第十二章 海へ行くはずだった
八月十八日
七緒は、俺の手の甲へ青い絵の具をつけた。
「動かないでって言った」
「言う前に塗っただろ」
看板を支えていた手を、俺は持ち替えた。乾いたはずの角が、まだ少し湿っていた。
七緒が濡れた布を出す。
「こっち向けて」
手の甲を拭かれた。青は薄くなったが、親指の付け根の線へ少し残った。
港では、映画のスクリーンを立てていた。
白い布が風で膨らみ、支柱を持つ人たちが声を掛け合う。俺と七緒は看板を運び終えたあと、受付の机を拭いた。
午前中は、まだ人が少なかった。
七緒は海のほうへ椅子を五脚並べた。映画を見る席ではなく、売店の脇で休むための椅子だった。
「夕方、この辺で待ってる」
「上映は六時だろ」
「その前に食べたい。五時半」
俺は頷いた。
「五時半」
七緒は二つ折りの紙を出した。近くの店の持ち帰りのメニューだった。
「焼きそばと、たこ焼き。どっち?」
「現場で見て決める」
「売り切れるよ」
「じゃあ、たこ焼き」
七緒は紙を鞄へ戻した。
昼にはセンターで待ち合わせ、それから午後の面談へ行くことになっていた。
宮内さんから連絡が来たのは、昨夜だった。写真店で美玖の来る日や帰る時刻を尋ねた人がいたという話について、店主があらためて説明したいと言っているらしい。
千尋さんの勤め先にも、似た問い合わせがあったという。
その二つを、まず本人たちへ伝えたい、と。
七緒は看板の紐を引っ張った。
「私は、こっちの受付が四時から。面談、最初だけ行く」
「分かった」
「あとで、みんなで来てね」
俺はもう一度、頷いた。
写真店の店主は、言い訳のように同じ言葉を繰り返した。
「悪いことだと、思わなかったんです」
美玖は母親の隣に座り、机の上を見ていた。
宮内さんが、分かる範囲で大丈夫です、と言った。
問い合わせをしたのは、町の作業をしているという男性だった。写真の展示を見て、作者について訊いた。
この子はよく来るのか。学校が終わってからか。いつも一人か。
店主は、写真に興味がある人だと思ったという。
「何日の話ですか」
美玖の母親が訊いた。
「はっきりは、覚えていなくて。展示を始めたあとだから、六月か、七月の初めか」
店主は手を膝へ置いた。
「警察の方には、昨日、覚えている顔のこともお話ししました。ただ、これで間違いないとまでは、言えないので」
宮内さんが、個別の確認はこのあとこちらで、と続けた。
美玖は店主を見た。
「いつも一人って、言ったんですか」
「……たいていは、そうだと」
美玖は頷かなかった。
母親が彼女の手を握ろうとして、途中で止めた。美玖の手は、すでに両方とも膝の下へ入っていた。
千尋さんの店に来た男性は、夕方に売れ残ったパンを買いたいという話から、千尋さんが店にいる時間を訊いたらしい。
店長は、そのことを今日初めて思い出したわけではなかった。ただ、勤務時間を尋ねられた客との会話を、事件と結びつけてはいなかった。
美玖の写真を見た店主が、母親と話しているうちに以前の客を思い出した。その確認を進める過程で、パン屋でも似た話が出たのだという。
同じ人物と決まったわけではない。
宮内さんは、そこを分けて伝えた。
千尋さんは、店長さんを責めないでください、と言いかけた。
途中で口を閉じた。
「でも、嫌だな」
声が低かった。
「自分が、知らないところで」
七緒が横から頷いた。
志保さんは机の端へ指を置いていた。
「私の部屋を見に行く予定は、誰も、いつもと同じ時間だとは言えないと思います。二十六日は、その日、連絡をもらって決めたから」
宮内さんが彼女を見た。
「はい。その点も含めて調べています」
