第二十六話 開いた口が塞がらない 閉じた口が開かない
「はい、なんでしょう?」
天道に聞き返され、真剣な表情で話す。
「来月頭の連休にな、ボランティア行事があって、それに委員長二人は参加してもらおうと思ってな」
ボランティア行事......?来月の連休......?
要するにそれって、五月のGWにタダ働きしろってこと?
嫌だ。絶対嫌だ。
「ボランティア行事と言いますと......具体的にはどのような?」
子どもが駄々をこねるような感情になっている俺を置いておいて天道は話を進める。
「ゴミ拾いだ。まぁ、そんな難しいもんでもないだろう」
(ゴミ拾いなんてゴミを捨てたやつに拾わせろよ)
「嫌だったらいいぞ。別に強制ではないから断っても構わんからな」
(よし、なら断ろう。なんだ、行かなくても良いのか)
「いいえ、参加します」
(ん?)
天道の返答に驚いた。まさか彼女が参加するとはーー
「あっ、そうか。悪いな。なら天道は参加ということで。で、高山はどうなんだ?」
「はいぃ!」
当然、俺の意見も聞かれることは分かってはいたが、天道が参加することに驚いてしまい、用意していた不参加の返事が出来なかった。
「えーっと、参加します......」
ここで、俺が不参加とか言い出したら、いよいよ天道に嫌われるだろうと思ってしまい、不本意ながら参加の表明をしてしまった。
「よし、二人とも参加だな。わかった!また後日、内容についてチラシが配られるからその時に具体的な話をする」
「はい、わかりました」
「とりあえず、今日の話はこれでおしまい。お前らありがとうな。じゃあ気をつけて!」
と、先生が別れを告げるなり天道は、
「はい、では失礼します」
と、言って職員室を後にした。
俺も後を追うように、
「失礼します」
と、さよならの挨拶をして職員室を去る。
廊下の少し先を歩く天道。
辺りは閑散としている。
天道の足音がしっかりとこちらまで聞こえてくる。
俺の足音も聞こえているのだろうかーー
と、僅かばかりの期待をしてみたが、そもそも前を向いている天道は後ろの足音が俺かどうか分かるわけがない。
せめて、存在だけは認めて欲しいと、最初は嫌われなければ良いと言っていた欲求がどんどん下回っていた。
天道は教室に入り、姿が見えなくなった。
俺もその後に教室に入るが、その空間には天道以外誰も居なかった。
放課後の教室に男女が二人っきり。
このシチュエーションはどこかで見たことがあるぞ。
先週読んだ漫画かな?否ーー
一昨日のノート事件が起きた掃除の日だ。
天道は、自分の机の上の鞄を開いて何やらゴソゴソしている。
俺も自分の席に行き、挨拶をして帰ろうと思ったが、どうせ無視されるし、挨拶をしなかったら余計に嫌われるかもしれない。
なので俺は教室に残り、天道が先に帰るようにして、俺が挨拶をしなかったと思われないようにし、こちらのリスクを最小限に抑えることにした。
とりあえず、席に座り机の中を探すふりをして時間を稼ぐ。
これほどまでに静かで会話がないと、逆に意識してしまう。
天道の鞄のファスナーが閉まる音がした。
これで、天道は帰るだろう。
とりあえず、今日はもういいや。今週はもういいや。色んな事がありすぎて疲れた。
考えるのもしんどいから明日以降考えよう。
俺も帰る心構えをする。
椅子が動き天道が立ち上がり、鞄を持って教室を出ようとする。
天道の無視も来週くらいになったら、終わってるかもしれない。それこそ、しおり決めや制作になったら嫌でも会話をしなければいけない。
別に焦ることなかったんだ。
そう思い、やっと帰れる嬉しさと相まって安堵した。
と、思ったその瞬間ーー
「昨日......うち、来たでしょ?」
その繊細で綺麗な声に俺は耳を疑った。




