第四十一話 積雪の冬 雪解けの春
昨日は、あれから家に帰りいつも通り過ごした。今日の目覚めもなかなか良く、いつもと変わらず登校する。
週の半ばということ以外は懸念材料が無い日というのもまた珍しい気がした。
授業もテストまではまだ期間があるし、特に手を焼く恐れもない。
唯一、四時間目の体育だけは乗り気ではないがなんとかなるだろう。
学校に着き、いつも通りに教室へ向かう。
チャイムが鳴る少し前に着いたので、ほとんどの人は登校しているようだった。
俺はいつも通りに教室へ入り、自分の席へと向かう。
机に荷物を置き、椅子を引いて席に座る。
と、その時だったーー
「おはよう」
どこからともなく優しい女の子の声で朝の挨拶の定番である四文字の言葉が聞こえてきた。
いつもなら俺に向けて言った言葉ではないと思えるのだが、何せ俺が登校してきて着席した途端に聞こえた言葉であるため気になる。
そして、何よりも気になる点というのがーー
そう、隣から聞こえたという事である。
俺の席の隣に座っている人物というのは、何を隠そうクラスの人気者であり、最近では俺のことをノートにしている天道桜である。
もし、俺に向けた挨拶となると無視してはいけないので、ここは勘違いして振り向いたと思われるリスクを捨てて、恐る恐る隣に目線を移す。
するとーー
天道が俺の方を笑顔で見つめていた。
「おはよう」
天道が口を開き、俺と目が合ったまま笑顔でそう言ったのを確認する。
「あっ、おはよう......」
俺がそう言うと、天道は先ほどまで話してたであろう近くに居た女子の方に向き直して話を再開した。
「今の見た?」
「えっ、今天道さんが高山に挨拶した......?」
「えっ、なになにー?」
「マジかよ。どうなってんだ......?」
クラスの半分程になるのかならないのか、そんな噂をし始めた。
正直、俺も驚いている。まさか、あんな公の場で天道が俺に話しかけてくるなんて......。
まぁ、話しかけるといってもただの挨拶なのだが。
そんなプチ騒動があった朝だったが、それ以外は難なく過ぎていき、憂鬱な体育の時間がやって来た。
これを乗り越えたら弁当の時間である。体育のある日は大好物の唐揚げを入れてくれている母親のおかげで俺はここまで元気に育つ事が出来た。
今日も元気に育つため、とりあえずこの体育を乗り切ろう。
そう思った矢先のことであったーー
その日の体育はテニスであった。打ち合いをするため二人一組という独り者には拷問といえる仕組みで始まる。
今年はあいにく、去年ずっとペアを組んでいたお互い余り者だった澤田が居ない。
となると、加藤しか居ないのだがあいつは他のやつと組むだろう。
そう思い加藤の方を見ると、加藤も俺の方を見ていた。
目が合ったのだが、加藤は気まずそうに目線を反らす。
俺も釣られて目を反らしたのだが、そこで思い出す。
加藤とは喧嘩をしたっきり、あれから一度も話をしていない。かといって、俺から話すのも気が重い。
これから俺らはどうなるのだろうーー
そんなことを考えていた。
ペアが決まり、打ち合いが始まった。
俺はもちろん先生とペアになりました。




