第39話 殲滅戦
「それじゃあ、少し数を減らしてい来る」
開始の合図と同時に俺は魔力を高ぶらせ、瞬間的に二つを並列で使用する。一つはアイギス。アルシェを守るための魔法で、俺の3割の魔力が消費される。絶対的な防御魔法。
かつての世界。そこの伝承にあるとある盾を連想して開発したオリジナル魔法は、様々な付与が出来る。今回であれば、受けた魔法の魔力を吸収して、失った魔力を補充していくという点。それと受けた属性に耐性を付けることができる。だからこそ、普通の人間に破ることは困難だ。
これで戦闘に集中できると、身体能力を強化して相手に直接剣を切りつける。当然のように予測していなかったのだろう。対応が遅れて、近くにいた3名を即座に戦闘不能に陥らせる。
掲示板に記載のある3名の名前が黒く染まったことを確認した。
『ま、何が起きたのでしょう、一瞬の内に3名の反応が消滅しました!!』
『恐らく身体能力を強化して、直接切りつけたのでしょう。それも聖騎士レベルの力があると思われます』
そんな悠長な解説をしている間にもう二人ほど切りつけて……倒し切れなかった。
「……!?」
たしかに手ごたえはあった筈なのに、彼らが外傷を受けた様子がない。その様子に驚き、目を見開きつつも、咄嗟に距離を取る。その判断が功をそうしたのだろう。俺が元居た場所には数多の魔法が撃ち込まれた。
全て避けたとそう感じた瞬間背後で爆発音がする。
(……っ!? くそっ、追尾魔法か……)
体力を削るほどではないが、展開していた防御魔法が反応し、魔力が削られた。思わず、悔しさに歯をギリッと噛みつけてしまう。それこそが彼の狙いで、俺の魔力をどうにかして、尽きさせようとしていることが明確だった。
ふと見た王子は、にやりとした笑みを口元に浮かべる。自分の作戦の有効性を確認し、俺を倒し切る可能性がより明確になったから。その表情を見て、腹の底から怒りが湧きそうになる。
ほんと、人の嫌なことをしてくると。ある意味で正しい行為に、俺は、はぁーーと息を吐いて、心を落ち着けつつ、掲示板を確認する。
切りつけた二人のHPバーは全く減っていない。そこから考えられるのは、攻撃を防ぐ魔道具か神器だろう。なんて、相手の魔法を躱しつつ考える。その間にも、敵を切りつけて、どの程度耐えられるのか検証する。
(……1~3回と言ったところ。強さは関係ないことから、俺の意識をそらすためか)
なんて分析つつ、魔法を防いでいったりする。追尾魔法というのが厄介だなと思いつつ人数が人数なので直接叩けない。
……ふっ、流石は王族ってことなんだろうな。もしくは俺が敵に回しすぎたってことか。会場を含めて俺を敵視している貴族の子息や令嬢が特等席で見ている。敵対している貴族が貸し出しのだろうな……なら、数個は壊してやる!!
なんて思っていると。王子はニヤリと笑いながら俺の集中力を乱すように話し出す。仲間には攻撃をさせながら。
「まさか、お前がここまでやるとはな、身体能力まで鍛えているとは、まさに化け物級の強さってわけだ。まったく、お前は俺をどこまでも楽しませてくれるぜ!」
そう言いながらも魔法を放ってこないのは、現状ではデメリットの方が大きいからだろう。そう言った部分ではまだまだ冷静だと分かる。
3人も撃破したんだぜ、少しくらいは動揺してほしいものだ。なんて言いながらも、俺は的確に状況を分析し、無詠唱で魔法を放つ。流石に数が多すぎて、全部を防ぐことができない。
いくつかは被弾し、回復量を上回るほど、魔力が削られていく。それに身体能力の強化も、効果が永遠に続くわけではない。改良している分、短く、約3分ほどだった。通常は30分持つのだが、時間を狭めることで、通常の2.5倍の出力になっている。
魔力を削ための作戦。そうは分かっていても、相手を倒しながら、徐々に回復していくしかない。使用する魔力と、回復する魔力。それを同等にしたいのにそれを許さない程に畳み込んでくる。
「……マジかよ」
ふと呟いた王子の言葉は俺の魔力量を見てのものだろう。アイツは目に魔力を宿してまがら、笑っていた。……クソっ、あいつも可視化できんのかよ。それとも神器か?なんて思いながらあいつは笑っている。
「お前の回復量はエグイな、常人の10倍はあるぞ。はっはっは」
一人楽しそうに笑っている。この戦場では彼以外が必死になっているというのに、アイツだけは高みの見物を決め込んでいる。臣下を働かせてこそ、王であると。いわんばかりに。
形勢は悪い。けれど、徐々に相手の戦力も削ることが出来ている。確かに生徒を中心に弱い人物だけではあるが、それでも残りは37名まで減っていた。
俺の魔力は既に5割を切っている。そろそろ、全体に攻撃をする時だろう。それが最も効率がよい。俺は攻撃しながら、魔法を詠唱する。相手の魔道具の効果を削って、耐性をなくしていく。
「——流転せし時よ」
魔力が、空へと解ける。その間に、注意がそれたものを剣で斬りつける。
「我が呼び声に応じ、敵を穿て」
詠唱が、空間に刻まれる。
「ディバイン・レイ!」
光属性最高位魔法。雷にも似た光の奔流が、降り注ぐ。無数に相手に叩き付けられる。それは会場を真っ白に覆う程のまばゆい光を解き放った。
一撃一撃が致命傷になるものを、王子たちは受け切る。
神器・アヴァンヘルム。どんな攻撃も一日に一度防ぐ。大盾を使用した。それに闘技場全てが護られた。
「……チッ」
「流石の威力だ……けど、あたらないと意味がないな」
そういって、王子は攻撃を指示する。今度は弓矢による攻撃。一撃必中の技。それを神器で受けた。
「ふっ、その宝剣ともいえる眩い神器。それがお前の隠し玉か」
「そうだな、あるで俺の威光を表しているみたいだろ?」
「ふふっ、その威光は今日までだがな」
会話をしたことで皆の視線が逸れる。その瞬間を俺が逃すはずもなく、追加で二人ほど、倒す。残り31。魔力は2割ちょっとか……。
俺は思考を切り換える。ここまで減れば、むしろ身体能力の強化は程々の方がいい。なにより、詠唱しながら次をタイミングよく切り換えれば、ロスは起こらないと。
再度詠唱を開始する。だが、それが警戒するものではないと、察する。流石に詠唱と魔法は印象付けているか。少し息をはきつつ、削っていく。防御魔法を最小限にして、体力を消耗しながら、俺は続ける。
そうして、3分間。俺の魔力が底を突きかける時には、相手を半分以上。残り21人にまで削っていた。だが、その大半は未だに学園在住の教師だった。ざっと15人ほどか。まぁ学園長がいないだけマシだろう……。
そう思いつつ、俺達は大概に手を止めて見つめ合うのだった。