俺は地図の北と東を思い浮かべた。
毎日どこを通るか知っていることと、その日にどこへ行くか知っていることは、同じではない。
七緒の電話が小さく鳴った。
彼女は時間を見て、俺へ目を向けた。
受付へ行く時刻だった。
「あとで」
俺が言うと、七緒は鞄を持った。
美玖の肩へ軽く手を置き、部屋を出た。
面談が終わったのは、五時を少し回ってからだった。
美玖の母親は、少し一緒にいたい、と娘へ言った。美玖は頷いたが、映画は行く、と付け足した。
母親も来ることになった。
千尋さんは父親へ電話をし、夕飯をどうするか話した。自分は予定どおり出かけるから、用意してあるものを温めてほしいと伝える。
志保さんが荷物を揃えた。
「港、今から行けば、五時半くらい」
俺は立ち上がった。
そのとき、宮内さんが写真店の店主へ、工事中の通路について確かめているのが聞こえた。
川沿いの道は、いつから通れるようになっていたのか。店の人が見た作業車は、一般の道へ回っていたのか。
俺の手帳には、まだ、北の通路の横へ疑問符が残っていた。
図書館に、工事前の道路案内があったはずだった。先日、問い合わせたとき、窓口の人が、取り出しておきます、と言ってくれていた。
閉館は六時だった。
「先に行っててもらっていいですか」
志保さんが俺を見た。
「どこへ行くの」
「図書館。一枚、確かめたいものがあって」
千尋さんは電話をしまった。
「今日は、映画」
「分かってます。すぐ追いつきます」
美玖が何か言いかけたが、母親が荷物を持ち上げたので、先にそちらを手伝った。
志保さんは俺の手帳を見た。
「その資料、今日までしかないの?」
「いえ。でも、出しておいてもらってるので」
返事をしながら、もう鞄を肩へ掛けていた。
俺は七緒へ、図書館に少し寄る、先にみんなといて、と送った。
すぐに返事が来た。
何時になる?
五時五十分には。
そう送って、図書館へ向かった。
取り出しておいてもらった資料は、俺が考えていたものと違った。
道路の幅や土地の境界が書かれた図で、工事中にどこを通れたかは載っていない。
窓口の人は、工事のお知らせなら別の冊子かもしれない、と言った。
「今、見られますか」
「探してみますね」
俺は椅子へ座った。
電話を出すと、七緒から返事が来ていた。
たこ焼き、買った。着いたらこっち来て。
分かった、と返した。
五時三十五分だった。
冊子が出てきたのは、五時四十五分だった。
窓口の人は、机を一つ空けてくれた。綴じた紙の中から、四つ折りの図を引き出す。広げると、見慣れた駅が、俺の手帳のものよりずっと小さく載っていた。
同じ川なのに、幅が広かった。
工事のお知らせの図は、迂回路が目立つように道を太くしてある。普通の案内図で近そうに見えた角が、実際には一本向こうの通りだった。俺は紙の端へ定規を置き、曲がる場所を数え直した。
四月の図には、北の休憩所へ上がる坂があった。
六月の図では、その手前へ柵が動いていた。
七月の図を重ねると、川沿いの道が、一か所だけ切れていた。
「ここ、つながってないんですか」
俺が訊くと、窓口の人は眼鏡をずらした。
「折り目かな。向こうを少し引いてみて」
指を掛けると、紙がもう一段開いた。
切れていたのは道ではなかった。折り込まれた細い余白に、出入口が描かれていた。
俺は七月十八日の写真を電話に出した。黄色い柵。奥へ寄せた端。車一台分あるかどうか、画像では分からなかった隙間。
図のそこには、小さく、作業車両、とあった。
目で線を追った。
駅の改札を通らず、歩道橋も渡らずに、川向こうへ回れる。俺たちが歩いた道だけを線にすると離れていた三つの場所が、車の出入口の側から見ると、別の並び方になった。
