第三十七話 こうして人は大人になる こうして大人は人になる
声のする方に体を向けると、天道が少し怒ったような表情で立っていた。
「あっ、天道......」
少し驚いてしまい、口から言葉が出なかった。
「どこに行ってたのかしら?」
「ちょっと屋上に......」
「どうして屋上なんかに行ってたの?」
「いや、教室で待ってるとまた天道と二人で残っていると思われるかも知れないからさ」
少し自信が無い発言を笑ってごまかしながら言う。
「ふ~ん、私と二人で残ってるって思われるのがそんなに嫌なんだ~」
天道はさらに不機嫌な表情を浮かべる。
「いや、あのそういう訳じゃなくて......」
「ならっ、一緒だねっ!」
急に天道がとても可愛らしい笑顔と明るい声を俺に向ける。
「えっ、あっ、うん。一緒......?」
突然の出来事に驚き、間抜けな返事をする。
「うんっ!一緒だよ?」
俺はどこが一緒なのか分からずに、
「何が一緒なの?」と、質問してみた。
「だってぇ~。私もあなたと~」
そう言った直後、可愛らしい表情と明るい声が急に冷たい表情と声に変わる。
「一緒に居るって絶対に思われたくないから」
目の前には先ほどとは別人のような冷たい不機嫌な女の子がいる。
そう。何を隠そうこのギャップがいいのだ。
いわゆるギャップ萌えというやつだ。
俺は一瞬で心をえぐられてしまい、立ち直れそうにはなかった。
ギャップ燃え......恐るべし。
萌えではなく燃やされてしまった気持ちであった。
うなだれている俺を見て天道は、
「いいから、とりあえず席に座りましょ」
と、自分の席に座った。続けて俺も自分の席に座った。
「じゃあ、今日からノートになってくれるあなたにこのノートを渡します」
天道は俺に例のノートであろう表紙に『日常ノート』と書かれたノートを手渡す。
「え、これ俺に?いらないよ」
せっかくくれたものだが、こんな物騒な物を俺は受け取る勇気がない。
「はぁ?誰があんたにあげるって言ったのよ。読んでって言ってるのよ」
またもや怒らせてしまったようだが、今回に至っては普通に読めと言えば良いじゃないか。
と、内心思うが内心だけに留めておく。
「あっ、はい。わかりました。えー、どこを読めば......?」
どのページを読めば良いのか分からずに天道に聞いてみる。
「全部よ!全部」
「えっ?」
天道は俺にさも当たり前かのようにこの負の遺産を全ページ読破しろと言っているみたいだ。
「でも、今日は一ページでいいわ」
俺はその言葉にホッとする。
続けて天道は不敵な笑みを浮かべて俺にこう言った。
「じゃあ、そうね......とりあえず、ノートを閉じてもらいましょうか」




