第38話 戦闘開始
疲れた反動だからかな。俺とアルシェは二人して地面に倒れ込んだ。二人とも仰向けで天井を見上げながら、肩で息する。隣り合わせになりながら、満足そうに笑みを浮かべた。
光属性の最高位魔法。その魔法を祝福するように、窓ガラスから差し込んだ月明かりが、俺たちを静かに照らしていた。精神的にはもう動けないほどに疲れているのに、どこか充実感を感じていて、それが不思議だった。きっと二人で協力しながら成功させたからだろうなと、口元の深い笑みを浮かべる。
「やったな、アルシェ」
そう言って拳を差し出すと、彼女は不思議そうにこちらを見つめてくる。そっか。こういう“嬉しさを分かち合う”こと自体、きっと初めてなんだよな。そんなことを思いながら、俺は小さく笑った。
「一緒に何かを成し遂げた時、その嬉しさを共有する方法の一つだよ。拳を上に上げて互いに合わせるんだ。やってみて」
「……こう?」
隣に寝転んだまま、彼女は首を小さく傾ける。天に向かって伸ばされた白い拳。俺も同じように腕を上げ、軽く拳を合わせた。
コツンと、小さな音が鳴る。その瞬間。アルシェの表情が、ふわりと緩んだ。まるで、自分でも知らなかった感情を見つけたみたいに。ふっと緩む。
そんな彼女の反応に、どこか温かい気持ちを浮かべながら、月明かりに視線を戻す。
(今日は一段と綺麗だな)
なんて感心して見つめる。そんな中で、ふと、アルシェが呟いた。
「……レオニスに会えて、よかった」
その声色はどこか嬉しそうで、満足気で、ふと、彼女の方を振り向く。
そこには、心の底から満足そうに、深く笑う。どこにでもいるかわいらしい少女の姿があった。綺麗な黒髪が月明かりに照らされて、キラキラと輝く。不思議と視線が引き寄せられる
周囲の光を、魔力すらも集めて、輝く姿はどこか神秘的で、美しいと感じた。
その日は夜遅くというのもあり、寮に戻ることができる時間ではなくなっていた。そのため、彼女を自宅に招く。そうして泥のように俺達は眠り、いよいよ王子との決戦の日を目指すのだった。
***
翌日。俺達はいよいよ、決闘の場所となる場所に向かう。アルシェと一緒に馬車で向かうのはどこか新鮮だった。だからこそ、場所が泊まった時にはもうついたのかと思ったが違う。
馬車の前に人だかりができていた。それにどいてもらうよう、告げようとしたところで気付いた。一人の少女が血まみれで倒れていることに。
それは学園に向かう際に時々見ていた、笑顔が綺麗な子。その子を見て確信する。この少女は俺が、最上位魔法を使わなければ助からないと。そして、それを仕組んだのはきっと
「ゼルヴァイン」
思わず彼の名前を口にして、怒りが抑えられない。俺は馬車の扉を開け、飛び出ようとしたとき、俺の服をくいっと引く存在がいた。
エリシアだった。「いいの?」と再度問うような視線。その先には当然のようにアルシェもいる。それでも、
「ごめん」
そう告げて俺は飛び出すのだった。これで勝てる可能性は大幅に下がる。それを見越して、徹底的に俺を潰しにかかったのだ。見捨てた場合、俺自身の信念が揺らぐとそう判断をして。躊躇もなく実行しやがった。
「本当、クソみてえな考えだな」
そう思いながらも俺は、魔法を使用する。最上位の魔法を使う。監視されている知ってなお、俺は躊躇わずに使用した。
当然のように感謝されるなか、「これも神の思し召しですよ」なんて、教会を一応は上げる発言をしないといけない。結局俺は自由になると誓って、未だに何かに縛られている自覚があった。それでも、俺は、この道を選択したのだと。そう思って進む。
馬車に帰ると、笑顔で皆が迎え入れてくれる。アルシェですら、仕方ないと納得しているようだった。それは超えてはならない一戦。それを王子は超えた。
最早、明確な敵として容赦はしない。どんな方法を使用しても勝つべき相手へと変貌したのだった。
***
会場に付くと、王子が俺たちのが会場に入るのを待ち構えていた。余裕のある笑みを浮かべて。
「ゼルヴァイン、お前は触れてはならない存在に手を出した」
「王子である俺が民のことをどうしようが勝手だろ、選ばれもしない市民なんてそんなものだ」
「あぁ、そうかよ」
俺の表情を確認したあいつは満足そうに笑う。少しだけ、つまらなそうな表情をして。もう終わったきでいるようだった。
貴族らしく。最低限魔法を使って戦うつもりだった。けれど、今は違う。そんな精神を持ち合わせてもいなかった。なんとしてでも勝つ、そう意気込んで、俺達は会場に入る。
会場を把握するために、あたりを見渡す。視界に入った、フェリシアたちは良く見える、俺たちの搭乗口近くの席に座る。その傍にはセレフィがいて、きっと気遣ってくれたのがわかる。
彼女達は守るから安心してということだろう。それでも、そっちを今は見ることができない。倒すべき、明確な敵がいるから。
「アルシェ、作戦はたった一つ。俺が君の周りに結界を張る。そこから出ないでほしい」
「レオニスは、どうするの?」
「直接倒しに行く。剣技でね」
そういって、俺たちは会場に入る。大きな歓声が俺達を包み込む。学園の関係者から、俺に敵対する貴族まで様々面々が俺たちの試合を楽しみにしているようだった。ほとんどが、俺が地面に倒れ込むことを期待している視線だった。
視線の先には当然のようにこの学園に在籍している教師の姿があった。学生と明記しないことから何となく察していて。その対策もしていた。だからこそ、その戦力差は圧倒的だ。
「レオニス、勝てる?」
「勝つさ。俺達二人でね」
「うん!」
二人して目の前を見つめる。
『それでは、レオニスとゼルヴァイン殿下のチーム対抗戦を行います』
『開始』
50対2の圧倒的な殲滅戦が今開始した。