電話の上へ通知が出た。
七緒ではなかった。五人席へ千尋さんが、席あるよ、と送ってきていた。写真には折り畳み椅子の脚と、袋に入ったたこ焼きが写っていた。
俺は画面を伏せた。
「これ、写してもいいですか」
「いいですよ。日付と、この冊子の名前も一緒にね」
窓口の人は表紙を横へ置いてくれた。
俺は三枚の紙を借りた。四月、六月、七月、と上へ書き、同じ向きに駅を置いた。全部を写すと時間がかかるので、川と線路、それから道路の出入口だけに絞った。
五時五十分になった。
もう少し、と七緒へ送った。
いま閉じれば、映画の最初には間に合うかもしれなかった。残りは明日見ればよかった。紙はここにあったし、窓口の人も明日なら駄目とは言っていなかった。
俺は六月の図へ戻った。
千尋さんが電話をした信号がある。そこから洋品店までの道へ、指を置いた。いつもと反対へ向かった理由を、千尋さんも知らなかった。父親に弁当箱を買おうとしたのかもしれない。その線の隣に、車の道を書き込んだ。
これを見せれば、何か一つ、進むかもしれない。
俺が朝から同じことを聞くだけだった時間を、取り返せる気がした。
鉛筆の先を止められなかった。
四月の図で、また手が止まった。休憩所へ近い道には、階段の印があった。車は通れない。けれど、坂を上から回る道は、別の作業用の出入口へつながっている。
「ここ、いつまで閉まってたか分かりますか」
窓口の人は注意書きを指した。
「この図だと、期間の予定はここ。でも、実際にどの日に開いたかは、道路の担当に確かめてもらわないと」
俺は日付を囲んだ。四月と六月と七月で、同じ車が通れたとは、まだ言えなかった。
それでも、俺は初めて、三人がいつもの道から外れたことと、町の作業車がどこへでも行けそうに見えたことを、同じ紙の上で考えられた。
窓口の人が、あとは窓口で預かっておけますよ、と言った。
俺の電話を見たのかもしれなかった。
「もう、この注意書きだけ」
言って、写した。
筆圧が強すぎ、下の紙にまで線の跡がついた。
顔を上げたとき、部屋の時計は、六時までほとんど隙間がなかった。
「写したもの、持っていって大丈夫ですか」
「どうぞ。元の図は、番号で頼んでもらえば、また出せますから」
俺は表紙の番号を三枚それぞれに書いた。お礼を言い、立ち上がった。
電話が鳴った。
七緒だった。
「ごめん、今出る」
「始まるよ」
向こうでは、マイクの音がしていた。
「見てて。あとで行くから」
「どこに来ればいいか、分かる?」
「朝の場所だろ」
七緒は少し黙った。
「座るところ、もう動かした。売店の横じゃなくて、後ろの列」
「分かった」
電話は切れた。
俺は紙を鞄へ入れた。
急いで書いた線が一か所、隣の道へはみ出していた。消そうとして、消しゴムを落とした。
拾ったころには、窓口の照明が一つ消えていた。
港へ着いたとき、スクリーンでは男の子が走っていた。
誰から逃げているのか、どこへ行こうとしているのか、俺には分からなかった。
後ろの列を探す。千尋さんが先に俺を見つけ、手を上げた。
七緒の隣に一脚、空いていた。
俺は屈んで前を通り、座った。
「ごめん」
七緒は頷き、足元の袋を俺へ渡した。
たこ焼きだった。
蓋の内側に水滴がついている。箸は紙の袋に入れたまま、輪ゴムで留めてあった。
「おまえのは?」
「食べた」
七緒はスクリーンを向いた。
俺も黙った。
冷めたたこ焼きを口へ入れる。生地が少し固くなっていた。七緒の隣では、美玖が母親と同じ袋から菓子を取っていた。
志保さんは笑っていた。
