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日常系ネガティブワールド  作者: 神楽坂かぐら
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第二十九話 為せばなるが為すすべなし  為すすべなしだが為せばなる

 小鳥が囀(さえ)ずり、その声を聞きながらやがて意識がハッキリとしてくる。

 どれくらい経ったのだろうか。ふと目が覚めると、いつも俺に嫌がらせをしてくる時計は今日は大人しく俺を見守ってくれている。

 時刻は午前をもうすぐ終わろうとしていた。

 俺はその時計を見ても焦ることはなく、それどころかもう一度目蓋の裏側を見ようとすら考えていた。

 そう、今日は待ちに待った土曜日。

 のはずだったがーー

『私のノートになって』

 昨日の放課後の出来事が頭から離れずに、気が重いまま休みに入ってしまった。

 というわけで、昨夜はなかなか眠れずに朝方を迎える頃に眠ったわけだ。

 そのせいか、昼まで寝てもまだ眠い。

 が、流石にそろそろ昼ご飯の時間だ。

 お腹も空いてるみたいなので、部屋を出て顔を洗う。

 リビングへ行くとそこには誰も居なかった。

 というか、家の中にはどうやら俺一人のようだ。

『温めて食べてね』と、書いてある朝食らしきものがあるので、とりあえずそれを電子レンジで温めることにした。

 その間に昨日の事を考えていた。

 ーー昨日は、あれから訳も分からず返事を出来ずにいた。

 すると彼女は、

「なってくれるよね......?」と、女の子の武器を最大限に使ったような可愛らしいお願いをしてきたので、

「はい......」と、返事をしてしまったのだ。

 彼女は嬉しそうに、

「ありがと。この事は皆に内緒ね。じゃあ、また月曜日」

 と、静かに去っていった。

取り残された俺は、しばらく教室で一人立ち尽くしていた。

 その後、家に帰ったのだが帰り道の記憶がない。

 結局、昨日というか今日の明け方の眠りにつくまでの間、ずっとそのことを考えていたのだ。

『ノートになって』って、どういう意味だ?

 もちろん明け方まで考えた結果、解なしとなった。

 俺の人生では、一度もノートになったことはないし、なったやつも見たことがない。

 となると、何かの暗号か?それとも流行り言葉なのか?

 という段階で、考えるのを辞めた事を思い出す。

 分からない事を考えて時間を無駄に使うのが馬鹿馬鹿しくなったので、今日一日はこの事はとりあえず、考えないようにしようと思った。

 電子レンジがお待たせと言わんばかりの合図を鳴らす。取り出して、ようやく遅めの朝食なのか早めの昼食なのかは分からないが食事を始める。

 殺風景な食事だと色々と考えてしまうため、気を紛らわせるためにリモコンでテレビをつける。

 急に映ったテレビには、占いのコーナーらしく運勢を発表している所だった。

「A型の人は~!第一位!新たな出会いがあるかも。ラッキーアイテムは、『ノート』!!」

 正直、血液型占いなんて信じてはいなかったが順位とラッキーという部分以外は何かと当たってる気がした。

 (第四位のアンラッキーアイテムがノートだろ)

 と、心の中で呟く。

 そうして、また昨日の事を考え出す。

 考えないためにテレビをつけたのに、そのテレビのせいで考えてしまい、もどかしくなったので結局、テレビを消すことにした。

 食事を終え、食器を片付けている所で玄関の扉が開く音がした。

「ただいまー」

 母親が帰ってきたようだ。

 リビングに入ってくると俺の姿を見て、

「あらっ、やっと起きたのね」

 と、買い物袋をテーブルの上に置きながら言う。

「あっ、うん。あと、ご飯食べたから」

「あら、そう。そういえば、今日はお父さんが早く帰って来るから晩御飯は皆でお鍋にしようと思うの」

 ご飯を食べた直後にご飯の話をされると、あまり気が進まないのだが、とりあえず返事をする。

「そう。まぁ、春でもまだ寒いからなぁ」

「そうなのよ!さっき買い物に行ってたんだけど、今日は風が少し冷たくてね」

 今日は一歩も外に出てないから、外の情報は全く分からなかったがどうやら外は寒いらしい。まぁ、今日は一歩も外に出ないのだが。

「そうなんだ。まぁ俺は今日は出掛けないから部屋でゆっくりしながら、課題でもしておくよ」

「そうなの?まぁ、今週は久しぶりの学校だったから疲れたでしょ。ゆっくりしなさい」

 そう言ってジュースをくれた。

「ありがと!じゃあ部屋に戻るから」

「はーい」

 母親からもらったジュースを片手に部屋に戻る。

 そうして、夕飯までの時間は昨日出来なかった復習と課題と次の授業の予習も含めて勉強をしていたが、意外にも結構捗(はかど)った。

 夕飯までにまだ時間がある位には早く終わり、月曜日の準備をして時間まで暇潰しにラジオをつけた。

「続いてのコーナーはお悩み相談コーナーです!」

 (お悩み相談かぁ......。俺も昨日のことを相談したいくらいだ)

 また昨日の事が頭によぎったが、すぐに考えを辞めた。

「今回のお便りはこちら!ペンネームお嬢様さん」

 (様にさんなんてつけるなよ)と、一人で呟く。

「最近、嫌なことばかりあってストレスが溜まる事が多いのですが、どうすれば良いでしょうか?またオススメのストレス発散方法はありますか?」

 (んなもん自分で考えろ)

「とのことですが、どうですか?」

 と、もう一人のパーソナリティーに話を振っている所で母親が呼んでいる声がした。

 どうやら夕食が出来たようだ。

「えー、そうですね。身近な人に相談役を置くとか?愚痴係みたいな!」

「あー、それいいですね。やはり人に聞いてもらうってのはストレス発散になりますよね」

 と、二人のやり取りを少しだけ聞いてラジオを消す。

 (何が愚痴係だよ。愚痴られた方はストレス溜まるじゃねぇーかよ)と、心の中で思いながら部屋を出てリビングに向かう。

 既に父親と母親と夏海は椅子に座っていた。

 俺も席に座り、食事を始める。

「いただきます!」

 家族全員で挨拶をして、高山家の晩御飯が今始まった。

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