第二十七話 真実を信じるのか 信じるから真実なのか
その日は、先生以外の誰とも会話をせずに一日が終わろうとしていた。
「昨日......うち、来たでしょ?」
唐突に発せられたその言葉は、二人しか居ない空間なのに一瞬誰に向けて言ったのかが分からずに、宙をさまよった。
一緒にさまよった意識を何とか呼び戻して、咄嗟に返事をする。
「え、あ、はい......」
やはり、しどろもどろになってしまった。
まさか天道から話しかけられると思ってもみなかったので、俺の心臓は急いで全身に血液を送っているようだ。
「一昨日の話......誰かに話した?」
きた。早速、一昨日の話がきた。
「え、いや、話してないです」
「本当?」
「はい。話す相手が居ないです」
これはあくまでも真実であるため、すんなりと返答ができた。
天道も納得したのか、それ以上問いただして来なかったのが、少しショックであった。
「この前の事なんだけど......ごめんね」
どういうわけか天道が謝ってきた。
思いがけない出来事に、焦るが自然に受け答えをしようと謝罪を受け入れることにした。
「え、あ、あー、まぁいいよ」
俺は謝罪された事で立場が少し有利になったと思い少し余裕をみせる。
「ノートの中、本当に見てないんだよね......?」
恐る恐る聞いてくる様は本当に可愛らしい女の子のようで、守ってあげたい気持ちになる。
「うん!だいたい人の日常なんて興味ないし」
「なんで日記ってわかったの?」
その問いかけに一瞬怯むが、冷静に受け答えをする。
「だって、表紙に日常ノートって書いてあったからさ」
「それだけ......?」
彼女の問い方が完全に疑っている人の問いかけだ。
「あと、一ページ開いたら綺麗な文字でその日の事が書かれてたから」
一問一答のように丁寧に返していく。
「他のページは?」
「見てない。日記だとわかったからあまり見てはいけないかなと思ってすぐ閉じたよ」
「それで?」
「それで、持ち主を探すためにひとまず鞄の中に入れたんだ」
なんだか取り調べを受けているような気分になった。
「それで、一昨日に繋がるってわけね」
「うん、そう!」
これで、信じてくれたかな?どうやら、今日の無視も皆が居る所で、この話をされたくなかったからの無視だったのかな。
そう思うと、とても気が楽になった。
「そういうことね。わかったわ」
ようやく分かってくれたようだ。
これで、本当に解決というわけだ。逆に今回の事で少し話す事が出来たから今後、天道とは案外良い関係を築けるかもしれない。
そう思えたのだったがーー
「嘘つき」
彼女はまたもや聞き覚えのある言葉を口にした。
心のどこかで俺は彼女がまだ俺の事を信じきれてないように思っていたのか、前に一度同じ展開があったからなのか、そこまで驚くことはなかった。
「なんで?」
平然を装い質問する。
「本当は見たくせに」
真剣な表情でうつむき加減でこちらを見てくる。
「だから、見てないってば!天道さんもさっきわかったって言ってたじゃん」
「あなたが嘘つきって言うことがわかったわ」
「じゃあ、どこが嘘つきなのか言ってよ!」
流石に嘘つきと言われるだけで、こっちがいくら弁明しても取り合ってくれないため、半ば逆ギレ状態になってしまった。
「綺麗な文字」
彼女は落ち着いた様子で俺にそう言った。