スクリーンの男の子が、何か失敗したらしい。
俺は話に追いつこうとして、しばらく画面を見た。
隣から波の音がした。映画の中のものなのか、港のものなのか、区別がつかなかった。
上映が終わると、拍手が起きた。
子供たちが椅子から降り、親の手を引いて売店へ向かう。誰かが椅子を動かし始め、七緒も立った。
俺は食べ終えた容器を袋へ入れた。
「図書館のやつ、四月と七月で違ってた」
七緒は椅子を持ったまま、俺を見た。
「今、その話する?」
俺は口を閉じた。
志保さんが反対側の椅子を二脚持った。千尋さんは美玖の母親と一緒に、落ちた紙を拾っている。
俺も椅子を重ねた。
片づけが一段落してから、七緒は堤防のほうへ歩いた。俺は鞄を持って追った。
「何か、頼まれたの」
七緒が訊いた。
「図書館へ行くの、宮内さんに?」
「いや。俺が、確かめようと思って」
七緒は海へ顔を向けた。
「私、五時半って言ったよね」
「うん。遅れたのは、悪かった」
「六時には来ると思った。五時五十分って言ったから、もう来るかなって、ずっと入口見てた」
俺は袋の持ち手を握り直した。
「思ったより時間が」
「分かったときに、来られないって言えばよかったじゃん」
「来られないわけじゃなかっただろ。途中から」
言ってから、七緒の顔を見た。
眉がわずかに動いた。
「そうね。途中から、来たね」
風で、額に掛かった髪が動いた。
俺は次の言葉を探した。今日、三人が聞いた話のこと。知らないところで見られていたと分かった、美玖の顔のこと。
「あの話を聞いたら、何かできないかって思うだろ」
七緒は頷かなかった。
「私も聞いたよ」
「分かってる。でも、あのまま映画を見に行くのが」
「行っちゃ駄目だった?」
俺は首を振った。
「そう言ってない」
「私、今日は楽しみにしてた。三人も、楽しみにしてたと思う。怖いこと聞いたあとでも、行きたいって言ったんでしょ」
千尋さんの、今日は映画、という声が戻ってきた。
俺は何も答えなかった。
七緒は鞄の紐を肩へ掛け直した。
「航が調べるの、全部やめてって話じゃないよ」
「俺も、見たかった」
「じゃあ、来てよ」
七緒の声が大きくなった。少し離れたところにいた人がこちらを見て、彼女は一度目を伏せた。
「今日は、一緒に来てほしかっただけ」
その声を聞いて、俺はやっと、何を返せばよかったのか分からなくなった。
謝ることはできた。もう謝ってもいた。けれど、もう一度同じ言葉を言ったら、それで終わりにしたがっているように聞こえそうだった。
七緒は足元を見た。
「一緒に行くって言って、来るの待つの、もう疲れた」
俺の手の甲には、青い絵の具がまだ少し残っていた。
「明日の釣り、私はやめとく。描きたい絵があるから」
「それ、今日のことで」
「怒ってるよ。でも、描きたいのも本当」
七緒は俺を見た。
「どっちか一つにしないで」
センターへ返す看板を、志保さんが持ってきた。
七緒はそちらへ歩き、半分を持った。
俺は鞄を肩へ掛けた。
三人と別れたあとも、七緒とは同じ方向だった。
川を渡り、坂を上った。家の前で、じゃあ、と言われた。
俺は、うん、と答えた。
いつもなら何か言い返していた戸が、そのまま閉じた。
八月十九日
朝、七緒から五人席へ連絡が来た。
午前は学校の美術室、午後は家で描く。釣りは今日は休む。ごめん。
千尋さんが、分かった、できたら絵見せて、と返した。
美玖は、私も見たい、と続けた。
俺は画面を閉じた。
図書館で写した紙を広げ、宮内さんへ渡す説明をまとめた。途中で、相手も同じ資料をもう持っているかもしれないと思い、確かめたい箇所だけを短く書いた。
