第四十二話 待ち人来ず 待ち人おとずれなし
何とか気がかりだった体育も終わり、いよいよ弁当の時間だ。
教室へ戻った生徒達から順に食事を始めるのだが、大抵のやつは会話に勤しんでいるため弁当を食べ始めるのが遅い。
俺は会話をする事がないので、いち早く自分の席で弁当を堪能する。
弁当箱を取り出すと、見慣れた紙切れが入っていて見慣れた字で『放課後残ってて』と、見慣れた言葉が書いてあった。
そして、弁当箱を開くのである。
俺は喜びに満ちていた。
なんと、そこにはいつもよりも唐揚げが一つ多く入っていたのである。
それだけで、先ほどの先生とペアで打ち合いをしたあの忌々しい過去を忘れる事が出来た。
弁当を綺麗に食べ終わり、復習の時間に充てる。
そうして、午後の授業も終わり放課後のチャイムか鳴る。
俺は教室に出ていくのもめんどくさかったので教室で復習をしていた。
少ししてから隣の席の天道が椅子から立ち上がり、鞄を持って教室を後にした。
俺は少し戸惑ったが、今日は天道が席を外してくれたのだなと思った。
そこでもう一つ思ったのが、昨日の天道からすれば俺がいきなり鞄を持って教室を出て行ったのは、やはり戸惑っただろうな。と、少し反省をした。
『じゃあね』の挨拶を何度聞いただろうか、ふと辺りを見回すと既に教室には誰も居なかった。
一通り、復習を終えた俺は明日の予習をするか読書に充てるか迷った挙げ句、もうそろそろ天道も来るだろうと思い、今朝のことを振り返っていた。
改めて思うと、天道が朝登校してきた俺に対して『おはよう』と挨拶をしてきたことは本当に驚いた。
それと同時に、公衆の面前で俺に対してあんな笑顔を向けられるとは思ってもみなかった。
当然、周りはさぞ驚いた事であろう。
だが......よくよく考えると、同じ委員長なのだから挨拶くらいして当たり前なんだよな。と、我に返る。
それと、挨拶をされるという事は案外良いものだなと思ったのであった。
俺は挨拶について少し考え直すことにした。
そうこうしている内に、日は沈んでいった。
ーー教室には俺一人。
ん?どうしてだ?
待てど暮らせど天道どころか誰一人現れない。足音すらも聞こえない。
これは、おかしいと思い、流石に心配になったので、俺は机の上に鞄を置いて少し辺りを探すことにした。
他のクラスを覗いてみたが、どの教室にも天道の姿が見当たらずーー
もしかして帰ったのではないかと心配になり、それを確かめるために下駄箱へ行く。
下駄箱に着き、恐る恐る天道の所を見る。
そこにはなんと、綺麗な上履きが綺麗に収められていた。
ということはーー
そう。何を隠そう天道は鞄を持って靴を履いて学校を出て外に居るということである。
平たく言うと、天道桜は帰宅したのであった。
めでたしめでたしーー




