第二十一話 知らぬが仏 知れば人
俺は今、いつもの帰り道とは違う道を歩いている。
寄り道をしてるかって?まぁ、寄り道と言えば寄り道なのだろうが、寄り道と言えば友達や恋人とどっかに行ったり、公園で話したり、ファストフード店に行ったりーー
もちろん、俺はそれらには当てはまらない。
むしろ、そんな寄り道を俺は知らない。
小学生の頃の帰り道に公園に寄って遊んだ事はあるが、あれが寄り道なのかは知らない。
そして、今日寄り道しているのも寄り道とは呼べないだろう。
何故なら、目的があって目的地が決まっているからだーー
俺は鑑野先生に頼まれて本日の欠席者の天道桜にプリントを届けるという役目を担った。
それで今、先生にもらった地図を頼りに天道の家へと向かっているのだ。
(えーっと、ここを曲がって......ここら辺か)
地図に印されている目的地付近に着くと、一際でかい建造物が目に入る。
その建造物は、周辺に建っている家が何件か収まる程の敷地に確かな存在感で建っていた。
どうやら人が住む家のようで門の前を通ると、表札らしきものがあった。
その表札を見てみるとーー
『天道』
と、大きく書かれていた。
まさかとは、思っていたがこれほどまでとは......。
無事に着いたのは良いのだが、さてこれを渡すためにはまずインターホンを押さなくてはならない。
プリントを手に取り見つめながらため息を漏らす。
こうも大きい家だと本人が出る可能性は少ない。ましてや、体調不良だとすると本人は出ないだろう。
母親が出る可能性が一番高いのだが、なんて言えば良いのか。
何故、俺みたいなやつが持って来たのか分からないだろうから、自己紹介をしなくてはならないのか。
ここに来て急に緊張し出すと、色々な事を考えてしまう。
門の前で立ち尽くしていると、どこからともなくピアノの音が聞こえてきた。
落ち着く音色で、考え事を吹き飛ばすほどに聞き入ってしまう。
一曲が終わると同時に、ふと我に返る。
自分の任務を思い出し、意を決してインターホンを押す。
(ピンポーン)
と、チャイムが鳴る。
ごくりと息を飲み、応答を待つ。
この時間だけは好きになれない。
出るのか出ないのか。誰が出るのか、いつ出るのか。
そんな思考を巡らせているとーー
「はい」
と、お淑やかな女性の声が聞こえた。
声だけで気品のある方だと察する事が容易であった。
俺は一緒、躊躇ったがすぐに
「あっ、すみません。二年三組の高山と申します。天道さんと同じクラスで委員長なんですけど......天道さんは居ますか?」
しまった。用件を言い忘れてしまったーー
と、受け答えた直後に反省に入る。
「あっ、どうもありがとうございます。今、門を開けますのでどうぞお入り下さい」
意外にもあっさりと、理解してくれて門まで開けてくれた。
解錠された門を重そうに開けて、中へ入る。
繋がったままなのか分からないインターホンへ向けて念のために挨拶をする。
「失礼します!」
どこかの面接のような気持ちで敷地に入った。
門から玄関までの道には、綺麗な花がたくさん咲いている。一本一本が生き生きとしていて、見てるだけで元気が湧いてくるほどだ。
よほど、丁寧に世話をしているのだろう。
そんなガーデニングに気をとられているうちに、玄関の扉の前に着いた。
門は鍵を開けてくれて自分で門戸を開けたが、家の扉はこのまま開けても良いのか、開けてくれるまで待てば良いのか。
何せ人の家に行く機会が極端に少ないため分からない。
結局、少し待ってみようとした時ーー
(ガチャ)
玄関の扉が開いた。




