で作るので、面白くないものになりますが、それでもよろしいですか?」
確かに、何人かで協力して作成する場合だと、まだ誰が何をしたとかの話をしおり配布した時にでも楽しめるだろう。
だが二人で作った場合、それは二人で制作した又はどちらかが担当したに限る。
至って面白いとは言えないだろう。
「そっか。うーん、じゃあ無くてもいいかな」
「はい、わかりました。ご意見ありがとうございました。では、次に内容決めに入りたいと思います」
こうして、もう一人の委員長と先週の面影が全く感じられないクラス皆のおかげで、スムーズに進行することができ、内容決めに入った。