送信してから時計を見た。
釣りの待ち合わせまでは、まだ一時間あった。
千尋さんの父親が貸してくれた竿は、四本あった。
うち一本は、糸を巻くところが少し固かった。もう一本は長すぎて、ケースから出すだけで時間が掛かった。
千尋さんは説明の紙を持っていた。
「お父さんが描いたんだけど、魚しか上手くない」
紙の下に、魚の絵があった。横には、釣れたら袋に入れるな、バケツ、と書いてある。
バケツは持ってきていた。
釣れるかどうかは、まだ分からなかった。
港の係の人へ場所を確かめ、釣ってよい区画の中で竿を出した。船が通るところへは投げないこと。足元の道具を広げすぎないこと。
千尋さんは言われたとおりに箱を寄せた。
糸を絡ませたのは俺だった。
ほどこうとすると、結び目が小さくなる。志保さんが反対側から押さえ、美玖が、引っ張らないほうがいい、と言った。
「今、引っ張ってない」
「それ、引っ張ってる」
千尋さんは自分の竿を置き、俺の手から糸を取った。
「貸して。私、昨日お父さんに、同じことやった」
指の先で結び目を緩めた。
五分ほどして、やっとほどけた。
彼女は自分の竿を持ち直し、海へ向けた。
「今日はね、釣れなくてもいいって言わないでね」
俺は顔を向けた。
「釣りたいから、来てるんだから」
志保さんが頷いた。
「それは、そうだ」
最初に釣れたのは、細長い海藻だった。
千尋さんはそれを見下ろし、何も言わなかった。
美玖が電話を構えた。
「撮っていい?」
「どうぞ」
千尋さんは竿を上げた。海藻から水が落ち、彼女の靴に掛かった。
美玖が写真を送ると、少しして七緒から返事が来た。
何それ。
千尋さんが、初めて釣ったやつ、と打った。
七緒から、長いね、と返ってきた。
千尋さんは笑い、もう一度糸を下ろした。
昼近くになって、小さな魚が一匹釣れた。
千尋さんは大きな声を出した。俺たちは一斉にそちらを向き、竿を持ったまま近づこうとして、糸が交差しかけた。
「来ないで。待って」
千尋さんが叫んだ。
美玖だけが竿を置いて駆け寄り、バケツを持ってきた。
魚は掌より小さかった。銀色で、背中に暗い筋がある。
近くにいた人が名前を教えてくれたが、千尋さんはそれより、どうやって針を外すかで困っていた。
教わりながら外して、バケツへ入れる。
四人で覗いた。
「食べるには、小さいね」と美玖。
「食べない。今日は、見せてから戻す」
千尋さんは電話を出した。父親へ写真を送り、返事を待った。
すぐには来なかった。
彼女は何度か画面を見たあと、美玖に、もう一枚撮って、と頼んだ。
魚を海へ戻すところを、美玖が撮った。
水面に細い影が一つ走り、見えなくなった。
千尋さんはバケツを洗った。
「今度は、大きいの」
俺たちは頷いた。
竿を片づけるころに、父親から返事が来た。
よかったな。糸は巻いてからしまえ。
千尋さんは電話を見せ、もう巻いた、と送った。
帰り道、志保さんが俺と並んだ。
「七緒ちゃんに、今日は何してるのって訊かないんだね」
「言ってたから。学校と、家」
志保さんは頷いた。
「そうだった」
それ以上、何も言わなかった。
俺は駅のほうを見た。ここから学校へは、橋を渡れば近かった。けれど、来てほしいとは言われていなかった。
家へ帰った。
机の引き出しに、島でもらった絵葉書があった。五人が、展望台に立ったり座ったりしている。
俺は絵を立て掛けた。
七緒へ、今日描いてる絵、できたら見せて、と送った。
すぐには既読にならなかった。
俺は宿題の冊子を開いた。三問解いたところで電話が鳴った。
うん。できたら。
その返事を読んでから、続きを解いた。




